「ふるさとづくり'01」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

花咲爺会が住民の地域づくり意識を高める
沖縄県北中城村 大城区「花咲爺会」
 沖縄県中頭郡北中城村大城区は、平成12年12月に世界文化遺産に登録された「琉球王国グスク及び関連遺産群」もあり、自然環境にも恵まれた地域だ。この地で住民は、行政とのパートナーシップをモットーに、世界に誇る地域の文化財保護や環境美化・整備などに積極的に関わってきた。


蝶が舞い、小鳥が囀る城下町

 大城区の人口は、390人の小さな集落だ。その大城には、平成12年12月、世界文化遺産に登録された「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つ中城城跡の「北中城側部分」と国指定重要文化財「中村家住宅」がある。
 隣接する荻道区にも、国指定埋蔵文化財「荻堂貝塚」がある。大城と荻道は標高130メートル前後の丘陵にあって、緑も多く、よく霧がかかり、ランの育成条件にも恵まれた土地で、蝶が舞い、小鳥が囀る城下町だ。
 さかのぼって、中城城跡が世界遺産に推薦された11年10月、北中城村と大城・荻道両地区との間で、「古城周辺環境協定」が結ばれた。(1)道路沿いは生垣にする、(2)ブロック塀の緑化や建物の高さ制限、(3)赤瓦の奨励、などが内容だ。この協定は強制力を持たないが、貴重な文化遺産を住民の愛郷心で守る育てる基準となってきた。
 もともと大城と荻道区には、平成6年度に、古城周辺歴史的景観整備事業を行政と協力して策定した経緯があった。こうして両地区にある中城城跡と中村家住宅は、重要な観光スポットとなり、住民は沿道に「バンダ」という熱帯産のラン8000本を植栽し、5月から夏にかけて赤や紫のランが咲き競い、訪れる人々を楽しませている。
 このように、これまで積み上げてきた景観美化活動を、さらに確かなものにする出来事が、「花咲爺会」の結成だった。発端は、ある会合の席で話し合われた、観光などで訪れる人々に心から満足してもらえる地域にしたい、住民がより楽しく暮らせるきれいな集落にしていきたい、という思いからだった。
 11年10月、55歳以上の中高年を会員に、集落の空き地に花を植えたり、村から提供されたランの管理など、花に関する実践と情報交換を主目的に「花咲爺会」が発足。会員23人は、「枯れ枝に花を咲かせた“花咲爺さん”」を現代に再現したい、という願いが会の名称になった。


心も体も若々しい現代の花咲爺さん大活躍

 花咲爺会の定例会は、毎月第4日曜日の午前中だ。会員の大半は老人クラブの会員でもある。会合には、村外在住の出身者もやって来るし、40代の会員予備軍も参加する。会で管理するのは、県道の植栽ますと県や村道沿いに会員と区民で作った花壇や、村が整備したミニ公園内の花壇など700平方メートル、ブロック塀などに沿って19か所に植えられたランの総延長337メートル、道路沿い15か所に植えられた台湾レンギョウの総延長約400メートル、などになる。
 作業は、ランの手入れと補植や草花の植付け、雑草取り、肥料と水やり、レンギョウの剪定などで、定例会でない日でも自主的に会員が手入れをしていて、道路やミニ公園などが大変きれいになった。今では、行政がまちの基盤整備をすれば、地元住民がボランティアでそれを管理する、というシステムが地域に定着した。しかもそれが官主導ではなく、住民が率先して活動するところに永続きする秘訣がある、と会員らは胸を張る。
 花や緑が、地域で面的な広がりをもってきた。世界遺産「中城城跡」までの約1キロメートルの県道沿いには、四季折々の花が沿道を飾る。歩道も常時草が刈られ、散歩コースも明るくなった。この1年半の活動で、これまで鬱蒼と茂っていた空き地を花壇に変え、花いっぱいの地域づくりをしてきたからだ。道沿いの空き屋敷にも木を植えた。花と緑の面的な広がりは同時に、道路なども整備されて歩行者や車の交通安全にも寄与している。
 また、大地をデザインする試みも行っている。古い瓦で、ランの植栽帯を囲み、歩道沿いに瓦を並べてコンクリートの冷たさを和らげ、ブロック塀の上に花瓦を置いたり、石の彫刻や沖縄の守り神シーサーを配して散歩道を飾った。造形作品は、花と緑によく似合うことを知ったのもこの時のことだ。
 “住みよい地域をつくろう”という狙いは、住民に広く受け入れられて、地域を自分の庭同様に大切にする心が人々の間に芽生えている。子供育成会や婦人会、老人クラブなどの活動とともに、交流の輪が広がっている。中でも花咲爺会の活動は、55歳から88歳までのオジサンたちの心を一つにした。体を動かし、汗をかくことは健康にもよい。作業が終わって、世界文化遺産の中城グスクを眺めながら飲むビールは格別うまい、と実感するときだ。そして、その談笑の中から次の活動のアイデアが生まれてくるのである。