「ふるさとづくり2000」掲載
<集団の部>ふるさとづくり奨励賞 主催者賞

玉川上水と自然環境の保護活動
東京都立川市 玉川上水の自然保護を考える会
 玉川上水は、承応3年(1654年)に江戸市民の生活用水、武蔵野台地の開発用水、灌漑用水の兼用給水施設として、多摩川の羽村から新宿四ツ谷まで、43キロメートルに創設され、近世から現代まで大きな役割を果たしてきた土木遺産であり、歴史的価値は高く、後世に保存していくべきものである。
 玉川上水の流域は平坦なことから、宅地開発が進行し、自然環境が急速に失われつつある。
 こうした中で、玉川上水は多摩川と都心を結ぶ一筋のグリーンベルトとして貴重な自然空間を形成し、流域住民の憩いの場として貴重な存在となってきている。


厳しい管理下におかれてきた玉川上水

 開設当初の玉川上水の目的は、江戸城内及び武家屋敷への飲料水の給水であったことから、極めて厳しい管理が行われたことは想像に難くないが、その後も水道用水としての厳しい管理下におかれ、流域住民にとっては、疎外感をもたざるを得ない存在であった。
 特に、上流12キロメートルは、現在でも水道原水が流されていることから、高さ2メートルの金網で囲われ、親しみがもてない住民不在の管理のもとにおかれていた。


自然が失われ、汚れた玉川上水

 金網内部の堤防に生えている野草等は都水道局の委託を受けた業者によって、年に2〜3回も刈り取られ、花を見ることなど全くできないものとなっていた。
 特に、水路内には枯れ枝やビニール袋、自動車のタイヤやバイクまで放り込まれている有様であった。
 きれいな水が流れ、両岸には野草の花が四季折々に咲き乱れる、緑豊かな自然を誰もが想像する「玉川上水」の現実は、それとは逆のものとなってきていた。
 また、護岸工事のために長期にわたり通水を停止したことにより、ホタルも絶えてしまうこととなってしまった。
 汚れた玉川上水を見ることは絶えられない、四季の野草の花を見たい、ホタルをもう一度見たい、などの意見が交わされるようになり、それならば、自分たちで「玉川上水」を清掃し、野草の花も咲かせ、ホタルもとばそうということになり、自然保護に関心のある地域団体役員経験者、公民館の自然保護講座の参加者等により「玉川上水の自然保護を考える会」の発足となった。


清掃活動と野草の保護・植栽活動

 「川は地域住民の心を映す」といわれるが、先ず、玉川上水を徹底的に清掃しようということになり、地域の有志の協力も得て大掃除を実施した。
 水分をタップリ吸った枯れ枝はとても重く、人間の力だけでは無理なので、地元の業者の好意によりクレーン車、トラック等の提供を受けて、ほぼ思いどおりの成果を挙げることができた。
 周辺住民からは「きれいになった。今後は汚さないようにしよう。」という気運が生まれ、現在も毎月1回の定例清掃活動を継続して「きれいな玉川上水」を維持している。
 次に、四季の訪れを知らせてくれ、心をなごませる野草を保護するために、金網内部の野草の調査を行い、保護すべきものには支柱を立て、周囲を緑のビニールテープで表示し、草刈り作業の際にはその部分を残すよう都水道局へ要請を行った。
 都水道局からは、金網内への立入り禁止、草刈り作業の障害となる行為の中止の通告があったが、再三にわたる対話の結果、相互理解も深まり、草刈りの作業は11月末頃の年1回のみとすること、金網内部へ立ち入る際には、小平監視所で鍵を貸し出すということで合意が成立した。
 また、絶えてしまった野草については、各会員が持ち寄り、時には地域住民からの提供を受けて植裁し、復元を図っている。


巣箱・標識の設置とホタルの復活

 巣箱は春先に会員の手で作成し、設置・点検を行い野鳥の保護に努めている。樹木には会員手作りの標識を設置し、自然観察の一助としている。
 さらに、一度は全く途絶えてしまったホタルも、玉川上水の年間通水要請後復活し、カワニナの放流、観察生息調査をしてきたが、最近はコイ、カモ等の増加等により姿が見られなくなり、新たな取組みが求められている。
 当会は、国営昭和記念公園での「ホタル観賞会」の参画実現に向けて協議中である。
 また、「玉川上水の貴重な自然を保護し、環境保全のシンボルとする」提言を行い、玉川上水の野草や生物の復元、史跡指定を配慮した管理、地域住民の協力による良好な管理の徹底を都知事に提言した。


活動の成果

 都民の良質な飲料水の確保と自然保護、玉川上水の史跡としての保存を総合的に追求して活動してきた結果、
(1)玉川上水の野草の保存については、当会が一定区域(新宮橋〜千手橋間約2キロメートル)の管理を行うことが認められ、野草の植裁、保護活動により野草が復活し、四季の花も見られるようになり、蝶などもめっきり多くなり乱舞している。
(2)当会が清掃を行っている区域以外でも、都水道局の水路内外のゴミ等の撤去が徹底されるようになり、全体的にきれいになってきた。
(3)都知事への提言で提起した史跡を配慮した管理として、都の自然保護条例に基づく「歴史環境保全地域」として、平成11年3月19日に指定され、保全計画については、地域との連携、運営管理の方針についても、流域住民との協議が明記され、私たちの意見を反映させることができた。
(4)東京都のみどりの推進委員として、立川市では15名が活動しているが、そのうち6名(市推薦3名、団体推薦3名)が当会の会員であり、市の緑化推進協議会委員として1名、玉川上水保全計画区市住民協議会代表など、行政への協力、意見反映の場が広がっている。
(5)会員相互の人間関係も良く、関係団体との交流も促進され、「ふるさと砂川」の資産づくりを推進している。