「ふるさとづくり2002」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 主催者賞

環境にやさしいまちづくりをめざして
熊本県水俣市 水俣市地域婦人会(水俣生活学校)ゴミ減量女性会議
水俣市の概要

 水俣市は、県の最南端に位置し、鹿児島県の出水市・大口市に隣接している。人口3万2000、世帯数1万2000戸と小さなまちで、約8割を山林で占め平坦地の少ないところである。東南の山地から不知火海へ流れる水俣川の流域を水俣市域に持ち、河口域に開けた市街地に商店街、事業所のほとんどが立地している。
 東西には、国道268号、南北に国道3号線、また、鹿児島本線が走っている。川の流域の野山の辺りには農山村が点在し、北西部にはリアス式海岸が続き、天然の漁港と美しい景観をつくりだしている。入り江には、半農半漁村が広がり、山間の湯の鶴温泉、海の湯の児温泉としても広く知られている。
 また、明治時代の文豪徳富蘇峰・蘆花の誕生の地でもあり、明治19年11月蘇峰の提唱によって、日本の女性は、外国の女性に遅れているので、自主性をもった女性として知識を身につけるため、自己研修と地域への貢献を折りにふれ、ともに学びともに男女が車の両輪のごとく、肩を並べられる女性になるよう尽力されたとの記録がある。
 今でも、蘇峰の心を大切に自己研修と地域への貢献は生き続けている。現在の水俣市地域婦人会連絡協議会(水俣市生活学校)である。


活動の動機

 水俣市は、昭和31年5月、公害病の公式発表から約40有余年の間、地域住民として、それぞれ心身ともに悩み苦しんだ。年月を考えると、人間の平均寿命の半分を費やしたことになり、その公害につかったハンデを、どう取り戻すかが市民の大きな課題であった。
 国、県、市、地域住民の協力と理解によって、今では街も明るくなり、お互いの気持ちもつなぎ合わせられるようになり、何事にも協力し合う気持ちを大切に思える姿が、見えるようになってきた。
 市のまちづくりは、「環境・健康・福祉」づくりをテーマに提唱され、市民としても今までのことをバネにして、はじめは、地域婦人会(生活学校)を中心に、私たちに何ができるか真剣に考え、何回も話し合い住民それぞれが行動に移して実践に取り組んだ。
 現在では、「ゴミ減量女性連絡会議」として活動している。


活動の実際
<1>23品目分別収集について

 現在、住民自ら行動している「23品目分別収集とトレー」を家に持ち込まない運動を自分たちの責任目標として掲げ、行動に移している人々の姿は「環境公害」の返上を皆口にするほど、ゴミ分別に対する敏速な市民運動として全体に広がっていった。このように、発展できたのも、言うまでもなく市民の「環境公害」に対する反省と意識の高まりでもあると考える。
 月1回の不燃物の収集と月2回のビニール類の集収日が定められ、各区によって定めた日数は異なるが、集収日には各自で所定のステーションへ持ち寄り、約2時間班長も順番で皆で助け合い、笑顔で子どもから高齢者まで、助け合いながら分別収集に励んできた。その結果、ゴミの減少が見えてきた。
 しかし、一時期は減少していたゴミ排出が、その後、ダイオキシン対策として自然処理自粛に広がり、そのため、最近、可燃ゴミを中心に排出量が増加傾向にある。
 このように、新たな問題が生じたときは、地域婦人会をはじめ女性団体を交えて、私たちにできる環境問題を議題として何回も話し合い解決に努めている。
 このことから、名称を平成9年から16団体加入による「ゴミ減量女性連絡会議」に組織の拡大をはかり、会員数3500名で発足し、各団体の代表で運営会議を開催し、運動の推進に努めている。課題設定については、身の回りを点検し、何が必要で、何が無駄なため環境を汚しているのか協議し、課題解決に努めている。
 そのため、勉強会の開催・他県の視察研修や資料等を作成したりして、課題の焦点化を図り実践に移している。

