「ふるさとづくり2002」掲載 |
<市町村の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
「やっかいものの風」が自然エネルギーに |
北海道 苫前町 |
地域環境の特性と地球環境の保全及び都市景観づくり目標・考え方 ○自然的環境資源の特性・個性 苫前町は北海道留萌支庁管内のやや中央部に位置し、町の総面積は454.52km2である。人口は平成14年3月末現在4433人で農林漁業を中心とする第1次産業を基幹としている。自然的特性としては一般に海洋性気候を示し、冬季は強い北西の季節風が吹くことが多いが、日本海を流れる対馬暖流の影響で内陸部より海岸部は比較的温暖であり、古くから風の強い地域として知られているところでもある。 ○歴史的環境資源の特性・個性 当町は古くから道北圏でも有数のニシン漁の最も栄えた地域として、青森県津軽地方からも多くの人々が「やん衆」として定住したところである。また、あわせて津軽凧の伝統文化も定着したところでもある。その後、昭和27年頃にニシン漁が衰退してきたところであるが、故郷への郷愁を込めた凧づくり文化の継承及び普及啓発により、苫前町の自然的特性である強風と歴史的特性である凧づくり文化との融合が図れ、第28回を数える凧揚げ大会=昭和49年より開催されているところである。 ○地球環境の保全及び都市景観づくり目標・考え方 自然・社会歴史的特性に基づく「風」をテーマに風車を取り入れた景観づくりを推進するにあたり、化石燃料大量消費に伴う地球温暖化問題は、人類の生存に直接係わる深刻な問題という認識のもとに立ち、21世紀が"環境の時代"と言われるなか、先駆的に取り組んだ風力発電事業の促進を広く全国に普及啓発し、さらに環境に配慮した持続可能な地域社会をつくるために地域まちづくり団体である苫前町まちおこし対策推進協議会と行政との協働により積極的に推進したところである。 また、地域における景観の価値を再認識し、国民の共通の宝物としてみんなでその価値を高めていくために、地域資源がおりなす農村・集落の美しい景観を国・道・市町村などと連携を深め、広域景観づくりを推進しているところでもある。 地球環境の保全及び都市景観づくりの取り組み経緯・実践 ○地球環境の保全及び都市景観づくりの取り組み経緯 資源活用のプロジェクトの推進にあたり、現にある資源をどれだけ使いこなせるのかがキーポイントとして、地域資源を見つめ生活文化の尺度・生活を豊かにするという評価軸と地域性からの評価を検討し、まちづくりの目標として生活をはぐくむ「空間」をどう形成し、その中で豊かな生活をどうつくるかということを主眼として風力発電に着目したところである。 風力発電施設の直接的な建設要因としては、苫前町まちおこし対策推進協議会による『地球規模の問題であるCO2発生量の抑制を実現し、持続可能な地域社会づくりのモデルとする環境問題に配慮した「風を活用した自然エネルギーの導入」についてと題する風力発電施設建設事業への積極的な取り組みで、まちのイメージづくりにつなげて欲しい』という内容の提言を行政に行ったことにより、景観形成と地球環境に配慮したまちづくりを推進していた行政と住民との着眼点が合致したことを受け、加速度的に町営による風力発電施設「夕陽ヶ丘ウインドファーム・風来望」が着手され、平成12年12月に完成をみたところである。また、民間企業2社による国内最大級の集合型大規模風力発電所「上平グリーンヒルウインドファーム」も着手され、町営の風力発電施設と時同じくして完成したところであり、地球環境の保全を目指した風力発電の先進地として「苫前町ウインドファーム」が形成されたところである。 ○地球環境の保全及び都市景観づくりの実践 当町は風力発電事業の導入にあたり地方公共団体自らが地球環境にやさしい自然再生可能エネルギーとして風力を活かすため、栄浜地区に平成10年度から風力発電施設「夕陽ヶ丘ウインドファーム・風来望」総発電出力2200kW(風車600kW×2基・風車1000kW×1基)の建設事業に着手し、平成12年度に本格的な商業運転を開始したところである。同施設で発生した電力は、観光施設としての有効性を図るうえからも発生電力の一部を自己消費するメニューを設け、現在は風車1基ごとに4灯のライトアップなどへの消費電力として活用しているほか、余剰電力を電力会社に売電するシステムを選択している。 さらに、当町の地理的条件により導入・展開された風力発電施設「夕陽ヶ丘ウインドファーム・風来望」の実現により、上平・力昼地区に「苫前グリーンヒルウインドファーム」総発電出力2万kW(風車1000kW×20基)・「苫前ウインビラ発電所」総発電出力3万600kW(風車1500kW×5基・風車1650kW×14基)の民間企業2社による発電所が建設され、国内最大級の集合型大規模風力発電所「上平グリーンヒルウインドファーム」総発電出力5万600kWの商業運転が開始されたところである。 この上平・力昼地区における風力発電施設の建設にあたり、苫前町が出資・事業用地の提供などによる風力発電事業への積極的な支援協力により、農業生産基地(牧場経営)と風力発電基地(風力エネルギー)との融合・共生を実現するとともに、環境に配慮したヨーロッパ風の牧歌的景観を演出するまでとなった。 地球環境の保全及び都市景観づくりの広がり ○景観及びまちなみの維持・保全の広がり 栄浜地区におけるヨーロッパの洋上風車群を彷彿させる町営風力発電施設「夕陽ヶ丘ウインドファーム・風来望」は平成5年より、自然環境・景観に配慮さらに活力あるまちづくりを目的とした「シーフロントパークとままえ整備事業」のシンボル施設として建設されたところである。