「ふるさとづくり2002」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

雁木でつなぐ"歩いて暮らせる"明るい仲町づくり
新潟県上越市 仲町まちづくり協議会
仲町の歴史とその変遷

 仲町の歴史は慶長時代の松平忠輝公による高田城築城に始まります。
 城下町は職種別に区分され、大町・本町・仲町(現在の町名)3本の南北2kmの道路沿いに、商い・職人の町屋が区分けされ配置されました。仲町は両替町(2丁目)、鮮魚類を地域独占的に販売権を与えられた田端(3丁目)その他各種職人町とし、江戸末期までその町制度が続きました。明治に入り、魚販売の独占が解禁となり、職種別町制度が徐々に崩れて行きました。
 魚屋を中心とする街(3丁目)は明治から戦後まで料亭花柳界に変身隆盛し、今は料亭からスナック・バー等飲食店街として、華やかな街となり歴史の名残を残しています。
 信越線が開通し高田駅周辺は商店街となり(4丁目)、さらにその周辺は商工居住地として(1、2、5、6丁目)時代とともに変遷してきました。


雁 木

 豪雪地の高田は、雪に埋まる冬期の生活を守る、生活通路として昔の人々の智恵で雁木がつくられ、現在も歩行者の通路としてなくてはならないものであります。
 雪下ろしが行われた直後は、道路の通行が止まり、雁木のみが通行手段となることが現在でもあります。
 この生活歩行道路としてつくられた雁木は全て私有地であり、雁木も全て個人の負担での個人の所有構築物です。住民が連帯して街を守る昔の人々の良き心・良き風習がうかがえます。
 車社会となり、道路舗装改修が行われる毎に道路の高さが高くなり、人々の価値観が変わる中で、秩序ない建築が各個で進み、雁木が途切れ、段差ができ、歩行者に(高齢者・幼児・車椅子・乳母車・障害をもつ人たちに)厳しい歩行路(悪路)になってしまいました。


まちづくり協議会の活動の始まり

 平成に入り仲町通りの町内会が協力して街の課題に取り組もうと、"仲町通り連絡協議会"をつくり、活動を行ってまいりました。
 市の再開発事業として、高田本町・駅前通りの再開発が進むなかで、悪路雁木の現状を行政に善処を訴えました。
 しかし、人々の歩行路と利用されている雁木通りは、私有地であり、建築基準法に反しない限り、行政が規制することの出来ない現在の状況であります。
 よって、上越市の"自前のまちづくり制度"を活用し、自らの手で、将来どのような街づくりをしたら良いのかプランニングし、行政に提言することとし、仲町2丁目〜6丁目の町内住民1080世帯が協力参加し、平成12年に仲町まちづくり協議会がスタートしました。
 (附記…仲町1丁目は昔から南北道路に雁木がなく、境界に川1本隔てることから今回の協議会活動に参加していない。)


まちづくりプランの作成

 各町から推薦された幹事20名で、仲町をあらゆる面から問題点をあらいだし、住民アンケート・タウンウォッチング・検討会を精力的に行い、平成13年3月"仲町まちづくりプラン"を作成、協議会の承認を得て発表をいたしました。
 わずかな予算のなかで、協議会委員が汗を流し100%手作りでつくりあげた住民プランであります。
 今、町中は居住人口が減少し、少子高齢化が極端に進んでいます。雨天・降雪期でも傘を持たず歩いて買い物が出来る居住区が街の中にあります。
 総会でプランの内容を協議しその結果、仲町の緊急改善しなければならない最大課題は、やはり雁木の段差を解消し、"雁木でつなぐ歩いて暮らせる雁木ある仲町通り"の再構築でした。


実践事業"モデル雁木"建設へ向けて

 適地を探してモデル雁木をつくろうと、平成13年度活動計画にきめました。
 まず、市の都市計画課・景観デザイン室と再三協議し、高田仲町の歴史を活かす、"仲町雁木ガイドライン"をつくり、強制力のある市の条例化を目指しました。(条例化は未達成)
 その矢先平成13年5月29日未明この地8棟が全焼の大火災にみまわれました。
 協議会では、この罹災地に8軒つないだモデル雁木をとの、交渉に入りました。
 しかし、あくまでも雁木歩道は私有財産であり、析衝を重ねる中で、地権者の経済面の他諸々の事情もあり、8軒全部の雁木でつなげるまでにはなかなか至りません。再建に着工する所からガイドラインに沿った雁木を建設いただくよう理解と協力を要請し建築が進められています。


モデル雁木歩道と、雁木照明の敷設

 協議会ではせめて歩道だけでも車椅子も安全に通れるフラットな歩道をと、地権者の同意を取り付け、8軒40mにわたり高田公園に使用されているさくら御影石を使用し、側溝にはヒールのかかとも落ちないグレーチングを施し整備いたしました。
 さらに夜間の安全に配慮し雁木照明を周辺に取り付けました。
 また、市の進めている"花と緑の街"に協力し、今回の事業趣旨のPR看板を掲げたプランター花壇を協議会全町に配しました。


敷設の内容

(1)昔の雁木石調に、さくら御影右を幅1・8m長さ40mに施設
(2)目の細かな会側溝グレーチングを施設
(3)周辺雁木延べ200mに20基の雁木照明を取り付け
(4)PR看板を取り付けたプランター花壇10基を配置
 平成14年4月4日市長をはじめ行政関係者を迎え、町民120名が参列し竣工式を行い、行政のさらなる施策を求めました。
 大勢の皆様から、道路と歩道が真っ平らなことに、これが真のバリアフリーと高く評価いただいています。


今後の活動

 今回の罹災地区の建設も続いています、ガイドラインに沿った雁木を造っていただける約束を得ています。さらに駐車場も雁木でつないでいただけるようお願いしています。
 今後は、さらに"雁木ガイドライン"を全町民に理解していただき、歴史と伝統を守り"雁木でつなぐ 明るく 快適に 歩いて暮らせる仲町まちづくり"に協力していただけるよう活動を進めてまいります。
 行政に対しては、一時も早く、雁木条例を制定し、上越市民の心が生きる雁木に助成を受け、守れるよう訴えていきます。