「ふるさとづくり2003」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞賞

大都会の住民連帯を熱く模索する
北海道札幌市  稲穂金山活性化推進委員会
 当委員会(岡田信一委員長)は、稲穂金山連合町内会連絡協議会(岡田信一会長)の下部組織である。同協議会は、
 ・稲穂連合町内会(一ノ官博昭会長、14町内会)5406世帯、1万3311人
 ・金山連合町内会(岡田信一会長、8町内会)1703世帯、4425人(平成15年4月1日現在)
 で構成されている。
 稲穂は、豊かな実りを期待して、金山は金鉱石の産出地として、その名がついた。
 札幌の西端に位置し、国道5号線を軸に南北1km、東西3・5kmに住宅地が連なっている。一時、東洋一の含有量といわれた金鉱の三菱金属鉱山手稲鉱業所が閉山となり、代わって、札幌の急膨張に伴い、昭和30年代後半から宅地造成が進み、新旧住民が混在する地域となった。著名な会社、団体はないが、ここには多くの市民の暮らしがあり、豊富な英知がある。
 町内会発足当初は、組織の整備に追われ、盆踊り、敬老会などの平均的な行事に取り組むのが精一杯だった。数多くの役員を輩出したが、平成9年になって、やっと、住民の新しい連帯とはいかにあるべきか、の意識が芽生えはじめ、矢継ぎ早に問題提起されるようになった。
 スタッフは、テーマごとに分担を決め、一般会員らを動員して、楽しいまち、愉快なまちにしようと、計画の具体化に取り組んでいる。経費は、連町負担もあれば、個人負担もある。役所の助成を仰ぐものなどさまざまだ。
 現町内会役員は、大都会の住民連帯がいかにあるべきかを模索して、熱く一丸となっている。
 以下、その具体的取り組みを説明する。


稲穂金山よもやま話の発行

 稲穂、金山がどのような経緯で今日になったかを啓発する手法として、この地に伝わる昔話を拾い集めた。5年計画で、すでに4冊発行した。長く居住する住民から聞き取り調査し、執筆者を指名した。1冊5話に限定し、小学生が読んでも分かるやさしい表記を心がけている。
 毎回、3000部印刷し、町内会ごとに回覧するほか、区役所、連絡所、区図書館、児童会館、小中学校などに置き、関心のある住民に無料で提供している。
 稲穂小、手稲西小3年の郷土を知る学習の副読本としても利用され好評だ。
 最終年にあたる今年、どのような切り口にするか、検討が進んでいる。


巡回児童絵画展の開催

 「ボクのまち 私のまち こうだといいなぁ」の副題をつけ、稲穂小、手稲西小3年、約200人から地域がどのように変わればいいか、夢いっぱいの作品を募集、両校教諭の協力を求め、秀作10点を絞り込み、地域のスーパー、そば屋、郵便局など12か所を巡回、展示している。6年目になった。
 平成15年6月1日現在、手稲南中で展示中。
 秀作の10人に国語辞典をプレゼントするほか、参加者全員に参加賞を出している。


無名の滝に愛称をつける運動

 よもやま話のテーマ選定会議で、突然出てきた。「これは面白い」と衆議一決、平成14年度のメインテーマになった。事前調査を経て、「幻の滝探検隊」と名づけ、一般会員に参加を呼びかけ、40人ほどで現地踏査した。探検隊員はこぞって愛称をつけるべきだとなり、会員全戸に滝の所在地、規模などを説明したチラシと投票用紙を配布、稲穂会館、金山会館に投票箱を設置して愛称を募った。
 この結果、応募は170種、375票もあり、もっとも応募の多かった「金山の滝」とすることに決定、手稲区役所を通じ、国土地理院に「地図に書き込んで欲しい」と要請した。
 「金山の滝」応募者の中から抽選で4人を入賞とし、残る10人に残念賞を出した。
 NHKの金曜広場に出演したほか、札幌テレビが特集番組を放映するなど、大きな反響があった。


