「ふるさとづくり2003」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

水と緑のふるさとづくり
千葉県佐倉市 佐倉印旛沼ネットワーカーの会
印旛沼の概要

 印旛沼は、東京から30〜50km東の千葉県北部にあって鹿島川等の印旛沼集水域は、佐倉市・千葉市・成田市等の15市町村にまたがり、面積は11・55km2と千葉県の約10%に当り、全国湖沼25番目の広さの低地にある浅い天然湖で、沼の水は利根川に流れ出ている。
 自然豊かな印旛沼は、昔から利根川の洪水が逆流したり、流域の鉄砲水で稲作や家屋に被害を与え続けていた。この洪水と食糧難打開の干拓と千葉県の水がめ確保に、昭和21年より国営印旛沼開発事業がおこなわれ、干拓で沼面積を半減し、堤防建設で水位を一定制御の水門と機場を建設した。これで工業用水・農業用水・飲料水を見込んだ治水管理体制が、昭和44年4月に完成した。
 この開発事業で、長年苦しんだ洪水も後を絶ち、千葉県の大切な水源となったが昭和40年代から、印旛沼流域の人口増や工業・農業・畜産業の振興等で水質の悪化を招き、近年、COD値は10mg/l前後と全国ワースト2〜3で、飲料水の供給水源としては、ワースト1である。さらに、開発事業で水深1mが1.7mと深くなり、親水性が失われ水質の汚濁も進行し、水生植物は、50種から12種に滅少した。とくに沈水植物の消滅と、利根川とは水門で魚の水路が断たれ、水田との水路も機場で沼と閉鎖されコイ・ウナギ・タナゴ・メダカ等の在来魚やシジミ・カラスガイ等が減少消滅した。水草・魚殻類の減少に伴って、鳥類も減少しているが、カモ類の冬鳥、シギ・チドリ等の旅鳥、カワウ・オオバン等の留鳥には、静かで貴重な生息・繁殖地ではあるが生態系は変貌してしまった。


佐倉印旛沼ネットワーカーの会の概要

 佐倉市の「水と緑と歴史文化のシンボル」としての「印旛沼の自然」と、「生きがい学習」を平成11年に佐倉市民カレッジ(4年制高齢者大学校)での学習を機に印旛沼の自然回復と環境浄化のボランティアをしようとしたが、当時は団体がなく、8名が立ち上がり、同年5月に49名で当会を設立した。平成13年には、市民にも呼びかけ現在会員数は112名で、平均年齢は66歳の環境ボランティア団体である。


ボランテイア活動の内容

 昔の泳げる印旛沼への自然回復と環境浄化を推進するための環境ボランティア活動は、地域社会の環境づくりととらえ、点から線・線から面への展開を目指し次の活動を推進している。

■環境浄化活動のネットワーク化と環境の調査・提言活動への展開

【1】印旛沼と流域のクリーン活動の実績
 ボランティア活動のゴミ拾集は、環境美化の効果と沼の自然や環境に直接ふれ合い、さらに認識を深める間接的効果も大きい。平成11年1月から平成15年4月までに32回を実施して、延べ参加者は843名で、拾集ゴミ重量は、約3.4tに達し、空かん・びん数が約1万個で、ゴミの種類は、ペットボトル・空かん・食品トレー・ビニール袋・包装紙が多く、毎回不法投棄の自転車・洗濯機・テレビも多い(収集重量には含まず)。台風の増水で流域から漂流してきた浮遊物が水際に多く、この撤去作業は、ボランティアでは危険であり行政で船上作業を要す。また各種団体のばらばら実施の清掃活動と不法投棄防止対策を含め、総合的に官民一体で実施するよう提唱を続け、平成14年11月に県知事・印旛沼水質保全協議会・水資源開発公団に要望書を提出し、本年2月に同意を得た。
 当会の実施している年間クリーン活動の実績は、次の年8回である。
(1)佐倉朝日健康マラソン大会前の清掃・・・3月
(2)佐倉チューリップまつり前の清掃・・・4月
(3)佐倉チューリップまつり後の清掃・・・4月
(4)ゴミゼロ運動の日の清掃・・・5月
(5)河川愛護月間ふれあい点検・・・7月
(6)佐倉国際花火大会後の清掃・・・8月
(7)印旛沼環境浄化月間(流域15市町村一斉)・・・10月
(8)秋季クリーン活動・・・11月

【2】沼と流域の環境調査と提言
 印旛沼、鹿島川、高崎川の自然環境調査をおこない、水質汚濁等の状況を関係機関に報告し改善要請をおこなっている。
(1)印旛沼・鹿島川の外来種ナガエツルノゲイトウ繁茂対策(平成13年佐倉市環境保全課に依頼)
(2)「印旛沼は病んでいる」写真事例12ぺージを各種イベント会場で展示
(3)鹿島川・高崎川・手繰川の源流から河口まで環境調査(平成13年佐倉市民カレッジで発表)
(4)高崎川上流のCODとT―Pのパックテスト40地点実施(平成14年八街市、富里市に対策要請)
(5)成田新高速鉄道の印旛沼通過計画に対する、環境アセスの調査意見書(平成14年9月に提出)

