「ふるさとづくり2004」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

区民の意識の改革と生活改善をめざして
福井県三国町  三国町安島区
活動のきっかけ

 安島区は輝石安山岩の柱状節理の奇勝の地、東尋坊、そして周囲3キロの島(雄島)に海の神を祀る大湊神社をかかえている一大観光地である。
 安島区の実態(平成16年3月1日現在)は次のとおり。
・人口1043名
・世帯数364世帯(他に空き家66戸)
・一人暮らし世帯42世帯
・高齢者世帯(70歳以上)29世帯
 昭和60年頃から少子化が進み、その上青年層の転出が目立って多くなり、将来を憂いて壮年層の者が「今何とか手を打たなければ」と語り合うようになってきた。


改革、改善していきたい問題点

(1)個人の価値観の高度化、ライフスタイルの多様化等に伴い現状の居住環境に不満を抱き、また定住することが困難に陥り、特に青年層を中心とした地区外転出をくい止めること。
(2)区内での親族、そして隣近所の交際を現在のまま続けていくことは若者にとっては負担が大きすぎる。特に冠婚葬祭の簡素化を図ること。
(3)他所の転出、また相続者のいない家庭等で空き家が年々増えてきて現在66戸にもなってきている。今から140年前に143戸焼失の大火があり、近年では昭和62、63年にも火災があり、密集地の集落としての課題である。
(4)少年少女の非行化防止の対策も重要課題の一つである。
(5)漁村でありながら海で泳いだり、遊んだりする子どもがほとんどいなくなってきていること。また海女も高齢化しているため将来、海女の後継者がいなくなるのではないかと憂慮している。


住みたくなる町3600の指定を受ける

 「住みたくなる町3600」の推進団体として平成2年に「あすの福井県を創る協会」より指定を受けてもらえないかと区長の方へ相談が入っていることを聞き、ぜひ指定を受けるように申し入れ、4月1日付けで指定される。
 県の指定を受け、活動の組織づくりに入る。


「住んでいたい町づくり」安島協議会の結成

(1)各種団体との対話と協調
(2)婦人層の声を聞く(男女共同参画)
(3)若者(青年団)の悩み事、要望等を聞くことに時間をかける(懇談会20数回)


安島を考える会誕生

 目的…うるおいのある個性豊かなふるさとを創るため、区民の意識の改革と生活改善をしていくことを目的とする。


安島を考える会の組織



役員並びに委員

(1)役員…会長1名、副会長4名、会計1名、事務局3名
(2)委員
・企画広報委員13名(女性5名)
・生活環境委員12名(女性5名)
・育成委員14名(女性5名)
・文化委員10名(女性3名)


事業計画と実践

(1)企画広報委員会
@全体計画と連絡調整
A広報「あんてな」発行(県の表彰を5回受ける)優秀賞
 広報紙「あんてな」(6〜8ページ)を年4回発行し、区内は全戸配布、他に安島区出身者で他県に居住している方にも約80部送付している。(500部印刷)
B先進地の視察研修
 県内外で村(町)おこし、住みよいふるさとづくり等の先進地、また成果を上げている村(町)を訪ねて年1度意見交換会をもっている。
C講習会・研修会の企画
 区民の意識高揚を図るため講師を招き講演会、研修会を開催する。
(2)生活環境委員会
@花壇づくり
 当地区は半農半漁的な漁村であるため、伝馬船の古くなったものを譲り受け、伝馬花壇づくりをすすめている。
A冠婚葬祭の簡素化の推進
 昔からの区内の親族また隣近所の交際を続けていくことは若者にとっては大変負担が重荷になるため、簡素化することを決め、区民の同意を得て申し合わせ事項なるものを決め実行している。
B危険箇所の点検と処置
 当地区は断崖絶壁箇所が多く、危険なので年2回巡回し、区、また町へ連絡し、適切な処置をしてもらうように努めている。
(3)育成委員会
@チャレラン大会
 少年少女の非行化防止の一環として年2回チャレラン大会を実施している。
A磯釣り大会
 年に1回、海に親しませるという考えと非行化防止の一環として磯釣り大会を実施している。
B将来の海女を育てるための運動
 子どもたちが海へ入って雲丹をとるためには、入漁料を漁業組合へ納めなければならないという厳しい取り決めがあることから、自由に雲丹とり等ができない状態であったことと、海女さんたちも高年齢化しているため、将来の海女さんの養成ということも考え、組合と話し合い入漁料は納めなくてもよいことになった。
(4)文化委員会
@安島区の方言集のまとめ
 1100年も前の先住民の話しことばとして使われていた安島独特のことば(方言)をまとめておかなければ方言そのものが消えていってしまうことを憂慮し、方言づくりをまとめる。
A昔古来から伝えられてきた踊りやうた(なんぼや:昭和48年・三国町指定無形文化財)、そして太鼓が姿を見せなくなってきたことに気づきその復活に努力し、現在は保存会ができ、月3〜4回の練習日をもって後継者づくりに励んでいる。
B忘れ去られようとしている屋号調べをし、1冊にまとめる。


安島区全体としての区民の運動

(1)海岸清掃
 春と秋の2回区民総出で海岸清掃をしている。1回掃除する度に軽トラックで6〜7台ぐらいになる。一番多いのはハングル文字のものである。
(2)区民総出の道路清掃
 一般道路(県道、町道、観光道路、遊歩道)のゴミ拾いは月1回区民総出で実施している。
(3)火の用心(夜廻り)活動
 今から140年前に大火があり143戸が焼失していたことと、昭和62、63年と火事があり、1戸が全焼し5戸が半焼したことでこれ以上火災を出さないために夜廻り活動を開始し、毎晩拍子木を打って班ごとに全区を15人(班で1人)が「火の用心」と大きな声で巡回し、また火災防止に努め、15年間続けている(知事の表彰も受けている)。


決適な住環境を求めて土地区画宅地造成に着手

(1)宅地造成の理由
 旧来からの市街地であるためすでに密集市街地が形成され、生活道路も整備困難であり、また老朽家屋も多い。老朽家屋の更新、あるいは世帯規模の拡大に伴う建て替え(増築)に対しては既に密集市街地が形成されていることや個々の敷地が手狭なことが隘路となり、一般的な居住水準が確保できず、その結果として地区外での土地の入手、あるいは世帯分離など若者の区外流出を招いた。
(2)越前加賀国定公園に指定されているための困難
・国定公園第二特別地域に指定されているため建築に対しては極めて厳しい制限が課せられている。
・国の許可が出るまでに3年、県の許可が出るまで2年かかった。その間、地元地権者、県外に居住する地権者への主旨説明、造成範囲等を理解してもらうために全力を投入した。
(3)山林地域を宅地に
 国定公園であるため建ぺい率は10%である。建ぺい率を60%にしてもらうために苦心した。
(4)地権者の同意
 区内が172戸、区外が42戸、同意書に氏名、押印をいただくために3か月を要し、結果98・2%の同意を得ることができた。
(5)土地区画造成組合の設立(平成5年11月)
@宅地造成面積 施行面積13・5ヘクタール(4万坪)、緑地4538坪
A工事費 総工事費10億7000万円、区画数250区画
(6)宅地造成完成 平成12年12月30日
(7)新築家屋(86%が若者)平成16年5月31日現在58戸新築された。