「ふるさとづくり2002」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
菜の花エコ・プロジェクトによる地域循環型社会の形成 |
広島県大朝町 特定非営利活動法人INE OASA |
はじめに 2001年9月1日、菜の花エコプロジェクトの活動を始めて1年が過ぎようとしているころ、「この車は廃食油リサイクル燃料で走っています」と表示された1台のスクールバス(兼町内巡回バス)が、天ぷらの香りをさせながら大朝町内を走り始めた。 ことの始まりは、2000年9月であり、「何かしなければ町は変わらない」という熱意ある仲間が集まり、何日も語り合った。その結果、ITの推進と菜の花を活用した循環型社会の形成を目指す「みらいかいはつ提案書『甦れおおあさ』」を策定し、行政に提案した。そして、この「みらいかいはつ提案書」に賛同した20歳代から30歳代を中心とした様々な職種の仲間20数名が集まり、「IT&菜の花ECOのまち"おおあさ"実現プロジェクトチーム」が発足、その後、頭文字の「I」と菜の花の「N」、ECOの「E」をとり、NPO法人を目指して「INE OASA(い〜ね!おおあさ)」を設立、新たなまちづくりへの取り組みの一つとして"甦れ!おおあさ"「菜の花工コプロジェクト」を始めた。 取り組みの概要 1.菜の花エコプロジェクト このプロジェクトは、休耕田の"油田化"と地域循環型リサイクルシステムの構築が柱である。 さらに細かくプロジェクトの流れを説明していくと次のとおりである。まず、休耕田や転作田を菜の花畑に替え、春には花が咲き、訪れる人々の目を楽しませ、初夏には菜種の収穫期となる。そこで採れた菜種は搾油し、食用油となり町内の各家庭や学校給食等で使用された後、町内各事業所、集落単位、また学校単位で収集される。収集された廃食油は、再生処理されバイオディーゼル燃料(以後、BDF)に生まれ変わり、農耕車輌等で利用される。農耕車輌等から排出された二酸化炭素は、菜の花の成長過程で吸収されていく。さらに菜種の搾り粕は、良質な有機肥料となり翌年の菜の花を育てる。この一連の循環が「菜の花エコプロジェクト」である。 2.実現に向けた主な取り組み ○菜の花植付け…2000年9月菜の花の種まきをし、菜の花の苗を60aの休耕田に植え付けを行う。2001年秋には、3倍の180aに広がった。 ○廃食油燃料化プラントデモ設置…2000年10月には秋の地域イベント「おおあさふるさとまつり」において、廃食油精製プラントのデモ設置を行い精製作業の実演。 ○INEおおあさホームページ開設…私たちの活動を紹介したホームページを2000年12月に開設し、活動を広く紹介。 ○廃食油回収開始…町内の45行政集落の内、3集落で開始。メンバーは各集落に出向き、趣旨説明及び回収を依頼。現在、27集落で実施中。 ○菜の花広場発行…活動を紹介する広報紙発行開始。月に1度発行し全世帯に配布。2002年5月現在、18号を発行。 ○INE OASA設立…NPO法人を目指し、「菜の花エコプロジェクト」メンバーとしての活動から、「INE OASA」という組織を設立しての活動を開始。 ○講演会「環境と健康にやさしいまちづくり」開催…2001年2月行政と協力し、滋賀県環境生協理事長藤井絢子さんの講演会を開催。町内外から約300名が聴講。 ○菜の花応援団募集開始…燃料化プラントを購入するため、一口3000円で応援してくださる有志の方を募集。200名強の方から230万円の協力を頂いて、待望のプラントを2001年3月25日設置。同年4月1日町民等関係者を招き点火式を開催。 ○全国菜の花サミット開催…2003年春全国菜の花サミットを開催する予定。 ○総合学習を支援…大朝小学校の総合学習で「菜の花エコプロジェクト」が取り組まれることとなり、学習支援、刈り取り体験等のインストラクターを務める。また、小学校においては、児童が月2回の廃食油回収を開始。 ○NPO法人INE OASA設立総会…2001年7月17日、NPO法人設立総会を開催、同年11月認定。 ○育森県横浜町視察…2001年7月22日から2泊3日で菜の花日本一の作付面積を誇る横浜町を視察。町のまちづくり支援事業の補助を活用し、町から産業課長が同行。 ○再生燃料(BDF)を使用したスクールバス出発…2001年9月1日2学期の始業式の日、BDFを使用したスクールバス(兼町内巡回バス)の出発式を大朝小学校で開催。 活動の特徴及び地域との連携 まず、「INE OASA」の特徴は、菜の花エコプロジェクトの多くを主催しているのは自治体であるが、民間のまちづくり団体がプラントを導入しプロジェクトを推進しているのは、全国でもまれである。また、会員の構成は、自営業・会社員・公務員・団体職員・農業経営者とバラエティに富んでいる。 次に、地域との連携は大朝町・地域・学校の3点である。大朝町とは、活動を円滑に進めるための指導・助言、また講演会の共同開催など連携し進めている。また、町単独事業のまちづくり支援事業やプラント購入費補助等の支援を受けているほか、町税条例の改正によりNPO法人化後においては、町民税及び固定資産税の減免措置を受けている。 地域との連携には特に力を入れている。講演会の開催、地域説明会の開催、広報紙「なのはな広場」(月1回)の全世帯配布等を行っている。地域住民は「なのはな応援団」として、プラント導入の資金協力や休耕田への菜の花の栽培に取り組んできている。NPO法人後は、住民のみなさんには賛助会員になっていただき会の運営に協力してもらっている。また、住民は行政集落単位で、月に1度廃食油の回収に協力している。現在27の集落が回収に協力している。回収が始まっていない集落の人たちには、町内2か所にある回収ステーションで、回収に協力してもらっている。町内の事業所では、飲食店の一部で協力してもらうなど、徐々に広がりを見せている。 学校との連携については、大朝小学校で昨年から始まった総合学習において「菜の花エコプロジェクト」に取り組んでおり、菜の花の観察、刈り取りからこなし、搾油、調理実習、種蒔き、子どもたちの家庭から出る廃食油回収が行われている。総合学習において会員は、先生方と協力し総合学習のインストラクターとして子どもたちの指導に当っている。大朝中学校においても総合学習として、同様の取り組みが始まっている。また、隣町の中学校からも環境学習のため見学及び指導の申し入れがあり、同じように対応をして地域に貢献している。 活動の課題と展望 現在の課題は、菜の花の栽培面積拡大・法人運営費の確保及び軽油引取税の3点である。まず、菜の花の栽培面積拡大については、いかに農家の理解と協力を得て進めていくかが大きな課題である。このことについては、行政の転作奨励作物としての認定を受けることを前提に協力農家と作付会議を開催し、作付面積の拡大について協議を行っているところであるが、農業経営の面から考えた場合、急速な拡大というのは難しい状況にある。そのため農家への説明会及び行政の転作奨励作物としての認定への働きかけ等について、地道な努力により面積拡大を図らなければならない。次に、法人運営費については、現在は会員が月2000円の会費を納め活動費に充てている。しかし組織の運営は大変厳しい状況にある。最後に、軽油引取税の問題については、現在BDF普及の障害の一つが軽油引取税であるため、全国の活動団体と連携し軽油引取税の減免措置への働きかけを行っている。 また、今後の展望については、上記課題の解決を進めることは当然であるが、これ以外に、全国菜の花サミット及び環境教育プログラムの提供推進があげられる。まず、2003年春には全国菜の花サミットの本町開催が予定され、今後はこの成功へ向けて全力で取り組む予定だ。次に、近隣の小中学生を対象とした環境インストラクターによる環境教育プログラムの提供推進である。 このプロジェクト推進による効果は、地域循環型社会の構築のみならず、地域のあらゆる産業に波及し、町の活性化につながるものと確信している。今後も全国の団体と連携し、プロジェクトを推進していきたい。 |