「ふるさとづくり2002」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

資源循環型社会システムの構築をめざす
青森県県下全域 特定非営利活動法人資源循環型社会発信地域創造グループ(エッグ)
 地球環境の悪化、資源の有限は叫ばれて久しく、異常気象などを引き起こす例が顕著になっている昨今、環境問題はなによりも優先して解決していかなければならない。これは行政や法律だけで解決できる問題ではなく、生活者自身が意識改革を遂げ、情報発信し、その結果として社会資本の整備や規範づくりがされてくるでしょう。生活者の発信基地として、日頃からボランティア活動などをしてアンテナを持っている、より多くの個人や団体、企業に参画を促して、「環境」をテーマにひとつの独立した機関がNPO法人エッグ設立となった。


不法投棄の監視

【目的】地域が抱えている不法投棄の問題は一様ではないため、地域住民と一体となり、提言方法を検討しなければならない。
【方法と結果】全国的な活動をしている提携NPO法人RASの不法投棄監視システムの事例を学び、青森県の実情に合わせ研究し、国土交通省をはじめ各省庁の担当者と面談し、生産者責任(EPR)と排出者責任(PPP)を徹底追求、廃棄物とマニフェストの追跡調査、適性処理やリサイクルに積極的に取り組んでいく。


美浜運動の展開

【目的】大量生産、大量消費、大量廃棄の社会生活の現状を目の前に、資源循環型社会についてみんなが意見交換し、これから地域が取るべき方法について考える場を提供する。
【方法と結果】清掃活動の場所に選んだのは、青森県の野辺地町と横浜町にかけての陸奥湾東岸約5qの海岸線。以前は映画のロケ地にもなったのだが、最近では地形の関係もあり、全国でも有数の漂着物が打ち上がる場所になっている。生活様式が変化してきているので、プラスチックやビニール製品や漁具、外国文字の製品が地層のように埋もれている。さらに汚れている場所には平気で不法投棄がなされるため、地元のボランティアグループが何年も清掃活動をしているが、追いつかない状態であった。
 そこで私たちは県、野辺地町、横浜町、漁協、ボランティアグループなど20団体に呼びかけ「はまなす海岸美化協議会」を結成、民間と行政が一体となって清掃する事業「むつ湾東岸美浜推進DAY」を打ち出した。日程は草木が生える前でゴミが目立ちやすく、観光シーズン直前の平成14年4月20日、参加者を1000人と定めた。
 地元を中心に約140の企業や団体が様々な協力を申し出てくれた。誰もが現状に心を痛めていて、この事業に快く賛同してくれた。トラックや重機の提供、ゴミ袋などの物資提供、人の派遣、資金面の協力があった。これにより、地元名物のホタテ汁とおにぎりを参加者に用意することが出来た。
 事前申し込みで1200人以上、当日は晴天のおかげで1500人を超えるボランティアが、県内各地から駆けつけた。絶好のピクニック日和にもかかわらず、多くの人がゴミ拾いに来てくれた。それだけ参加者が「自分たちのこと、青森県のこと」として捉えていた表われであると思う。青森県知事、野辺地町長、横浜町長も参加者と一緒にゴミ拾いから昼食までともにした。「いずれ土に返る流木などは拾わない。分別を確実に。」をルールに、約2時間の作業で約120tのゴミをトラックのピストン輸送で運んだ。事業当日、終了後、参加者から様々な感想が寄せられ、子どもたちには絵日記を描いてもらった。大人たちは一様に、利便性に頼った生活の見直しを図り、環境教育の実体験となったとのこと。塩分を含むこれらのゴミがどのように処分されるかにも及ぶ。「ゴミ拾い運動よりも、ゴミを出さない(少なく、適切に再処理できる)啓蒙活動を。」
 協議会では、来年度も同じ時期に清掃実施を決議したので、回を重ねるたびに地域に合った制度的な取り組みや環境技術の開発をも提案していく。


