「ふるさとづくり2000」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

誰もが安心して暮らせるまちづくり
島根県益田市 益田市保健・医療・福祉のまちづくりワーキング
 平成6年、益田市では、市民参加による保健・医療・福祉のまちづくりを目指した活動が始められた。「益田市保健・医療・福祉のまちづくりワーキング」(代表・永嶺広子さん、メンバー数20人)も、その一環として生まれた。同グループの目標は「誰もが安心して暮らせるまちづくり」で、孤立しがちな高齢者に寄り合いの家を提供する事業やボランティア活動、行政への要請や提言などの活動を重ねている。


孤立化を防ぐ高齢者寄り合いの家が市内各所に

 平成8年5月、農村地帯の横田町で最初の「横田・よりあいの家」が発足した。ワーキングの話し合いの中で、家にこもって寂しく暮らしている高齢者の多いことが話題となり、高齢者同士が寄り合い話し合う場をつくろうという思いが実現した。
 寄り合いの家の反響は予想外に大きく、当初借りていた神社は手狭になり、小学校の空き教室に移った。こうして、月2回、年間22回前後、開設して3年が経つ。
 横田町の成功で、高津町緑ケ丘地区でもワーキング会員が地元老人会に働きかけて、平成10年8月、寄り合いの家「みどり会」が発足した。独居老人や昼間1人で留守番をしている高齢者が10〜20人出席してきて、平均年齢は約80歳。デイサービス施設湖水園を会場に、地域のボランティアが運営などで積極的に協力している。乙吉町でも、ワーキング会員の働きかけで「乙吉ふれあい会」が発足した。ここでは、自治会活動の一環に位置づけ、自治会の元気老人対策の1つとして取り組まれている。ふれあい会は月1回のペースで開き、平均20余人が参加、協力するボランティアも10人余を数えている。
 中吉田町は、「他家を訪れるのも迷惑をかけるし、1日中家にいるのも気が滅入る」という声を受けて、地域の女性が親睦会で話し合い、空き家を借りて「気晴らしの家」が発足した。継続していくために、自治会の活動に位置づけてもらい、月2回開く「気晴らしの家」は、平均15人ほどが参加してくる。
 高齢者寄り合いの家事業は、独居老人や昼間1人で留守番している老人の増える中で、誰もが必要性を感じていてもなかなか1歩を踏み出せなかった。しかし、その1歩を踏み出してみると、立ちふさがっていたように思えた壁が無理なく取り払われていった。力まず立ち止まらず、水の流れのように自然体で続けていくことをメンバーはこの活動から学んだ。


ボランティア活動や行政・業者への提言も

 高齢者在宅福祉の一環として、平成7年10月からスタートした配食サービスでは、調理・配達のボランティアに加え、みるからに心がなごみ、気持ちよく食べてもらうために、アイデアに富んだ弁当の包み紙を手作りしている。また、メンバーと絵手紙の会が共同で「かめの会」を作り、独居老人の心の慰めになるよう季節感を盛り込んだ絵手紙を送り届けている。
 行政や企業に、ワーキンググループから要請したり提言して実現したものも多い。ガイドヘルパーの設置や市営住宅の1階をバリアフリー型にしたり、新設や改築の大型店舗にエレベーターや身障者用トイレを設け、市営陸上競技場にスロープの設置、未舗装道路の改修など、多くの改善がなされている。