「ふるさとづくり2002」掲載 |
<企業の部>ふるさとづくり賞 内閣総理大臣賞 |
健常者・障害者がともに奉仕する社会へ |
愛知県豊田市 小島プレス工業株式会社 |
東海地区で初の身体障害者福祉工場を設立 社会福祉法人こじま福祉会は、昭和46年に愛知県豊田市の小島プレス工業(株)の福祉事業団体として設立された。パートタイムの主婦が増えて、小さな子どもを持つ主婦にとって、自分の子どもを責任もって見てもらえる所があれば、安心して働けるという声が強くなり、寮の一角に託児所を開設。やがて発展して保育園となり、一般家庭から園児を受け入れるなど地域貢献を始めることになった。 そして、小島プレス工業(株)で数名の身障者を採用したとき、その方たちの働きぶりが非常に熱心で、その親御さんからも大変感謝された。そこで「感謝してもらえるのは働くことが尊いからである」と考え、身障者の働く場を作ることを決意。体にハンディのある人にとって、働きやすく暮らしやすい場を設けるため、昭和52年10月、東海3県下ではじめての身体障害者福祉工場であるこじまキャンパスを開所。重度1級、2級の障害者を雇用して、自動車用樹脂部品(レジスター)の成形・組付け作業を開始した。「障害を自分の力で克服し、社会に参加するにとどまらず、社会に頁献できる人づくり」をめざし、障害者自身に「やればできる」という自信を持たせながら、地域社会への積極的参加に力を注いできた。このような経験や実績が高く評価され、平成5年6月、こじまキャンパスさくら工場の建設に伴い、隣接地に豊田市が開所した身体障害者通所授産施設・さくらワークスの運営を受託した。同ワークスは、自動車部品の組付けのほか、意匠的な造形美と素材を活かした無添加の手作りサブレを製造。サブレは、豊田市美術館のオープン記念品やトヨタ自動車(株)殿の全国の販売店で記念品に採用。平成13年に豊田市の銘菓に推奨されるなど、地域産業の振興に寄与している。 障害者を自立させる「やればできる」精神 現在、こじまキャンパスには62名が勤務、さくらワークスには34名が通所している。日常の活動は一体化され、「体に障害があっても、精神的に強い人間に成長しなければならない。常に援助されるだけでは、甘えを助長するだけで、真の幸せにはなれない。すべてのことにやればできるんだという自信を持つことが大切である」ということを繰り返し語りかけ、障害者の自立を促すため、QCサークル、音楽活動、スポーツ活動、奉仕活動などを積極的に導入してきた。とくに職場におけるQCサークル活動は、仲間づくりと自分の考えを発言することによって自信が持てる人づくりの一環として導入しているが、石川馨賞をはじめ、数々の賞を受賞。スポーツにおいても、全国身体障害者スポーツ大会で7人が金メダルを獲得するまでになった。 老人ホームの人々に元気を与える音楽活動 音楽活動においては、平成2年に金管楽器と打楽器で構成されるこじまバンド、平成3年にハンドベルのこじまハーモニーを結成。昼休みのわずかな時間や休日返上で自主練習を重ねてきた。指揮者の動き、周りの人の動きを見ながら、少しずつ音を合わせていく練習を通じて、喜びを分かち合いながら、すばらしい演奏を生み出した。 平成3年には、オールこじま体育祭で入場行進の演奏を担当したほか、お年寄りに音楽を楽しんでもらうため、養護老人ホームの訪問演奏会を開始した。演奏会は、お年寄りに生きる喜びや新しいことにチャレンジする機会を作った。老人ホームの中に、民謡や陶芸などのサークル活動が生まれることになった。また、地域のコミュニティにおいても定期的に演奏会を開催し、音楽を通じて交流を図ってきた。その影響を受け、地域にも多くの民謡グループが誕生した。当福祉会では、老人ホームや地域の人々の活動を支援するため、平成8年より施設に老人ホームの方々や地域の方々を迎えて、定期的な交流会(作品展や演芸発表会)を開催。また、オールこじま体育祭も、毎年入場行進を担当し、従業員、家族を含めた6000人もの地域の人に熱い感動を与えている。 なお、こじまハーモニーは平成5年に全国心身障害者芸能コンクールにおいて、三笠宮寛仁親王妃殿下特別賞を受賞。11年に愛のステージ25周年記念全国大会では全国優秀4団体の一つに選ばれた。