有害物質の監視

【目的】「その地域に住んでいる住民の意識以上には、その地域は良くならない。地域の知的レベルを決めるのは住民自身。」
【方法と結果】平成11年の茨城県東海村におけるJCO臨界事故の際に、金沢大学の小村和久教授らが東海村の環境影響評価を金の高い中性子吸収率を応用し、環境中性子の精密な測定を行ったことを知り、下北半島において、東通村の原発や核燃料サイクル施設の稼動前に中性子測定を始めるべきと考えた。平成13年2月に金沢大学理学部附属低レベル放射能実験施設の旧尾小屋鉱山トンネル内の地下測定室を訪れ放射線測定について学び、小村教授の協力を仰いだ。
 再処理工場近くの公共施設を定点測定地に選び、20g〜40gの金試料を2〜3週間曝露(自然放置)し、特殊ケースに入れ陸路にて金沢大学に送る。平成13年7月から6か月間の測定結果は通常の範囲となり、核燃料サイクル施設の稼動前の背景データとなり、平成14年1月18日に「青い森・地球エネルギーフォーラム2002」の六ヶ所村会場・科学実験教室の小村教室で高校生を対象に説明した。
 これをもとに、今年3月茨城県つくば市で行われた第3回「環境放射能」研究会(学会)で一般市民として初めて、「下北半島における環境中性子の測定〜六ヶ所村における住民参加による環境中性子測定について」研究発表をし開心を集めた。
 人為的事故が多い原子力施設には、住民が関心を持ち監視するシステム作りが必要であり、おのずと事業者もより襟を正して進めざるを得ないだろう。みんなが「安全」の先の「安心」を手に入れるために、より多くの住民に測定に参加してもらい、地元で測定結果を調べることができ、情報発信をしていく環境作りをめざしていく。


青い森・地球エネルギーフォーラム定期開催

【目的】「地球温暖化防止」という世界共通の目的の中、各地域環境の特性を活かした多様なエネルギーが考えられている。下北半島は、日本のエネルギー政策において最重要地点で、特に原子力発電所や原子燃料サイクル施設、風力発電所などがある。一方で燃料電池や水素エネルギーなどの新エネルギーヘの関心が高まってきている。
【方法と結果】そこで、各エネルギー分野の第一人者を下北半島に招き、最先端のエネルギー事情を体感し、住民自身が地域のことを積極的に勉強する場を提供することを一番の目的とした。そして下北半島からエネルギーに関する情報発信をしようと、一回目である「青い森・地球エネルギーフォーラム2002」を開催した。
 環境・エネルギーの先進モデル地区をめざして、現在進められている燃料電池自動車などを例に青森県の役割を考えたり、地球環境保全をめざした地域づくりとして、分散型発電システムの可能性を探るなど様々な方向からみたエネルキー環境が2日間に渡り披露された。
 また、地元中学生らが環境やエネルギーに関する研究発表をする場を設けた。その中で「海に関する調査と研究」の研究発表があり、のちに第10回全国環境教育賞奨励賞、2001ジュニアマリン賞、六ヶ所村教育奨励賞を受賞する活躍となった。
 さらに、エネルギーと環境をテーマに、八つの科学実験教室を設けた。科学者を講師に、小・中・高生を対象に体験学習を行った。測定器を使い、手元にある石やペンを測る「みじかな放射能線」、手短なもので電気を作る「いろいろな電気のつくりかた」など、どの教室もにぎやかであった。科学者らは一様に、日頃接点を持たない子どもたちを相手に、自身にとって大変勉強になったと繰り返し喜んでいた。子どもたちも普段の学校の授業とは違う体験学習に興味を持って臨んでいたようだ。
 このフォーラムは定期開催し、幅広く活用され、この地が日本のエネルギーの特区地域になり、地域発展の大きな力となるよう活動を展開していく。


資源循環型社会の健全育成と啓発活動

 これらの活動は、いずれも資源循環型社会の構築を目指す中で、環境とエネルギーについて提言し、次世代も地域がより住みやすくなるよう、行政や住民を巻き込んで地域の「安心」へ向けて取り組んで行く。
 この地球を有限なる地球号として捉え、乗組員一人ひとりの責任において未来へ飛行し続けるために、大量生産、大量消費、大量廃棄型の飛行計画を捨て、自然環境と共生した資源循環型社会の飛行計画の立案と実行を考えていく。そして次世代の乗組員たちに、快適で豊かな地球号を引き継ぐことが私たちの使命であると考えている。