「ふるさとづくり'01」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

身近な情報提供で外国人の生活サポート
埼玉県上福岡市 特定非営利活動法人 ふじみの国際交流センター
 平成9年1月、外国人と日本人が共生できる町づくりをしようと、隣接の上福岡市、富士見市、大井町、三芳町の、有志15人が集まり民設・民営の「ふじみ野国際交流センター」を創設した。
 最初に、2市2町の公民館を順に借りながら、多言語情報紙「インフォメーションふじみの」の発行を始めた。
 総人口の1%を占める外国人が、人間として普通の生活が営めるように、みんなが考え、協力しようをモットーに、同年7月には、上福岡駅近くに363平方メートルの古い民家を借り、2人の発起人が家賃を負担して活動の拠点とした。
 この活動拠点開設から賛同者も増え、平成12年1月には、特定非営利活動法人格を取得、日本人会員250人、利用外国人年間延べ1000人以上となり、会費で家賃が払えるようになった。メンバーが気付いた活動を次々実施している間に、事業は18にも増えていった。会費を払ってのボランティア活動は、日本ではあまり類を見ないが、活気に満ちた活動を展開している。


多言語情報紙「インフォメーションふじみの」の発行

 同センターが、最初に手がけたのは、多言語情報紙「インフォメーションふじみの」の発行活動である。
 これは、日本語が読み取れず、正しい情報が得られないで、生活に困っている在日外国人のために、毎月9か国語で情報紙を作り、県内20市町村に配布し、外国人登録の窓口や図書館・公民館等に置いて、無料で活用できるようにしている。
 最近、1年間に情報紙で取りあげたテーマは、家電リサイクル法・健康保険・ゴミ分別収集・入管法・外国人登録法の改正・インフルエンザ・離乳食の作り方・仕事探し・大学入学資格等である。また、新たな入国外人のため、4年分の記事をまとめ、韓国語・スペイン語等6か国語で統合版を出版している。
 同センターでは、現在20歳から84歳までの日本人と外国人合わせて32人が運営委員となって、毎週連絡会を開いてボランティア活動を行っている。
 日本人と結婚し、子どもを育てているが、就職の難しい在日外国人の自立支援を目指し職業訓練の場として、パソコン教室・洋裁教室・日本語教室を毎週開いている。
 また、特別な事情で住む家を失った人の為に、センターの1室を一時仮宿泊所に提供、宿舎付きの仕事を探すなど、自立が出来るよう指導・援助をしている。
 さらに、悩みごと・生活相談は、年に300件を超え、法的問題から子どもの教育、家庭騒動・仕事・衣食住まで、サポートはすべてにわたる。
 そのため、研修会に出席したり、専門家を招いての勉強会を重ね、市役所・ハローワーク・入管・裁判所等にも同行し問題解決に当たったりもする。
 年に一度の健康相談会と集団健康診察会は、通訳ボランティア付きで好評である。


学校や市役所での国際交流

 県内の小中学校や大学・公民館・市役所で主催する各種講座に、講師として外国人を派遣し、ゲーム交流・文化の紹介等を行い国際理解教育に努めている。12年度は、31の学校と18か所の市町村を訪問した。
 また、学齢の途中で来日し、日本語の授業についていけない子どものため、学校に出向いて生活適用日本語指導(取り出し授業の支援)を行っている。
 全国に、20000人以上いると言われる日本語がわからない児童・生徒のために、今年5月、日本語指導ファイルを作成した。日本語を教えた経験のない人でも、簡単に使えるように工夫したカード式のテキストである。日本中の人が、ボランティアになって利用してほしいと望んでいる。
 外国人児童は、当たり前というくらいに大半の子どもが、日本の子どものいじめに遭っている。違いを認めにくい日本の子どもたちに遊びを通して外国人を理解してもらおうと、国際わいわいクラブが発足した。そしてアフリカ太鼓の実演や野外炊飯、2泊3日のキャンプ等を計画している。また、第2土曜日と第4土曜日には、大学生ボランティアが宿題を教えている。
 一方、行政からの事業委託も増えている。上福岡市・富士見市・大井町の国際フォーラムには、毎年参画している。国際交流と言えば、外国料理を食べ、民俗衣装で着飾った外国人の踊りを観る事と思い込んでいる人が多いが、本当の国際交流を知ってもらうため、外国人の主張を盛り込んだフォーラムにしている。また、ゴミの分別方法・健康カレンダー・くらしのガイドブック等の制作、翻訳の依頼も多い。11市町村の行政職員が、研修の場として、同センターを訪れている。
 外国人は、今でも「異人さん」である地域も、外国人と自然に触れ合う事で、違いを認め1人1人を尊重できるようになってきている。