一方、こじまバンドは、日頃の活動が認められ、平成10年に長野パラリンピックの愛知県聖火リレー出発式で音楽演奏を担当している。 花苗を地域の人々に配布して地域環境の整備を 当福祉会は、きれいな環境で気持ちよく仕事ができるよう、そして協力し合う仲間づくりの和を高めるため、こじまキャンパス開所時より、花づくりに力を注いできた。障害者にとって、園芸作業がもたらす肉体的・精神的な療養効果が大きいことに着目。独自の花づくりプランを作成して、職員と一緒になって花づくりを進めてきた。当初は、食堂や工場内を花で飾る程度であったが、やがて全従業員参加による花づくりが行われるようになり、従業員グループによる花壇コンクールを開催。また、洗剤パックやペットボトルを使ったリサイクル鉢を活用するなど、廃品利用のアイデアへと発展していった。 花づくりは、従業員の保護者会の協力を得て活発に行われ、工場周辺のフェンスに花を飾るまでになった。フェンスに飾られた花は、地域の人々に「やすらぎを感じる」「心がなごむ」と言われるようになり、地域の人々が、ペットボトルや洗剤容器を施設に届けてくれるようになった。地域の家庭でも、ペットボトルを利用した花づくりが行われ、いたるところでリサイクルの花が飾られるようになった。 現在も、毎朝、就業前の30分間の水やり、草取り、まわりの清掃を行い、美しい環境で周囲の住民からも大変喜ばれている。また、地域との交流を深めるために、オリヅルランの苗を栽培。地域との交流会において、無料配布し、緑を通じた交流を深める一方、地域の環境整備や花のある街づくりの一環として、街路樹の根元に植物を植えるなど環境美化に貢献している。 なお、花づくりについては、昭和61年、全国花いっぱいコンクールで厚生大臣賞を受賞している。 地域との交流めざして夏まつり・クリスマス会開催 障害者に対する地域住民の理解を深め、バリアフリーの社会づくりを行うため、地域コミュニティにおいて、平成8年より、毎年、施設を一般の人々に開放して、8月に夏まつり、12月にクリスマス会を開催している。夏まつりでは、芝生広場にやぐらを組み、こじまバンド・こじまハーモニーが奏でる音楽によって、地域住民の方や従業員及び家族などが一つの輪となって盆おどりを楽しむなど、心の交流を深めている。今では、地域に欠かせないイベントとして定着し、人々の楽しみの場として大きな役割を果たしている。 清掃活動を通じて社会へ奉仕する喜び 当福祉会の道しるべは、社会の一員として働くことに感謝し、社会に貢献することである。従業員の自立の気持ちを深めるため「奉仕を受ける立場から、奉仕する立場へ」をめざして、平成9年より、豊田市の環境美化週間に合わせて、春と秋の2回、豊田市内と地元の挙母神社の清掃活動を行っている。 障害者を受け入れる新しい地域づくりへ ここ数年、バリアフリーが叫ばれるようになった。障害者にもやさしい町づくり、社会づくりが進められ、障害者にも積極的な社会参加の気運が広がってきた。 当福祉会では、今まで、障害者に「やればできる」ことを実感するQC活動や音楽、花づくり活動などを通じて、障害者自身の社会参加に取り組んできた。とくに従業員・保護者・職員が三位一体となった取り組みを通じて、平成12年に谷沢正美さんが勤労障害者のお手本となるような勤務態度が高く評価され、優秀勤労障害者として労働大臣賞受賞の栄誉にも輝くなど、大きな成果をもたらしてきた。 そして地域活動においては、当福祉会の活動が地域をリードし、音楽活動、花づくり活動、作品発表会、夏まつり・クリスマス会などを通じて地域が活性化される原動力となった。 今後は、身障者に対する地域住民の心のバリアフリー化をめざし、今までにも増して、地域社会との交流を積極的に深めていく方針である。それが、21世紀型の新しい福祉環境整備の第一歩となるのではないだろうか。 全国各地の障害者に「やればできる」というエールを送るとともに、身障者をあたたかく迎えることのできる地域づくりの実現をめざして、「私たちはこじまキャンパス、さくらワークスで働けることに感謝し、社会に貢献したいと思います」を心の支えとして、さらなる自立ある活動をめざしている。 |