「ふるさとづくり2004」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

「食」と「暮らし」の改善を通して循環型地域社会の創造
静岡県掛川市  エコロジーライフ研究会
会設立の動機と活動目標

 当研究会の創立は平成12年3月ですが、当時は飽食の最中で、化学肥料や農薬の多量使用の下、ホルモン剤や抗菌・抗生物質に汚染された農畜産物による食の安全が脅かされている実態が、一般市民にも徐々に理解され始めていました。また、これらの化学物質に加えて、ダイオキシンや環境ホルモン物質の大量放出による大気、水、土壌等の汚染による自然生態系の破壊が、私たちの身近にも見られるようになったときでもありました。さらにグローバルに見ると、二酸化炭素や窒素酸化物、フロンガスなどの大量発生に起因する地球の温暖化、オゾン層の破壊など、人々の健康ひいては人類の生存に関わる諸現象が広く知られてきておりました。
 当時は、市内及び周辺地域において、すでに有機農業を実施している生産者が何人かおり、また、環境保全活動にグループや地域として取り組んでいる人も大勢おりましたが、私たちは、地域環境の保全に直接結びつく「有機農業」と「食と暮らし」を結合した生活スタイルの改善が重要と考え、これらの課題に総合的かつ組織的に取り組む純粋な市民活動組織を立ち上げました。
 爾来私たちは、自然生産物の循環利用を基本とする有機農業による安心・安全な農産物の生産を基調において、環境への負荷を少なくする生活様式へとつながる「食と暮らし」の改善を通して、自然と調和する循環型地域社会の実現を究極目標に掲げ、次のような活動を行なっています。


主な活動事業

(1)安全な農畜産物を生産する有機農業の推進と普及
 会員55名中農業生産者は15名、家庭菜園規模の生産者は13名です。有機農業技術は未確立のものが多いので、相互に連携して地力向上有機資材の導入を行ない、また、会で設置したモデル圃場や会員圃場の見学及び栽培講義などの研修会を通して、栽培技術情報の交換を実施し、生産者の技術レベルアップと経営の安定、生産物の質・量の向上に努めています。
(2)生産者・消費者の提携と安全な生産物の流通推進
 有機農業の確立普及には、消費者の理解と協力が必要です。会員が生産した有機栽培の米、大豆、野菜、牛乳、卵及び加工品などを、会独自で行なっている毎週土曜日の朝市で対面販売し、生産者と消費者の理解を深め、相互の絆の強化を図っています。
(3)日本の食文化の推進と安全な健康加工食品の製造と普及
 地産地消に基づく会員生産有機生産物を素材とする発酵加工食品の普及を図るため、有志による漬物加工食品の共同生産と販売、あるいは有機大豆・米を原料とする味噌作り講習会(9回延べ55人)、料理講習会を実施し、日本食発酵食品の重要性をPRしています。
(4)バイオ資源の有効利用と環境保全
 ポリ製コンポスト容器を使用して、地場竹薮孟宗菌利用による家庭生ゴミ発酵堆肥化技術を確立。掛川市役所の要請に基づいて、その製造法と利用法(野菜・花作り)等について市内17地区で講習会を開催、延べ約800人の市民へのPRに努めました。
 また、里山の荒廃竹林の資源としての利用を図るため、会員有志(10名)が中心となり、募集したボランティア(18名)の協力を得て、荒廃竹林の伐採(3か所約50アール)、切断、竹割り処理の上、竹炭焼き作業を行ないました。生産した竹炭・竹酢液は、公園池の水質浄化及び茶園・野菜畑の土壌改良資材として利用実験を実施し、16年度も継続中です。
(5)自然に親しみ、情操を育む体験学習の推進
 21世紀を担う子どもたちに、作物作りの農作業体験を通して、自然、環境、生物との共生の大切さを学んでもらうために、水稲栽培では田植え、除草、収穫、餅つきの作業を、また畑作では、大豆、サツマイモの植付けから除草、収穫までの作業についてそれぞれ7回、親子体験学習をしました。
(6)情報の伝達と会員相互の連帯感及び資質の向上
 一般会員の投稿も記載した会報を年間6回発行し、懇談会(春)、交歓会(秋)を開催、会員の連帯感・親睦感の醸成に努めています。また、会員及び一般市民の意識の向上、PRを目的として、有機農業と社会、食と健康、農と暮らしなど、これからの私たちの生活のあり方について、専門家講師による講演会を年1回、通算5回開催しました。


会運営上特に留意していること

○活動が多岐にわたるため、各事業部の責任者を役員がつとめ、毎月役員会を開催し、事業活動情報の共有化と連携を図り、事業の円滑な運営に努めています。
○一般会員の参加意識を高めるため、意向アンケートをとり、企画の段階からいずれかの事業に一般会員も参画するよう努めています。
○役員と一般会員との意識のズレを防ぎ、親睦と連帯感を持つために会報の発行を充実し、総会、講演会、親睦会、見学会、研修会などを実施し、会員相互の交流機会を多く持つように努めています。
○会の運動趣旨を一般消費者に理解してもらうために、流通販売所における対話を積極的に行なっています。また会員以外の市民も実費参加できる料理講習会や味噌作り講習会を開催工夫しています。


今までの活動の成果

(1)市内の近郊地域での家庭生ゴミ簡易処理法の講習会活動により、生ゴミ量の削減、処理堆肥化の利用促進に寄与しています。
(2)無農薬農産物の販売を通して、生産者と消費者との交流対話が生まれ、有機農業や環境への理解に進展がみられています。また、高齢者参加の生産物販売も積極的に奨めているので、その生産販売者も3人に増え、生きがいと希望を与えています。
(3)一般市民を含めた味噌作り講習会や料理講習会を通して、食物と健康、農業の役割とあり方等に対する関心が、特に子育て中の若い主婦の人たちに強くみられるようになりました。


今後の方向と取り粗み

 会結成後5年目を迎え、竹炭の生産利用販売や朝市などの経済的活動も盛んになってきましたので、その活動組織の一層の充実と会計経理のあり方を検討し、会員一人ひとりが楽しみながら会の活動に参加できる運営に努めたいと思っています。
 今後は、地域内での有機農業生産集団の育成と加工施設の拡充により、生産物販売組織の一層の充実を図り、将来的には生産者と消費者が一体となった強い絆で結ばれる契約集団の結成を目指したいと思っています。
 精神的面からみると、このような集団の中に互助の精心が強く育った時に、循環型地域社会への光が見えてくると考えています。