ホームページの作成(げんき!げんき!稲穂金山)

 IT時代に乗り遅れたくない、若い母親の刺激になれば…との願いから、当委員会の5人が平成13年、猛烈特訓を受けた。なにせ、若くても65歳。しんどいこと、この上なかったが、ともかくアップした。平成15年5月30日現在の訪問客は3900件余。
 汗だくの更新作業が続いている。当委員会が扱ったまちづくり運動の大半はこのホームページに掲載されている。
 アドレスは、
 http://www.galaxy.city.sapporo.jp/teine/genki/


歴史史跡標の建立

 平均的な民家から100年以上も前の文書の提供があった。毛筆の草書のため誰も読めない。そこで、稲穂中学校に鑑定依頼をしたが、解読できず、はたと困った。そこで、会員に呼びかけたところ、元道庁職員(獣医師)が堪能で、スラスラ読んでくれた。
 この結果、一通は、稲穂神社を建立したいので許可をして欲しいという請願文書だった。法務局に出向いて登記簿謄本を手繰った結果、現在、この土地は、帯広市の土地会社が所有しているが、稲穂4―5の鬱蒼としたササやぶになっているものの、稲穂を見渡す高台に稲穂神社があったことを特定、平成12年、歴史史跡標第1号を建立した。
 もう一通は、地域の住民代表が出したもので、生活用水に困っており、自分たちで川を掘るから、軽川(現在・一級河川)から分水することを許可して欲しいという請願文書だった。これも、歴史的に貴重な資料なので、「手堀りの小川」と命名、平成14年、稲穂2―1に第2号を建立した。
 手稲の初代戸長や開拓使(現・道庁)開拓大書記官の署名があるほか、申請してからわずか2か月で許可される超スピード決済だった点に注目、スタッフが稲穂文化祭などで解説している。


失敗作も数多く

 手稲区が主催するものに「まちづくりコンテスト」という趣向があった。
 スタッフは意気込んで「ぐるっと周回遊歩道」を作るべきだと主張した。地域には、北尾根ルートと乙女の滝ルートの2本の遊歩道がある。これをふもとで連結すれば、人家に近づくことなく、自然いっぱいの周回路ができると考えた。
 ところが、札幌市は遊歩道はすでに完成したと見ており、現状以上の造成は不可能と一蹴された。
 もうひとつ。地域をたたえる歌はたくさんあるが、どれも市民権を得たものはなく、この際、手稲区民ぐるみの「交響詩・手稲山」を作ろうと主張した。手稲の創成期から語り始め、そして成熟期の現代、夢いっぱいの未来へと歌い続け、全編歌い上げると30分にもなる壮大なものを作るべきだといった。イベントのたびに、誰も耳を貸さない実行委員長の挨拶なんて一切排除し、出だしのひと節か、最後のひと節を参加者全員で大合唱すべきだと主張した。
 審査員は「アイデアは抜群だ」とコメントしたが、反響はゼロのままとなっている。


15年度の新たな取り組み

(1)みんなで捜そう 温泉ツアー
 金山の山中に温泉の湧き出ているところがあるという。山菜採りの愛好者が言い出した。かつて、鉱山が盛んだったころ、温泉があったと記録にある。この場所を特定したい。ひょっとして、温泉が再開できるかもしれない夢が広がる。

(2)幸せの黄色い自転車
 自転車の盗難、乗り捨てが後を断たない。マナーの悪さは地に落ちた。そこで、世相を逆手に取り、乗り放題自転車、乗り捨て自由自転車を発案する。
 札幌市が保有する放置自転車の無償譲渡を受け、老人クラブの協力で使用に耐える器材に修復する。そして、車体を黄色に塗り上げる。小学生の協力を求める。新たな問題点もないではないが、千葉県市川市の行徳駅でNPO法人「青少年地域ネット21」が取り組む「共有自転車」方式を手稲で実現できないか、真剣に模索中だ。