「ふるさとづくり2004」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

美的で、文化的な平和な街づくり
岐阜県大垣市  O‐KAKIプロジェクト
O‐KAKIプロジェクトの立ち上げ

(1)キーワード
 私たちの団体の活動は、本年で5年目を迎えますが、本団体の活動には、「平和」、「柿の木」、「アート」というキーワードが大きく関わっています。発足時には、私たちが住んでいる大垣において、これらのキーワードに関わる、出来事や出会い、人的ネットワークが重なり、子どもや大人に、21世紀へのメッセージとして、私たちに何ができるのかを検討したメンバーの熱き思いが、活動へとつながったものと考えています。
 その一つは、2000年(平成12年)、大垣においての「決戦関ヶ原大垣博」の開催で、同博は、NHK大河ドラマ「葵徳川三代」の放映を機に、関ヶ原合戦400年を記念し、東西の歴史・文化の交流、中心市街地活性化に加え、戦いの歴史を振り返ることで、「平和」も開催テーマのひとつにあげられました。その平和の大切さを訴えるイベントを考える中から、私たちの団体が生まれる素地があったこと。
 二つには、団体の発起人の1人が、「時の蘇生」柿の木プロジェクトの存在とその活動に感銘し、ネットワークがあったこと。この活動は、長崎の原爆で生き残った柿の木を平和のシンボルとして、世界各地でその苗木「被爆柿の木2世の苗木」を植樹し育て、あらゆる人々との関係を結びつけるプロジェクトのことですが、大垣を含め西濃地域は、古くから柿の産地でもあり、大垣の市旗は、柿のへたをデザインしたもので、「柿の木」によってつながっていると感じたこと。
(2)立ち上げ
 この中でも、「決戦関ヶ原大垣博」の開催テーマのひとつである「平和」について、「大垣博を通して天下を二分した戦いの事実をみつめるだけのイベントに終わらせてはいけない、歴史的事実に目を向けながら、平和といのちの大切さを追及してこそ、大垣博の意義が一層深まるのではないか」という私たちの団体の発起人の意見が大垣博実行委員会に取り入れられ、大垣博の平和を訴えるイベントを任されることになり、急遽、平成12年3月9日、O‐KAKIプロジェクト実行委員会を結成する運びとなりました。なお、「O‐KAKI」とは、「大垣、おお柿」の思いも込めてネーミングとしました。
 特に、21世紀を迎えるにあたって、次代を担う、夢や希望に満ちた子どもたちに、何をメッセージとして伝えていったらよいのかを主眼に、手探りの状態でありましたが、メンバーのネットワークをフルに生かしながら、「柿の木」「アート」というキーワードのつながりを持たせ、次の三つの柱を打ち立て、実行に移すことといたしました。
@いのちの柿の木(長崎被爆2世)を植樹し、命の大切さ、平和について考える。
A21世紀へのメッセージ、平和ポスター展の開催。
BO‐KAKIフォーラム、O‐KAKI大合唱(3000人の大合唱)の開催。
 この三つの柱を実行するには、いかに小中学生の児童生徒の皆さんの心に訴え、参加してもらえるかが大きな課題でありましたが、市教育委員会、小中学校の校長先生や教職員の皆さんに理解を得ることができ、活動も大きく動き出しました。