【3】「なの花県民会議」「よみがえれ印旛沼県民大会」で印旛沼浄化推進を金山代表幹事が提唱
 千葉県知事主催の平成13年8月「なの花県民会議」と平成14年12月「よみがえれ印旛沼県民大会」で官民一体の環境浄化の推進・定期清掃活動の推進・印旛沼親水会館の新設を要望した。

【4】「印旛沼水質保全計画」の説明会の開催と意見書の提出
 湖沼特別処置法に基き県策定の「印旛沼水質保全5か年計画」が水質浄化推進の最大の柱であるが、4期目の計画で初めて平成14年6月に当会の要請で市民への説明会を開催し、70名の市民が参加した。当会は、第4期印旛沼水質保全5か年計画意見書を平成13年9月提出した。

【5】環境ボランティア団休のネットワーク化
(1)印旛沼連絡協議会の設立
 佐倉市内で印旛沼の環境浄化を推進中の「NPO印旛沼広域環境研究会」、「NPO印旛野菜いかだの会」の団体に呼びかけて、3団体で印旛沼連絡協議会を平成13年9月に結成した。
(2)印旛沼環境団体連合会の設立
 印旛沼連絡協議会で印旛沼に面している6市町村の環境団体に、大同団結し印旛沼の水質浄化の推進を呼びかけて、11団体の785名で印旛沼環境団体連合会を平成15年2月に結成し、2月9日、結成大会と国会議員・県会議員・市長・市会議員・市民によるフォーラムを開催した。


印旛沼の現状と課題をPR・啓発活動に展開

 印旛沼流域市町村の人口は、約72万人と多いが、生活雑排水や農作物の肥料等が、印旛沼の水質汚濁を招き、生態系が変貌している現状認識は少なく、啓発活動も見当らなかったため印旛沼の現状と課題に関する資料を作成し、広くPR活動をおこなっている。

【1】印旛沼解説パネル等の作成・活用
 霞ヶ浦に「水の科学館」、手賀沼には県立の「水の館」があり、湖沼に関する展示品が多く沼の大切さが良く理解できる。残念ながら印旛沼には親水会館がないが、自然を求めて散策に訪れたり、チューリップ祭や、花火大会のイベントには多くの人が佐倉ふるさと広場を中心に県内外から訪れて、小さな休憩所の愛称「佐蘭花」に立ち寄っても、印旛沼の現状を解説する掲示物がなかった。そのために平成12年度から今年の3月までに、印旛沼環境基金からの助成金を得て、印旛沼の解説パネル10枚(A1型の大きさ)を3年間で完成し、佐蘭花の壁に展示して印旛沼をより理解していただいている。
(1)印旛沼の概要(2)印旛沼の周辺と治水・利水の概要(3)印旛沼の成因と開発の歴史(4)印旛沼の水と水質改善(5)印旛沼の水生植物(6)印旛沼水生植物の分布(7)印旛沼の魚類(8)印旛沼の鳥類(9)印旛沼とその周辺の生物(10)印旛沼の水源・水収支と用語解説。
 なお、同パネルは、A4版のコピーで環境関連会議・小中高校の環境学習資料として活用している。その他、印旛沼は病んでいる12例、印旛沼の水質浄化のための五つの提言も作成した。

【2】イベント会場への印旛沼解説パネル展示とPR活動
 【1】で述べた解説パネルや当会作成の配布資料「家庭雑排水対策」「サイクリングロードマップ」「会報」等を揃え展示とPR活動を下記の会場等で展開している。
(1)佐倉市水辺環境展(平成12年10月29日より毎年)(2)エコメッセちば2001(平成13年11月2、4日)(3)佐倉チューリップ祭(平成12年4月より毎年)(4)よみがえれ印旛沼県民大会(平成14年7月31日)(5)第6回手賀沼流域フォーラム(平成14年10月12日)(6)全国小中学校環境教育研究全国大会(平成14年11月)(7)印旛沼環境団体連合会結成大会(平成15年2月9日)


印旛沼の環境学習と学校支援活動の実施

 印旛沼をより理解するために、印旛沼と流域および他の湖沼の自然・治水・利水・環境施設の見学会を年5回程実施している。また、会員および市民も対象に講演会を年3回実施し、全会員の情報源として会報も毎月発行し会員と佐倉市行政部門や関係者にも配布し続け、今年4月で47号を配布した。さらに、学校への出前環境学習の実践から、小学生に毎年、佐倉チューリップ祭り用13万から15万個の球根植付け指導や、ゴミ拾いと自然観察の学習指導等を実施している。

【1】講演会の開催概要
 印旛沼の水質・印旛沼と土地改良区・印旛沼白書・第4期印旛沼水質保全計画・印旛沼と漁業等をテーマに4年間で講演会を12回開催し約800名が受講している。講師には、千葉工大の滝和夫教授、元千葉県水質保全研究所小林節子先生、印旛沼環境基金白鳥孝治主任研究員等を迎えて開催している。

【2】学校対応の印旛沼の自然と環境をテーマとした学習支援活動
(1)佐倉市民カレッジ1年生100名・・・印旛沼の自然と環境講義(平成14年10月22日)
(2)佐倉市印南小学校5年生55名・・・ゴミと印旛沼の課題実習と授業(平成15年2月)
(3)千葉県立八千代東高校1年生80名・・・印旛沼総合学習講演(平成15年4月30日)
(4)佐倉市内小学校4、5年生約100名/日・・・チューリップ球根植付実習(平成11年10月11日から毎年)