「ふるさとづくり2000」掲載
<集団の部>ふるさとづくり振興奨励賞

メダカの里親による安らぎの地域づくり
栃木県真岡市 西沼メダカ保存会
 地域に数多く生息する淡水魚の中で、最も弱いと言われるメダカが生息できる環境づくりを目指し、平成7年「西沼メダカ保存会」(代表・永岡陽一郎さん、メンバー数23世帯)を設立。各家庭がメダカの里親となって産卵・孵化を管理し、集落センターにメダカの池を建設、メダカと共生する農村環境の保存とともに、安らぎに満ちた地域をつくろうと活動している。


絶滅の恐れあるメダカを家庭で飼育

 西沼集落は、市街地に隣接し平坦な水田が広がる農村地帯、高齢化が進み人家は増えない。集落で最初に、メダカの飼育を始めたのはAさん、平成4年、水田の小さな水溜まりから採取し、自宅の水槽で飼った。
 同じ頃「メダカは絶滅の恐れがある貴重な淡水魚である」と情報を得たOさんも、近くの小川で採取し飼育とともに、生態研究にも取り組んでいた。
 Oさんが飼っていたのは、多産系の改良種で観賞用でもある姫メダカで、水温が15度以上になると6〜10個産卵、2〜3週間で孵化する。田んぼでは、藻や水草に産卵し、孵化した稚魚は稲の茎間に隠れ外敵から身を守る。
 しかし、水槽などの容器で藻や水草に産卵し、孵化しても親が稚魚を食べてしまう。孵化した稚魚は別の容器に移す必要がある。そこで、シュロの皮を丸め容器に入れ、産卵後は別の容器に移し、孵化して稚魚が大きくなったら一緒にする。
 こうして増やされたメダカは、里親である高齢者や子どもたちに分けられ、保存会も設立することになった。


待望のメダカの池が完成

 「メダカは可愛い、どんどん増やしたい」でも、会員が育てた数も2万匹を超え、各家庭とも容器の確保や置き場に苦慮する状況になった。1日も早く小川に帰したいが現在、土地改良事業が進んでいて、放流できる環境ではない。同会はこの事業完了後には、小川でメダカの学校が見られるよう、事業関係者と、メダカが生息できる環境づくりを提言している。
 幸い、平成9年、真岡市と財団法人日本グランドワーク協会の助成で「メダカの池」を西沼集落研修センター内に建設できた。
 集落の人びとの労働奉仕で、業者から提供の植木やショウブ等の水生植物を植え完成した。竣工式は、会員を始め、子どもや高齢者、市関係者百余人が参加、里親の手で「大きく育って」と声をかけ5千匹を放流し盛大に開催した。
 同会の会員は、高齢者が中心であるが、メダカの世話は、猫や野鳥から守る対策を始め、産卵や孵化、水温や水草の管理、生育状態監視等、飼育は家族ぐるみで行われる。だから、各家庭とも話題は尽きないし、明るい家庭が多い。従って、子どもの情操教育や高齢者の生きがいづくりにもなっている。
 この里親制度は、自治会・老人会・子ども会・生活改善クラブ等に影響を及ぼし、より活動が活発になった。平成8年から集落センターに月2回、高齢者を招待し、食事を囲んで楽しく話し合う活動も生まれた。何よりも「メダカを小川に戻そう」を共通目標に、住民の連帯と地域の活力が蘇ったことである。