O‐KAKIプロジェクトの活動

(1)2000年度(平成12年度)大垣博連携活動
 O‐KAKIプロジェクトでは、大垣博の主役は子どもであると考え、『長崎・被爆柿の木2世』を平和や命の大切さのシンボルとして大垣に迎え植樹し、柿の木との出会いをとおして、子どもたちが命の大切さを考えたり、柿の木のように力強く生きてくれることを願い、『平和と交流』についてのイベントを実施することになりました。
@「いのちの柿の木が大垣にやってきた」
 大垣博の開催に先立つ3月5日、大垣博の会場となる大垣公園で、『長崎・被爆柿の木2世』の植樹式を行ない、当日は、被爆から柿の木の命を蘇らせた長崎の樹木医、海老沼正幸氏のお話、小学生の「いのちの柿の木が大垣にやってきた」という創作ミュージカルを披露した。翌日には、市内の東中学校、小野小学校にも同じ柿の木を植樹した。
A「戦いと平和・未来の世界ポスター展」(大垣博会場内の大垣城ホール)
B「エレキテル絵手紙」
 21世紀へのメッセージと題し、ファックスアートを募集し、作品は大垣城ホールで展示のほかホームページに掲載。
C「O‐KAKI TREE広場」(大垣城ホール)
 会場内の段ボール製の柿の実(柿コロニー)に、来場者から平和へのメッセージ(折り紙やカード)を募り、この段ボール製の柿の実を大きく育てる。
D「O‐KAKIフォーラム」
E「O‐KAKI子どもフォーラム」
 本年の植樹校である、東中学校の3年生全員に大垣城ホールに参加していただき、学校や広島への修学旅行などから学んだことを発表し、大垣から平和のメッセージを発信する「総合表現の会・東風の集い」を開催。また、TV会議により、長崎の被爆体験者からの生のお話を聞いた。
F「O‐KAKI大合唱」(10月1日(日)大垣城ホール)
 本年の活動の集大成として、希望に満ち未来を願って、市内小中学生と市民3000人が一堂に集い、参加校の活動発表を織り交ぜながら、最後に心をひとつにしての「翼をください」の大合唱。全て手づくりで、演奏も市内3中学校吹奏楽部の「O‐KAKI大合唱ユース・ウインド・オーケストラ」を結成。参加してくれた小中学生の皆さんの心に、柿の木が成長し続けることを願い成功裡に終了した。
○「いのちの柿の木植樹」大垣公園、6校
(2)2001年度(平成13年度)活動
 昨年の大合唱、市内の小中学生や市民の皆さんが、心を一つに歌い、感動と友情の輪を広めた大合唱、これを一過性のものにしたくないというメンバー全員の思い、感動したという参加校からの声。しかし、今年度からは運営費は自前で調達しなくはならないという資金面の課題や、このプロジェクトは民間の力で運営していきたいとの願いがありました。幸いなことに、大垣博の協賛企業のつながりから、多額の資金援助を受けることができ、運営のメドが立ちましたので、規約を定め、9月8日、正式にこのプロジェクトの設立を行い、ゆるやかで持続性のある活動をと、O‐KAKIプロジェクトの三つの願い、
・いのちの柿の木をひろめよう
・いのちの柿の木を育てよう
・いのちの柿の木のもとで集おう
の、メッセージを発し、プロジェクトの具体的な活動を、市内全小中学校に『長崎・被爆柿の木2世』の植樹を広げ、いのちの柿の木を育てていく中で、心を育ててもらいたいこと。大人も子どもも一緒になって、柿の木のもとに集い、毎年、アート(3000人の大合唱)を実施することとした。
 なお、この大合唱の感動を、多くの小中学生の皆さんにとの思いもありますが、学校の都合もあり、市内を3ブロックに分け参加を呼びかけることとし、自然体で発表(アート・パフォーマンス)していただくこととした。
○「2001 O‐KAKI大合唱」(10月6日(土))
 テーマ『ひろげよう 育てよう いのちの柿の木』
 この年の開催直前に起きたニューヨークの同時多発テロ、大垣へ迎えた柿の木と同じ柿の木が、ニューヨークのファミリースクールにも植樹されていることを知り、同じ柿の木でつながっている仲間として「O‐KAKI大合唱」そのものを歌のメッセージとして録画し届けることとなった。
○「いのちの柿の木植樹」2企業、6校
(3)2002年度(平成14年度)活動
 この年は、『日本まんなか共和国文化首都・大垣2002/4県連携事業』の『音楽フェスティバル〜4県民によるO‐KAKI大合唱』として、県と共催して事業を行うこととなりました。日本まんなか共和国とは、平成12年度に岐阜・福井・三重・滋賀の4県で、お互いの経済・文化交流を深めようという目的で発足したもので、平成14年度からは、年度ごとに各県で文化首都を置くこととなり、その記念すべき第1回の文化首都に大垣が選ばれました。この4県連携事業の音楽フェスティバルに、O‐KAKIプロジェクトが実施している、いのちと平和を願う大合唱に着目していただき、企画から運営までをプロジェクトに任せていただくことになりました。4県が共通することは何かと考え、「大垣の水、若狭の海、伊勢の海、琵琶湖の水」から、テーマを『水といのち』とし、いのちの尊さを考え、未来の平和を願い、自噴水が湧き出ずる大垣を源に、大垣の合唱団、小中学生、各県参加者による大合唱としました。
○「4県民によるO‐KAKI大合唱」(11月11日(日))
 テーマ『水といのち』
 各県の映像を流しながら、福井県・三重県・滋賀県から合唱団が、お国自慢のテーマにちなんだ「水」に関わる持ち味のある歌を、最後に参加者の小中学生、合唱団員など全員で、思いを込めて3000人の大合唱となった。
○「いのちの柿の木植樹」6校
(4)2003年(平成15年)活動
 本年のO‐KAKI大合唱は、ひとつのストーリーの流れの中で、参加してくれた子どもたちの発表(アート)をしようということで、プロジェクトのアドバイザーである間仁田幸雄氏の『柿の木の森ができたとき』というテーマで、未来から現在をみつめ、なぜ大垣に柿の木の森ができたのかを通して、「O‐KAKI大合唱」は、平和と信頼の歌声だから、歌い続けていこうと結ぶ物語風のもので、計画した。
○「2003 O‐KAKI大合唱」(10月11日(土))
 テーマ『柿の木の森ができたとき』
 本年参加を呼びかけた小中学校は、郊外の小規模校が多いため、参加した児童生徒さんの数は750人でしたが、三世代家族が多い地域でもあり、両親はもとより祖父母の参加も多く、最後には約3000人で「翼をください」「ふるさと」の大合唱となった。
 ストーリーを書いていただいた間仁田氏自らが、語り部とし登場し、大合唱に花を添えていただいた。
○「いのちの柿の木植樹」5校
(5)2004年(平成16年)活動計画
 本年も、10月9日(土)、O‐KAKI大合唱を予定しているが、芭蕉さんとつながりの深い大垣市において、「おおがき芭蕉生誕360年祭」事業が実施されるに当たり、プロジェクトとしても協力することを決め、大合唱の企画について検討を進めている。


これからのO‐KAKIプロジェクト

 プロジェクトの宝は、いのちの柿の木、そして、活動を支える女性を中心としたメンバーの皆さん。続けていくためには、資金面の課題はありますが、これからも、『いのちの柿の木をひろめよう、育てよう、集おう』のプロジェクトの願いのもと、大人も子どもも一緒になって、いのちの尊さや平和を願い、私たちのできる表現(『3000人の大合唱』)を展開しながら、生き生きとした地域の形成に向けて平和な街づくりを進めていきたい。