<2>食品トレー廃止運動について

 まず、ゴミ減量として「トレー」問題に取り組んだ。トレー廃止を考えたのも、毎日毎日食品の購入について一品の料理を作るにしても4、5種類の材科が必要なため、トレーもその枚数必要で、1品でそんなだから2、3品作ると、少なくとも1日に7、8枚が必要だと思い、アンケート調査を実施してみると、平均7枚から11枚との結果が出た。さらに、必要か不必要かの問いでは、必要(18)不必要(80)であった。理由は、「買い物をするのに便利だから」が最も多く、今の時代を象徴している感じがした。
 そこで、この調査結果をもとに、問題の解決をどうするか話し合い、行政、大型店、小売店、それに16団体代表と連携し、「希望と提案・協力」を約束しながら、商店の店頭をつぶさに見て回った。トレーに大事に包装され店頭にきれいに並べられている。1点1点数えて見ると、何と97品目のトレー包装食品を数え驚いた。さらに、必要なもの、必要でないものを集計し、2回目の合同会議を開催し商店側に提示し、商店側も消費者が望むなら「私たちもできるだけカットします」と協力姿勢が強く感じられ、現在20品目までに減少し、お互いの協力関係が育まれていった。
 私たちも、感謝しながらその後、店頭を見て回りその日に反省とデータをとりながら、店頭からトレーが少なくなっている様子に喜びを感じている。
 このように結果がでたのも、行政・商店・消費者の信頼関係と連帯感があったからだと思い、実践を通して、なせばなるの気持ちが強くなり、店頭から消えているトレーを見ると感謝の気持ちと私たちを勇気づけてくれる。
 現在でも、まだ30種類ぐらいとれていないものもあるが、それは、流通関係と水ものや肉類であり、やむを得ないものと思っている。
 しかし、野菜、果物等の自然のままで店頭に並ぶ今、この運動が全国に広がることを願っている。

<3>エコショップの募集について「認定証」の発行

 簡単に審査基準を列記すると、・省資源の推進運動「買い物袋、レジ袋の削減、ハカリ売り」・リサイクルの推進「生ゴミのたい肥化、再生紙の利用など」・環境にいい商品の販売「リサイクル製品の販売など」・省エネルギーの推進「節電、燃料使用の削減など」・その他「環境に関する社員研修の開催」などできているか審査して認定証の交付を行っている。

<4>「ゴミ減量女性会議」の主な活動経過と今後の取り組み

(1)市内大型店、小売店で「食品トレーの廃止申し合わせ」(平成11年9月)
(2)レジ袋をなくす運動として市内各世帯へ「お買い物袋」市より配布に携わる(平成11年4月 マイバッグキャンペーン―婦人会)
(3)エコショップ認定制度に関わり審査に携わる
(4)大型店、小売店において、買い物袋持参に対するポイント制の導入(平成12年4月)
(5)エコショップ定期審査会の開催(平成13年1月より)紙芝居制度
(6)水問題として(水を守る運動)*排水路調査、工場廃水、家庭排水…市婦人会と市環境課合同。調査項目(BOD、COD、MBAS) 以上、活動推進に努めている。
 なお、昨年は、「環境事業団地球環境基金助成事業」で、市民が創る環境のまちで「元気大賞」を受賞する。


成果と今後の課題

(1)行政、商店、消費者との協力関係が芽生え、環境問題特に、(ゴミ減量)とリサイクル運動の輪が地域住民に広がった。
(2)地道な運動が「女性会議」の組織に拡大し、運動が「公害のまち」から脱皮し、環境にやさしいまちづくりへの住民の一体感がみられるようになった。
(3)地域住民に、支え合い励ましあう様子がみられるように地域に明るさと笑顔がみられるようになった。
(4)私たちの目標は、ゴミを資源として、ゴミを出すのでなくゴミになるものを持ち込まない。無用なものは、購入しないという意識を地域住民に、啓発し、運動の広がりを願い、今後も地道な活動を実践し、心豊かな地域づくりに貢献したい。
(5)今後さらに、自分たちの地域は自分たちで創るという意識のもと、行政や関係と連携を深め、循環型社会の構築に継続的に推進していきたい。