「ふるさとづくり2000」掲載
<集団の部>ふるさとづくり大賞 内閣総理大臣賞

ニュータウンのふるさとづくり−CATVによるコミュニティ活動−
千葉県千葉市 千葉ガーデンタウン有線テレビ放送局
CTSの概要

 千葉ガーデンタウンは、東京湾の埋め立てにより造成された千葉市美浜区幸町に、昭和48年に民間デベロッパー(三井不動産)によって開発された大規模マンションである。現在、約1、400世帯が入居している。
 このマンションの管理組合内に設置されているCATV放送局が、千葉ガーデンタウン有線テレビ放送局(通称CTS)である。
 千葉ガーデンタウンでは、当初より、さらに自主放送用のスタジオ施設が整備されていた。
 三井不動産が、このスタジオの活用を管理組合に依頼したことがきっかけとなり、この運営に関心を持つ住民が集まり、放送機器を一から勉強し、昭和49年に自主放送を開始したのが始まりである。
 全ての管理・運営が住民自身の手によって行われている有線テレビとしては、全国でも珍しいケースである。
 放送の内容は、町内自治会の活動状況や子どもたちの行事を紹介する『CTSアワー』、小学校の行事や授業風景を紹介する『すはまっ子ニュース』、町内運動会や盆踊りなど地域の行事を長時間放送する『ノーカット放送』、千葉市より提供される広報番組『ほっとライン千葉』、地域の各種団体やサークルの勧誘・行事日程など、地域に密着した情報を文字放送により素早く住民に周知する『伝言板』などにより構成されている。
 スタッフは35人(大人18人、ジュニア17人)、全員がボランティアであり、運営費は一戸あたり月150円の受信料と千葉市からの補助金などで賄っている。
 昭和60年には、千葉市テレトピア計画に「地域情報システム」として位置づけられ、千葉市の地域情報化の一翼を担うこととなり、また、平成元年には、CTSの活動に対し、千葉市長より「地域社会貢献賞」が表彰された。本年度は、開局25周年を迎える。


CTSの特色

 CTSの最大の特色は、地域に密着した手作りの放送を、開局以来続けていることである。
 カメラをまわし取材する人が町内の住民であれば、茶の間でテレビを見る人も同じ町内の住民である。子どもたちの通う学校の様子も、学校の先生の手で取材・編集したものを地域へ放送する。
 例えば、CTSの人気番組に、地元の小学校を紹介する『すはまっ子ニュース』がある。これは平成元年に、町内の小学校(幸町第三小学校)とCTSのケーブルが接続されたのを機に開始された番組である。
 内容は、運動会・卒業式をはじめとしたさまざまな学校行事を紹介するコーナー、担任や委員会児童が中心となってカメラを持ち、全学級の児童の表情を紹介するコーナー、先生やPTA活動を紹介するコーナーなどである。
 父兄は、この番組により、学習参観などでは見ることのできない子どもの生の表情を見ることができる。また、学校側も、児童の情報教育だけでなく、「開かれた学校」「地域との連携」の一環として、この番組を大いに活用している。まさに、地域と学校との掛け橋となる番組である。
 また、CTSは、ごみ分別収集、社会福祉、住民生活に関連する重要事項など、地域のさまざまな問題や街づくりに関する特別番組も精力的に編成している。
 例えば、平成6年には、千葉市の分別収集導入、ダストボックス廃止に関連し『ごみ問題を考える』シリーズを16回にわたって放送、住民の意思統一を図った上で、千葉市のモデル地域として、いち早く分別収集を開始、また、ごみ指定袋制度導入時には、キャンペーン放送をスタートさせ、住民に新制度の徹底を図っている。
 また、CTSは、地域の街づくりに関し、ガーデンタウンの将来のあり方、管理組合のさまざまな課題などを随時放送、ときには、テレビ討論会を生放送するなど、住民自らによる豊かで住みよい街づくりを推進している。


ニュータウンのふるさとづくり

 CTSの最大の功績は、CATVというメディアを媒介として、コミュニティの形成、まちづくりの活動を促進したことである。
 この地域は、埋め立てによる新興住宅地であり、住民は全国各地から転居してきた人びとの集合である。また、「千葉都民」と称されるように、仕事を東京に持つ人が多い。
 本来、このような新興住宅地では、白けた人間関係がありがちであるが、CTSは、CATVというメディアを上手く活用することにより、住民によい意味での地元意識、また、そこで生まれ育った子どもたちにはふるさと意識を醸成した。そしてそのことから、住民が自ら住みよい住環境を形成していく活動を促したのである。
 CTSが放送を開始してから25年、開局当時生まれた子どもは、もう25歳である。その間蓄積された膨大な映像は、住民それぞれの歴史であり、また街の歴史と言える。


CTSのこれから

 開局当時、CTSの供給エリアは、ガーデンタウンに限られていたが、その後、周辺マンション、公営住宅等へ随時拡大し、現在、約2、000世帯が供給対象となっている。
 また、来るべきデジタル放送時代に備え、各種映像・音響システムの、デジタル対応機器への更新も推進している。
 しかし、このような大規模・高画質化の一方、CTSの基本である地域との密着性は変わらない。
 今後も、地域に密着した番組をつくり、地域コミュニティの一層の充実、ふるさとづくりに取り組んでいくこととしている。
 なお、現在、次のような新規事業を展開しているところである。
・長年にわたり記録した幸町地区の各種行事等を編集したアルバムをつくり、ビデオライブラリーとして貸し出しを図る。
・地域防災対策の広報機関としての対応を図る。
・ビデオコンクールなどを開催し、CATV番組制作への地域住民の参加を促進する。
・CTSのホームページを開設し、地域外への情報発信基地としての基盤をつくる。