「ふるさとづくり2002」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
五箇山自然文化研究会の取り組みについて |
富山県上平村他 五箇山自然文化研究会 |
五箇山地域は富山県西部の南端に位置し、利賀・上平・平の3村で、岐阜県・石川県と隣接する。集落は険阻な庄川の上流域の沿岸に点在している。人々のくらしは、明治時代以前は煙硝の生産で、その後は養蚕と蚕糸・木炭・林業等で支えられていた。しかし時代の波でそれらの需要が落ち、交通の便もきわめて悪い地域のためにその後の生活は決して楽なものではなかった、第2次大戦後、いくつものダムや発電所の建設に伴う道路整備、物資の流通、水田の開発などからようやく人々の生活が向上し、諸産業に携わる人や物資の平野部との流通がスムーズとなり、近年は年間80万人を超える観光客が訪れるようになってきている。 自然文化解説員養成講座受講生が結成 五箇山自然文化研究会は、平成3年度から2年にわたり上平村で行われた「自然文化解説員養成講座」の受講修了者が結成した。会の目的は、五箇山地域一帯の自然を愛しみ、人々が長い歴史の中から大切にしてきた生活の知恵や文化を見つめ守り、その価値の尊さについて地域の内外に認識を広めようとするものである。 会員は現在46名で、五箇山地域のほか、高岡市や県東部の上市町からも参加している。会合は年1回の総会(年度末に)のほか、後に述べるア〜エについての活動を行う例会を5〜6回行う。また観光に来村する人々が多い季節は定期的にも臨時にも解説活動を行い、村の事業に参画するなどの活動をおこなっている。 ア、体験・研修活動 (1)合掌造り家屋の維持管理に関するもの…茅の植付け(6月)、下刈り(6月)、茅刈り(10月)、屋根茸き(機会に合わせて)など (2)食文化に関するもの…山菜の採取・調理・保存・食味体験(5・6月)、栃拾い・アク抜き・栃餅づくり、報恩講様料理づくりなど (3)歴史に関するもの…古くから使われてきた峠道を歩く(10〜11月)、古老から昔のくらしや言い伝えなどを聞く(機会をとらえて)、五箇山の歴史ゆかりの土地を訪ねるなど イ、啓発活動 会員のみならず、一般の人々にも参加を呼びかけて講演会をする。「材木山の仕事」、「合掌造り家屋の構造と屋根の葺き方」など ウ、調査研究活動 聞き取り調査、調査のまとめ、「五箇山の四季とくらし」の編纂など エ、解説ボランティア活動 定期解説(8、10、11月)、依頼解説(臨時)、村が行うイベントでの解説(村民登山、合掌ウォーク、雪祭り、合掌集落ライトアップなど) 忘れ去られようとしている生活の知恵・文化を伝承したい 五箇山の地域の人々には、自分たちが育った五箇山の自然や生活の歴史について、平野部の人々に比べては遠隔の地であり、時代の進歩に遅れがちで貧しかったという思いを持つ人が少なくなかった。しかし、ダム・発電所の建設や灌漑用水の整備による水田の開発、道路の整備、さらにトンネルの完成などによって生活様相は一変した。人々はくらしが豊かになってきた半面、苦しかった時代の生活や歴史・文化等についてはあまり語り伝えようとはしなかった。 五箇山自然文化研究会は、きびしい生活の中にも大切にしてきた家族や人との絆や生き方の知恵・文化等が、新しい世代の時代に合わせ過去を忘れようとする人々の陰に消えていこうとするのを掘り起こし、その価値についての認識を新たにし、学び、活かし、伝承していきたいと考えている。 本会がこれまでの活動してきた成果としては次のことがらが挙げることができる。 まず一つは、五箇山の人々が厳しい自然の中で互いに助け合って生きてきた生活の知恵や文化に対して、会員自身の認識が大いに深まってきたことである。 二つ目には、解説活動やガイドブック「五箇山の四季とくらし」の出版により地域の内外の人に現代の生活で失われつつある生活の知恵や文化についての認識が広まってきたこと。 三つには、地域は合掌造り集落が世界文化遺産に登録されたことも加わって、地域の人々に自らの生活の歴史や文化についての誇りが芽生えてきていることが挙げられる。 本会の同好の輪は、先述した受講修了者の枠を越えて、さらに増えつつある。今後は若い世代にもどんどん参加を呼びかけて、今後とも一層五箇山地域のよさの探究・伝承・活性化に努めていきたい。そして五箇山地域外ともかかわりを広げながら、会員自らの生活の知恵としても学びを続けていきたいと考えている。 |