「ふるさとづくり2001」掲載
<市町村の部>ふるさとづくり振興奨励賞

みんなでつくる杉原紙の里
兵庫県 加美町
 兵庫県のほぼ中央に位置する加美町は、人口7600余りの緑豊かな農山村地域だ。自然豊かなこの町で、古くから和紙がすかれてきた。「杉原紙(すぎはらがみ)」という由緒ある和紙で、日本の和紙のルーツとも言われていた。町立杉原紙研究所ですかれているこの和紙を、町民皆で守り育てている。
 杉原紙は、7世紀後半には貴族や武士に愛用された高級和紙だった。質量ともに当時は日本一で、室町時代には和紙の代名詞と言われるほどの名紙だった。しかし、明治以後、和紙は廃れ始め、大正末には途絶えてしまった。町は、名紙「杉原紙発祥の地」という輝かしい歴史と伝統を誇る地域でもう一度和紙を世に戻したい、と町民に呼び掛け、協力を求めた。


町立の製紙所「杉原紙研究所」を核にして

 昭和45年、杉原紙を半世紀ぶりに復元。昭和47年に町立の製紙施設「杉原紙研究所」を開設。町は、「小さな町の大きな文化事業」に位置付け、同研究所を核に和紙の里づくりに着手した。
 研究所設立後10年を経て、昭和57年に「杉原紙保存会」を結成。翌年同会が県指定の重要無形文化財の保持団体に認定された。昭和60年夏には、杉原紙が神戸市で開催されたユニバーシアード大会の表彰状に採用され、平成5年には、県伝統工芸品に認定。杉原紙を大切にする気運は町内で高まっていった。
 杉原谷小学校では、早くから杉原紙を使った学習に取り組み、和紙の歴史を学んだり実際に紙すきを実習している。昭和62年には茅葺きの実習室「春蘭の家」も完成。ここで6年生たちは、自分たちの卒業証書をすいて巣立っていく。
 近年は、まちづくりグループ「加美ふるさと塾」が和紙の公開地域学講座を開いたり、「(和紙の材料となる)こうぞの一戸一株栽培運動」を展開している。この一株運動は町内に浸透し、ほとんどの家庭でこうぞの木が大切に育てられている。
 平成8年には道の駅「R427かみ」が誕生した。物産館、レストランを備えたドライブインで、横に町立杉原紙研究所も新装オープンした。これらの施設を地域活性化の拠点に、女性20グループによる農産物などの年間総売り上げは、2000万円を超えている。