「ふるさとづくり'01」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

地域に開かれた特色ある学校づくりの実践
熊本県熊本市 熊本市立春日小学校
 明治6年創立の伝統ある熊本市立春日小学校では、平成11年度から「特色ある学校づくり」を進めている。地域との連携・協力を柱に「地域に開かれた学校づくり」を目指し、学校と地域の交流を日常化し、地域を学びの場とした総合的な学習の充実に力を入れている。


地域の各種団体で学校づくり懇談会設ける

 平成11年度に実施した保護者対象のアンケートでは、学校に期待するものとして、「地域との連携を大切にした開かれた学校」を望むものが多く、子どもには「思いやり(自他の尊重)や礼儀正さ、表現力や逞しさのある子ども」であって欲しい、という期待が多かった。また、子どもたちは、生活体験の不足から地域のことをよく知らないし、地域との関わりも限られていることも分った。
 このような実態や課題に対応し、解決していくには学校自体も変革し、学校組織を上げて、地域社会を巻き込んだ共同体としての取り組みが必要になっていた。春日小学校では、こうして旧来の固定的な学校組織のあり方を見直し、11年度より「地域に開かれた学校づくり」を目指すことになった。
 学校と地域が連携し、協力関係を確立していくことから取り組んだ。学校を拠点に、地域の教育力を結集し、子どもたちの生きる力の育成や、地域の活性化を狙いに、まず、「特色ある学校づくり懇談会」を設置した。
 同懇談会には、自治会長や青少年健全育成協議会長、体育協会長、老人会長、社会福祉協議会長、民生児童委員、PTA役員をメンバーに委嘱。学校に対する地域住民の願いや要望等を教育活動に生かしていくための「アドバイザー的役割」を期待した(13年度からは、学校評議委員会に移行)。
 また、11年度に地域主任制も新設した。地域との交流・連携を円滑に進める体制づくりを進めるためで、校務分掌の中に「地域との連携」を位置付け、諸活動の企画や準備、連絡調整、指導、助言といった「コーデネータ―的役割」を地域主任は担っている。
 地域との交流では、春日ふれあいサロンやふれあいガーデン、ふれあい運動会、ふれあいの日などがある。同サロンでは、子どもと地域の人々で開く「心の交流教室」や、学習・クラブ活動などに地域の人を招く交流活動などがある。また、同ガーデンは「無理せず(ゆとり)、自由参加(地域性)、焦らず(継続性)」を合言葉に、「ゆとりの中で生きる力の育成」「遊びや学習に自由に活用できる場の設定」など、子供の心の居場所づくりに配慮した。


子どもらが地域でものづくりや技にチャレンジ

 ふれあい運動会は、地域からの提案で具体化した。学校と地域がそれぞれ目標を持って、共同で運営する運動会だ。ふれあいの日は、月に2回、地域主任が中心になって、子どもの希望や地域の人たちの要望に応えて活動を行っている。
 学校では、複数指導体制を導入して、学習の充実を図っている。複数の教職員で得意分野や持ち味、専門性を生かして子どもたちに関わり、的確な支援や指導をしていくための体制で、「開かれた教育の推進」や「指導方法の工夫・改善」「教職員の指導力・資質の向上」などが狙いだ。こうして、地域の人や保護者のボランティアとしての学習参加や、クラブ活動・掃除指導などの教科外指導や日常指導への協力体制ができた。
 地域を学びの場とした総合的学習では、子どもの生活実態や地域の特色などを手がかりに、子ども自身、自ら課題を作りそれに主体的に取り組むことによって、自立する子どもへと成長する学習を目指している。
 具体的には、3年生では「春日のまちとなかよくなろう」をテーマに、「人とのかかわり」を中心に学習を展開している。子どもたちが「地域(人)に親しむ体験」を通して、地域の人たちの優しさにふれ、感動し、相手の立場を考え、積極的に人との関わりが持てるようになった。
 4年生では、人やものとの関わりを地域全体に広げ、また深めながら「春日のまちと交流しよう」をテーマに、地域の人に学ぶ活動を発展させた。この活動では、子どもたちが生活の中から主体的に地域の人材を掘り起こし、それらの人々のよい点や生き方などに視点を当てて、やる気いっぱいに自信をもってまとめに当たった。また、「地域(人)に生きる体験」活動を通して、生徒自身、ものづくりや技にチャレンジし、人との関わりを深める過程で技や知恵、工夫などを学び、生活の中で実践できるようになった。
 活動の成果は、交流活動などで学校と地域の連携が進み、学校の教育目標が地域に広く理解されるようになった、など収穫は多い。今後の課題としては、子どもと大人が楽しみながら一緒に活動していく上で、学校や家庭、地域の役割分担の明確化――などだ。