「ふるさとづくり2000」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

ふるさと文化の伝承活動
群馬県邑楽町 邑楽町あすへひとこと編集委員会
 町の高齢者学級「生きがいやりがい講座」に参加した個人有志が、自分たちの生活体験を、子や孫に語り伝えるものを書き残すことを発案。昭和60年「邑楽町あすへひとこと編集委員会」(代表・横山榮一さん、メンバー数30人)を結成。14年間にわたって「あすへひとこと」を編集・発刊、全六集を数えた。さらに、第7集の刊行を企画している。
 なお、この会は、当初グループ独自の発足であったが、その後町老人クラブ連合会の特別部会に所属し、永続的活動が期待されている。


はじめは各人自由な体験記

 同編集委員会が、最初に発刊したのは「高齢者の語り」をタイトルに、各人の生活体験を自由に書いた内容をまとめたものである。したがって、子どもの頃の遊び・苦しかった日常生活・骨の折れた農作業の様子・戦争中の外地や銃後の守り・戦後の辛酸等が中心で、読者を50〜70年の昔に誘う内容である。
 第2集も同タイトルで「少年少女・青年時代の思い出」を中心にした内容で、経済不況や戦争時代を当時の若者が、どのような暮らしを送っていたかが分かる。
 さらに、グループで研究した「年中行事・行商人や旅芸人・坪谷地区の芸能豊年満作」等も収録しており、貴重な資料となった。


社会的認知で町の民俗資料に

 平成元年は、邑楽町制施行20周年記念を迎えるにちなんで、第3集は、「昔の遊び」をテーマに、共同で学習、調査を行い編集した。子どもたちが、春夏秋冬、遊びに使った道具の種類や作り方、創意工夫を凝らし遊んだ様子も詳細に掲載した。
 これは、町民を始め、民俗学研究者等、各方面からも高い評価を得た。町当局も「邑楽町の民俗資料」に指定した。
 このように、第3集が評価されたのをチャンスに、同会は、タイトルを決め、町内の高齢者にも呼びかけ、継続して編集に当たることにした。それが第四集「おうらのくらしと民具」の刊行である。かつて、地域の生活に必要とされた道具、とくに農耕・養蚕・機織り等は、土地の主産業を形成していた。その姿が良く分かる内容になっている。
 つぎの第5集は「邑楽町の盆と正月」を題に刊行した。これは前半を「盆」後半が「正月」とし、執筆者自身の家庭で営んできた行事である。「盆」については、アンケート調査結果も収録していて、この行事の移り変わりがつかめる。
 昨年、町内の大字に伝わる伝説・民話・昔話を70話にまとめ第6集「邑楽町の昔ばなし」を刊行した。中には「キツネの嫁入り」を見た人の体験記も含まれていて、祖父母や親、先輩から見聞きした話が、小学校高学年から読めるようにしている。
 この活動は、昨年6月「ぐんまライフ・アップ県民運動」の団体功労表彰と同12月、上毛新聞社の、地域文化再発見への貢献を認めた第22回上毛社会賞を受賞している。
 同会員は、この編集・発刊活動を通じ、共同性や共感を味わいながら、ふるさと文化の伝承に老人力を発揮、挑戦している。