隣接する町営の「ホワイトビーチ」・「オートキャンプ場」とあわせ、漁業生産活動と融合を図るための都市との交流拠点づくりとの連携となる港づくり、さらに増大する海洋性レクリエーションのニーズに応えるために整備されている海岸環境づくりとの連携により滞在型観光につながるスポットづくりとして、風力発電施設を核とした「シーフロントパークとままえ整備事業」が推進されているところである。この流動人口・交流人口の増加に伴う来訪者の受け皿として、平成12年5月にオープンした第3セクターが運営する「とままえ温泉ふわっと」と連携することにより、滞在型観光拠点として経済効果を生みだしているところである。 一方、上平・力昼地区における風車が林立する風景は、本来の機能である農業生産基地(牧草地・採草地)とマッチングする景観として魅力を十分に生かすことが可能であり、この景観形成に配慮した地域活性化を目指すため、観光牧場化を図り来訪者などを対象とした散策路を整備することにより年間を通してのメニューを検討し、既設の「上平グリーンヒルキャンプ場」と連携した滞在型観光につながるスポットづくりを推進しているところである。 このように、地球環境及び景観の維持・保全に配慮したまちづくりの施策が、持続可能な地域社会づくりのモデルとした環境に配慮したまちづくりと地域活性化や活力あるまちづくりとなっているところでもある。 ○地球環境及び都市景観づくりへの住民の参加状況とその広がり 「苫前町ウインドファーム」の普及啓発事業の推進にあたり苫前町まちおこし対策推進協議会が主体(共催・苫前町)となり、国内有数の風力発電施設群のある苫前町を「風のかおるまちとままえ」として内外にPRするとともに、環境共生都市(クリーンな町)としてのイメージアップ向上と音楽(クラシック等)を通じ「文化のかおり豊かなまち」苫前町としてアピールすることを目的にした「風のコンサート」の開催、また、住民に対して環境に配慮した自然エネルギーの有効性を図る風力発電施設への理解向上及び地域の特性を活かしたまちづくりの意識向上を図ることを目的とした「風力発電勉強会」・「シンポジウム」等を平成10年度から継続的に開催し、地球環境の保全と地域及び広域景観づくりの目標への住民参加を図っているところである。 「風のコンサート」・「風力発電勉強会」・「シンポジウム」等の継続的な実施により、町内外の各学校において苫前町が取り組んでいる環境対策における風力発電の仕組み・有効性についての講義、さらに現地における実際の風車の稼働状況等を体感して風力発電施設への理解と意識向上を図るエネルギー教室が開催されるまでとなったところである。 また、苫前町が風車元年である平成10年度に大型の風力発電機を取り入れたことにより、全道26市町村において行政及び民間企業が大型の風力発電機を導入し、地域特性を活かした風力発電施設事業の広がりを見たところである。 このように、地球環境の保全及び都市景観づくりの活動情報の提供をする学習の機会や意見交換の場をつくることにより、私たちの生活に潤いをもたらし、地域に対する誇りと愛着を生み出し、訪れる人々を魅了する貴重な財産を地域の創意あふれる自主的な環境・景観づくりの先進地として情報発信しているところでもある。 ○基幹産業との融合とその広がり 今後の町営風力発電事業の展開として、町の基幹産業である農業・漁業を振興するうえで、電源確保(消費電力)を要する施設などが数多く現存することから、地場産業の育成とともに既存産業1・5次、2次加工化の展開を推進するためにも、この発生電力の有効活用の可能性は高いものと考える。 例えば、農業経営上ではメロンなどの野菜生産の過程における市場性の確保を図るため、春先にはハウス内の土壌地温を上昇させるための熱源を必要としている。これら熱源の確保を図るうえで、地域内で経営している酪農家のふん尿を林業上発生する間伐材とを活用し、バイオマスで発生する熱量に風車による発生電力を熱転換(交換)し組み合わせることにより、環境循環型のシステムを図ることが可能と考えている。 一方、漁業においては港づくりと開連し、港内周辺の照明施設のための電力確保をはじめ、冬季における岸壁などが着氷することにより発生する漁業従事者の作業事故防止からも融雪ヒーターの活用など、風力発電による発生電力の有効活用が可能であり、さらには増養殖事業における蓄・中間育成施設などへの電力供給による水産業生産基地の機能性アップとともに加工業への直接・間接的な活用を図るべく展開として、利便性・機能性・安全性の維持確保を図り、社会性・文化性・快適性の向上に向け取り組むものである。 ○苫前町から地球環境の保全への広がり 当町の地球環境の保全や景観形成の維持と風力発電の啓蒙普及活動による住民一人ひとりが主役となる自主的な取り組みにより、平成11年に苫前町を会場とした国会議員超党派による「自然エネルギー促進議員連盟設立準備総会」が開催され、地球環境を守り・地域社会の新たな発展の可能性を展望する自然エネルギーの開発促進を図るための「北海道宣言」を地域の特性を活かしたまちづくりの苫前町で採択されたところである。 また、平成14年に衆議院経済産業委員会における「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(新エネ特措法)案」の審議の参考人として苫前町長が『風力発電は地域経済の活性化につながると同時に地球環境の保護にも貢献できる』ことを強調し『風力発電などの自然エネルギーの普及拡大を図るために、政府の財政支援の充実』を求める意見陳述をしたところである。 今後も地域の連帯の醸成が地球規模における暮らしに心地よさや潤いを与えるかけがえのない財産(地域)としての実現を目指し、さらに地域における景観の価値を再認識しながら、国民の共通の宝物としてみんなでその価値を高めていくために、地域資源がおりなす地域環境及び農村・集落の美しい景観を国・道・市町村などと連携を深め、広域景観づくりを推進していくものである。 |