「ふるさとづくり'01」掲載 |
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞 |
地域に根づいた子どもの健全育成「持ち回り子共会」 |
鹿児島県末吉町 岩南(岩南校区公民館・岩南小学校PTA) |
末吉町岩南小学校が、昭和42年、鹿児島大学教育学部地方実習協力校の指定を受けたのを契機に、「岩南」(岩南公民館・岩南小学校PTA)校区公民館活動の一環に子供会活動を位置付け、「持ち回り子供会」という独特の方法で、青少年の健全な成長・発達をテーマに、今日まで永年に渡る地域活動を展開してきた。 学び・逞しい心身・真の友情・素直な心 鹿児島県大隈半島の菱田川沿いに広がる水田地帯と末吉台地の南端の畑作地帯からなる末吉町は、古くから学校教育などに全面的な協力を惜しまないなど、住民の教育に関する関心は極めて高かった。こうした伝統ある地域も、過疎化と少子化から逃れられず、昭和42年当時300人近くいた児童も、平成13年度には38人と、激減してしまった。 しかし、子どもたちの数は減っても、地域に根付いた「持ち回り子供会」という独特の方法で進める青少年の健全育成活動は、発足当初から数えて34年という歳月を経た今日に至るもなお健在である。 岩南小学校区は、丸山上、丸山下、岩南、宮原、前田、南大澤津の6自治会で構成されていて、この自治会単位に「持ち回り子供会」は6年に1回、順番が回ってくる。順番に当たった自治会の子供会(小・中学生)は、各自で決めたテーマをもとに1年間親子で取材し、調べたものを発表する。この「持ち回り子供会発表会」は、毎年地域外からも大勢参加してきて、大いに盛り上がるのである。 「持ち回り子供会」の目標は、郷土に伝えられてきた教育の良き伝統と気風を現在に生かそうというもの。小・中学校児童、生徒が一緒になって異年齢集団をつくり、互いに力を合わせて活動する過程から人としての基本的なものや責任感、連帯感を身につけ、自主的な人間成長を促そう、という狙いだ。 そのための「4つの狙い」がある。(1)共に学ぶ=みんなで語り合い、切磋琢磨しながら自分を高める(芋こじ運動)。(2)逞しい心身を養う=苦しみを乗り越え、困難に打ち勝ち、たゆまず前進する勇気を養う。(3)真の友情を培う=共に励まし、共に助け合う、心からの友情を培う。(4)素直な心で、けじめのある生活をする=決まりを守り、素直な心で、日常生活における良い習慣を身につける、というものだ。 「他人の子も我が子と思え」の集落活動 校区公民館活動は、総務部(文化部)、青少年部、婦人部、畜産産業部、交通安全部、自治公民館館長会の7つの組織がある。持ち回り子供会は、青少年部に属していて、各地域ごとの子供会には、小学生会長、中学生会長がいる。また、保護者による育成会には育成会長、小学生世話係、中学生世話係がおかれている。こうして、活動してきた子供会の活動例を紹介しよう。 昭和61年度、20回目の「持ち回り子供会発表会」を担当したのは丸山下子供会。小学生6人、中学生4人、高校生7人の構成で、同子供会は毎月の定例会をはじめ新入生を迎える会や親子遠足、集落放送による「夕読み」、花壇づくり、夏休み中の諸行事の実施、美化活動、PTA親子ソフトボール大会、敬老の日慰問、町民体育祭、小学校運動会、豊年祭参加、・クリスマス会、親子凧上げ大会、駅伝大会、お別れ遠足、お別れ会――など、多彩な活動を展開してきた。 9月の持ち回り子供会発表会では、これらの活動をもとに、毎月の子供会定例会から出される子どもたちの意見を大事にして、子どもたちの自主運営を心がけてきたことや、多彩な活動の中で、5月からは放送施設で放送する夕読みも始めるなど、活動の輪が一層広がっていると総括。このような活動を通して「他人(ひと)の子も我が子と思え」の喩え通り、次世代を担う子供たちを集落ぐるみで見守り育てる活動の必要性を確認しあった。 平成12年度、33回目になる「持ち回り子供会発表会」のテーマに選んだ、宮原子供会の研究テーマは「ゴミ」。平成12年4月から容器包装リサイクル法が完全施行されたことにちなんで選んだ。同子供会では、末吉町クリーンセンターや大崎町リサイクルセンターに何度か足を運び、ゴミの現状や問題、解決策などで3班に分かれて研究した。 同年11月、宮原公民館で開かれた発表会で、2年生が発表した一部を紹介すると、「むかし、じいちゃん、ばあちゃんの若いころは、プラスチックやビニールはなく、買い物は新聞紙などに包んでもらい、その紙はお風呂をわかすのに使った。生ゴミは牛やニワトリに食べさせ、油やミソ、しょうゆ、とうふなども家で作っていたから、ゴミも出ないけれど、むかしの人は大変そうだけど、地球にはやさしいと思った」――と。 研究は子どもたちなりに、普段知らないまま過ごしがちな生活のありようや、そこから派生する問題を、鋭く的確につかんでいた。 |