「ふるさとづくり2000」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

おばちゃんたちの健康大豆村づくり
熊本県水俣市 中小場大豆研究会
 地域資源である休耕の棚田を生かし、おばちゃん集団「中小場大豆研究会」(代表・中村タエ子さん、メンバー数20人)は平成8年から、良質の大豆を生産し、「手作り豆腐教室」の開催や「大豆かりんとう」等の加工食品を開発、精神的・経済的に豊かな、大豆村づくりに取り組んでいる。


健康食材に見直される大豆

 かつては、集落のほとんどの家庭で大豆を栽培し、豆腐や味噌を作り、身近で大事な食料にしていた。それが、現在わが国の大豆自給率は非常に低く、97%輸入品である。しかもその7割が、遺伝子組み換えの新技術による生産物で、食品としての安全性も議論が不十分な状況にある。
 同会は、世界に類を見ない水俣病公害を体験した失敗を、2度と繰り返さないため、自ら手塩にかけ、生産した大豆を大切に、より美味で安心して食べられることにこだわり、当初、集落の主婦7人で、同会を結成し活動を始めた。
 それから、地域住民交流の場である、久木野ふるさとセンター「愛林館」を会場に、「手作り豆腐・おから料理教室」を開催したり、歴史を調べ、60年前まで地域にあった「こづき豆腐」を復活し、市物産館での販売までにこぎつけた。これは、いま健康食材に見直される大豆を、特産物に加工商品化すると同時に、地域の伝統食文化の継承にもなった。
 また、数々の料理教室は、地域間交流の場となって、その輪も拡大してきた。


棚田を「大豆トラスト」に

 しかし、この活動を継続するには、品質の良い無農薬大豆の生産・確保が不可欠である。この大豆栽培は、とくに収穫時の刈り取りから、天日乾燥・脱穀・選別の手作業は悩みの種で、栽培を担う高齢の主婦には、特産品とは言え嫌気を起こして、耕作を放棄する人もでる状態であった。
 そこで、昨年10月、市の「住民主体で個性的な地域づくり支援」制度を活用、大豆脱粒機と選別機を購入することができた。この機械購入によって、同会が、集落内の収穫を請け負い生産者の労力軽減を図った。この秋は、安全で良質な無農薬大豆300キロ、黒大豆60キロの収穫を見た。
 この大豆を材料に、大豆かりんとう・大豆の水煮・黒大豆きな粉に加工し、愛林館で販売した。また、新しく「大豆の古里揚げ」を郷土料理のメニューに加えた。
 さらに、愛林館と共同で、休耕の棚田を「大豆トラスト」に活用する「田援計画・大豆耕作団」と銘打った新たな企画をした。これは、棚田40平方メートルを一口に、4000円を出資する。出資者には、大豆や味噌、大豆クッキー等の加工品の配当がある。
 一方、生産農家には一定の収入を保障し、耕作意欲の喚起を図るとともに、土砂崩れ防止や地下水涵養が必要な棚田の保全に努める。
 この趣旨に賛同した出資者は、食の質や健康にこだわる人びとで80人を越えた。新たな人びととの交流も深め、誰もが心安らぐ、健康大豆村を築く活動を続けている。