「ふるさとづくり2002」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 主催者賞

中山間地の里山における快適環境の創造
三重県名張市 特定非営利活動法人 赤目の里山を育てる会
エコリゾートの建設

 1990年頃、三重県名張市南部丘陵地の通称「赤目の森」200haにゴルフ場建設計画が持ち上がった。経済的価値が下落して、二次林の維持管理に困難な土地所有者の多くは、計画への賛同を表明したが、ゴルフ場が周囲の環境に大きな影響を与えることを懸念した地元住民は、「反対のための反対」ではなくて、ゴルフ場計画の対案としての「エコリゾート赤目の森実現計画」を明らかにして取り組み、ゴルフ場計画を中止に追い込み、92年秋、地元住民主体の「環境保全型保養施設エコリゾート赤目の森」を建設完成させた。


ナショナル・トラスト運動への取り組み

 その後も、産業廃棄物処理場計画が持ち上がり、大規模開発に対して、受け身では里山は守れないと土地の買取を中心とするナショナル・トラスト運動を展開、96年2月にゴルフ場建設反対運動の人たちが中心となり環境自然保護団体の「赤目の里山を育てる会」を設立した、地元やエコリゾートを訪れる都市住民の人たちの賛同を得て、会員は200名を超え、短時間で土地の買取基金である「みどりの基金」も延べ250万円を集めることができるようになった。97年2月には、第1号地の購入ができて、同年10月には第15回ナショナル・トラスト全国大会のエキスカーション会場に選定され、99年に第2号地の購入も完了して、整備に励んでいる。


地域での活動展開

 三重県のNPO条例作りや行政との協働事業に参画、「ユニバーサル・ウォーク」事業や「地域NPO基盤事業」「身近な自然県民一斉散策デー資料作成」事業などに多くかかわり、地元の方々の健康作りやボランティア活動の支援などでも積極的に取り組んできている。


NPO法人化

 特定非営利活動法人の申請を行い、99年4月には、第1号の法人認証、登記団体となった。認定NPO法人の申請も検討の中、社会的地域的な信用を深めていきたい。


里山の事業化を模索

 里山の保全は、人の手が入らなければできないということは、そこにある木材資源を有効に利用することが求められる。経済原則の中での里山の活用は新しい機械やシステムの導入を計りながら事業化を目指すということに他ならない。また、そのためにも、エネルギー政策など社会のシステムを変えていかなければならない課題も。


全国、世界からも来訪

 日常的、系統的な取り組みを行っている団体は極めて少なく、全国からの見学や研修などで、様々な人たちが「赤目の森」を訪れている。三重県職員の研修の場にもなっている。韓国やタイなどの国からも、身近な自然の利用ということで視察が相次いでいる。リサイクル可能な緑の利用の実験場として、今後多くの地域や団体からの訪問がふえるだろうと予測している。


里山の活用と萌芽更新の促進

 伐採した落葉広葉樹を新しい時代の利用として、従来型の利用等とともに、木工加工やバイオ燃料の検討薬木利用のための「キハダ」の樹種転換などの取り組みを進めている。この間の落葉広葉樹の伐採は1000本、「ホダ木」は延べ4万本。キハダの植え付けも、2000本を超える。(年間の活動人員は延べ1000名を超える)木質バイオマス発電、給湯の事業も視野に入れて活動をしている。


東海地方第1号のトラスト地の獲得

 丘陵地の一部2か所延べ4000m2を、多くの市民が拠出した「みどりの基金」によって買い取り、「キハダ」の植林やヒノキの除間伐を行って、トラスト地の環境整備に努めている。昨年はミニログハウスを建設して、憩いの場となっている。まとまった緑地を環境法人が所有するといろいろな可能性がでてきてとても有意義に活用が行える。(ガールスカウトが定点活動の拠点にしている等)


「赤目の森」の里道の修復と整備

 もう10年以上「里道」の修復と整備を行なってきた。消失してしまった道の復活修復するなどを行い、草刈りを年間を通じて行なっている。延べ5km以上あり、年間3回の草刈りは欠かせない。年間の作業人員は延べ500名を超える。里山保全団体の多くは、山の木に辿り着くまでに「道」がないためにその道の復活が大きな仕事になるが、その道が復活すると、昔の景親が戻ってくることを実感し、その仕事に「はまり込む」。


休耕湿地田に「トンボ池」と観察小屋、観察路(トレイル)の構築

 休耕湿地田を産廃場等の開発から守るために、その真ん中の借地に手掘りして「トンボ池」を作り、その水際に「観察小屋」と観察路(トレイル)を構築した。「カワバタモロコ」や「ハッチョウトンボ」をはじめとする水棲昆虫が増え豊かな自然環境を復元し、5年間以上も維持管理を続けている。大変な仕事だが、多くの人たちと一歩ずつ進んでいけば自分たちの「ビオトープ」ができてくる。こんな素敵な場所ができたんだ、とお金や名誉でない時間を感じることができる。


小学校の野外授業のフィールドとして、年間4回の散策継続

 地元小学校の野外授業のフィールドとして5年目、4年生を中心に「赤目の森」を訪れている。四季の変化を身体で体験し絵を描き、その変化を記録する等名張市全体の環境教育の場所として位置付いてきた。四季折々の自分たちの描いた絵は、とてもすばらしい。環境保護の団体は、環境を良くしながら、人の心を育むんだと学ぶことが多かった。


環境保全の取り組みをわかりやすく伝えるための広報活動とイベント

 名張市民向けに「里山だより」の発刊や、里山の調査を進め、「里山ガイドブック」などの制作も行なってきた。保護運動の取り組みだけでなく、親しみやすい「探鳥会」や「散策ハイキング」、毎年開催している「観月能」(3回が終了)などで地域の人たちとの交流促進を進めている。IT革命により、ホームページを作り、メールマガジンも発行しているので、ぜひ読者になってほしい。
 http://www.e-net.of.jp/user/ecoakame/


協働の主体としての積極性とグローカルな活動

 現在三重県の受託事業の「地域NPO基盤整備事業」に取り組んでいて、地域のNPOの仲間たちの支援に努力している。また伊賀市民活動交流会実行委員、伊賀フォーラム2010参画。「国際ワークキャンプ」は4年目を迎え世界的な活動は定着してきた。


市民のニーズに合った里山講座開講

 2000年から始まった「里山保全人材育成講座基礎編」が発展して2001年、今年と引き継がれてきた。今年度は、「子ども里山探険隊」「里山レディース講座」「里山保全リーダー養成講座」の3講座が月に一度のペースで行われている。参加も20名を超える状況で、身近な自然への関心と週5日制の受け皿としての機能が果たされてきている。