「ふるさとづくり2000」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

ふるさと再発見 大和町景観ウォッチング
福岡県大和町 大和町ふるさと塾「景観ウォッチング」
 実際に路上を探索して、町の景観や景色からその町特有の環境資産を見い出し、ふるさとの再発見と町づくりに繋げていこうと、活動しているのが「大和町ふるさと塾・景観ウォッチング」(代表・佐藤虎喜さん、メンバー数33人)で、平成5年に発足した。メンバーは、10代から60代の学生や主婦、サラリーマン、個人事業主、建築家など実にさまざまな町民が集い、町の探索や学習、町づくりへの提案などに取り組んでいる。


見慣れた町も新鮮味増すウォッチング

 「景観ウォッチング」とは、SEEでもLOOKでもなく、WATCHING(注意深く見る)である。町の建物や看板などを1つひとつ個々に観るだけでなく、回りの環境と一体となって、総合的に観ることが必要だ。活動を指導した九州芸術工科大学の岡道也氏は「景観ウォッチング」の楽しみ方として、(1)知的好奇心(2)柔軟性(物事を多面的に観る)(3)総合性(個々の素材を相互に繋ぎ合わせ、ストーリーを組み立てる)の3点を上げている。
 景観ウォッチングは、歩いたり自転車で回ることが必須条件だ。歩いているといつまでも放置されている問題箇所にも多く出くわすが、また、住宅が密集する中の路地や150を超える小さな祠・神社、町内を縦横に走る水路、パノラミックに広がる干拓の大地と空と風。6時間を周期に姿を変える有明の海。全国的に珍しい河川漁港に係留された漁船の群れなどが、見慣れた町の風景であっても実に新鮮に映るのである。


現状認識からまちづくりの提案へ

 景観や建造物、問題箇所などをカメラに収めて、メンバーは熱い議論を重ねるのである。路地は一定のプライバシーを保ちながら、近隣とのコミュニケーションが図られる広さで維持されていることや、水路は干拓地故に貯水と水害に備えられていることなどが、視覚的・体験的に認識できるようになる。
 ウォッチングで培った現状認識や知識を、その後のまちづくりにいかに活かしていくかが重要になる。例えば、観てきたものが個々には優れていても、それが全体として、また景観としてみた場合も優れているとは限らない。だから個々の優れた特徴を生かす仕掛けが必要で、それだけに、ウォッチングの「提言」や「提案」が意味を持ち、そこから「住民参加型のまちづくり」が実現するのである。
 メンバーは、「住民参加型」のまちづくりを進めやすいように、景観ウォッチングの流れを整理した報告書「サーヴェイノート」も発表した。そして、とかく難しく考えられがちだったまちづくりを、景観ウォッチングを取り入れることによって、誰でも気軽に参加できることを体験的に知ることができた。今日、あらゆる意味で「環境」が大事になっている中で、ウォッチングで、まちづくりに長く関わっていくことにしている。
 ところで、大和町で「景観ウォッチング」が始ったのは、今から十年程前、竹下内閣の時代に進められたふるさと創生事業が発端となった。温泉を掘ったり金塊を買ったりと話題の多かったこの事業も、大和町では人材育成を基本に、ふるさと塾でウォッチングに取り組み、今日の発展をみたのである。