「ふるさとづくり2002」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

ナショナルトラスト運動で青少年の健全育成
宮城県白石市 特定非営利活動法人蔵王のブナと水を守る会
 蔵王連峰は、東北地方中央部に連なる奥羽山脈の宮城県と山形県の県境に位置しており,国定公園に指定されています。北の雁戸山から最高峰の熊野岳(1840m)を抜け南の不忘山までの縦走路は、夏は色とりどりの高山植物が咲き乱れ、冬は日本海側からの季節風がもたらす多くの風雪によるアオモリトドマツの樹氷(スノーモンスター)が見事です。また山麓のブナやミズナラの森は、初夏は新緑、秋には紅葉と四季折々の情景で目を楽しませてくれます。その周辺一帯には、ツキノワグマをはじめとして多種多様な動物や植物たちが生活する生態系が残っています。この会の目的は、この残り少ない自然を、豊かで美しい蔵王山麓として、いつまでも残していくことです。
 現在は、森林復元が活動の主体となっています。ナショナルトラスト運動を展開しやすくするため、1999年3月にNPOの法人格を取得しました。多くの市民の協力が得られるよう植樹祭・森の教室等も行っています。


森作り活動

 蔵王一帯は、宮城県内で最もブナ原生林が伐採されたところです。残り少ない森を守るとともに、中腹部に広がる荒れ地を緑の森に復元するために活動をはじめました。
 現在は保水力のある森林の復元―"落葉広葉樹の森"作りを主な活動としています。
 荒れ地が緑豊かな森に戻るまでには、かなりの年月がかかります。この森作りを将来にわたり、息の長い活動にすることがとても大事になります。そのため、会では"自然"と親しみながら地道な森作りをしています。
 当会の活動によって、荒れ地は確実に緑の森へと向かっています。
◆野営場から森作りが始まりました
 国立南蔵王青少年野営場は、蔵王町との境に近い白石市の蔵王山系東斜面で標高約630m〜800mに広がっている自然環境の非常にきびしい場所です。この一画に植林ができるようになったのは1990年で、このときから本格的に森作りが始まりました。
 区画毎に植林・育林・手入れ・調査・計測等を行っています。植林樹種は蔵王山系に自生する落葉広葉樹で、荒れ地に最も早く入ってくるヤマハンノキやブナ科のブナ・コナラ・ミズナラが主体です。
◆苗木は畑に種子をまいて作ります
 苗畑は白石市近郊で、みんなで拾い集めたドングリなどの木の実をまいて苗木を作ります。苗木は植林されるまでの数年間はここで育てられます。苗畑の管理で大変なのは雑草取りで、夏の時期の作業は雑草との戦いの連続です。
◆植林木の調査・手入れもします
 植林地では、決められた範囲内の植林木1本1本の成長記録をとっています。また、野生の小動物・鳥類・昆虫の樹木への影響や被害状況の調査を行うほか、樹木によっては枝打ちや間伐の作業も行います。
 さらに、植林活動以外でも必要に応じていろいろな調査も行います。1997年には刈田峠(蔵王エコーライン)付近のアオモリトドマツの立ち枯れ調査も行っています。
◆みんなで植えた植林祭
 1993年、マスコミを通じて呼びかけ、一般の方々といっしよに植林祭を行いました。小雨にもかかわらず総勢200人あまりで苗畑や会員の家で育てた約25樹種4500本をこえる苗を野営場に植林しました。はじめて木を植える経験をした方もたくさんいました。家族での参加も多数いて、子どもたちにもずいぶん手伝ってもらいました。そのとき植林した木々に、小鳥の巣が見られるまでに大きくなっています。
◆荒れ地のナショナルトラスト運動
 当会では一般的なナショナルトラスト運動とは異なり、蔵王の荒れ地を取得して開発から守り、取得した荒れ地を緑豊かな森へ復元していくという特徴をもった運動です。森林の復元はグリーンレンジャーの森作り活動として取り組んでいます。
 市民の方々のご支援は開発による環境破壊に歯止めをかけ、森林復元への第一歩となります。支援されたお金は荒れ地取得のための資金と取得後の維持等の経費に充てられています。
 現在行っているナショナルトラスト運動は、南蔵王中腹部の荒れ地7000m2を会独自で、13万m2を白石市と共同で取得し、森作りのための作業を行っています。このような状況の中で自然を理解し愛してくれる人材は一人でも多く必要です。


森の教室

 ブナの森の保護や荒れ地を森に復元する活動を多くの人に理解していただくとともに、これまで築き上げてきた森作りの技術などを次世代の人たちに引き継いでもらうことを目的として、森の教室を開設しています。
 自然保護とか環境保全など、世の中に聞こえのいい言葉はたくさんあふれていますが、本当に自然の味方になれる人はどれだけいるでしょうか? 私たちスタッフも「それだけの力量がある」と言い切ることは難しいと思っていますが、私たちの持っている知識は残らず伝え、分からないことについてはともに学んでいける……そんな教室にしていけたらいいなと考えています。
 森の教室は、小さな子どもたちのためにも開いています。森の中の不思議な出来事に、みんな興味津々で夢中になってお話を聞いてくれます。澄んだ瞳をいつまでも持ち続けてほしいと願っています。


愛する蔵王の森のシナリオ

 特定非営利活動法人蔵王のブナと水を守る会は、宮城県のNPO法人認証第1号のNPOです。NPOへの優遇税制(不動産取得税の減免等)を活用するなど、創意工夫しながら積極的に活動を広げています。
 2002年度から3年計画で、約1万2000本の植林を蔵王山麓の約5万1000m2に行い、蔵王を緑豊かな森に戻す予定です。スタートとなる今年度については、全体計画の約3分の1に当たる約1万7000m2に植樹を行う予定です。2002年6月16日(日)には、一般市民や緑の少年団、企業等に参加を呼びかけ、約200人の方々とともに、1900本の苗木を植える植樹祭を実施しました。
 市民が愛してやまない蔵王を豊かな森にしようと、会員一同、力を合せて一生懸命に頑張っております。