「ふるさとづくり'01」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

学校を核としたふるさとづくり
栃木県鹿沼市 石川小学校区学社融合推進会議
 石川小学校区は、農村・工場・住宅地が混在する地域である。これまで地域を支えてきた婦人会や老人クラブも解散するなど、様々な地域づくりの組織も力が衰え活力を失いつつあった。
 平成8年から、石川小学校では、学校と地域が融合して教育活動を展開する、学社融合の実践を行ってきた。
 これが契機となって、地域に新たなボランティア活動が誕生し、地域活動に参画することの少なかった保護者の活動が活性化した。
 保護者が参画する活動の場の中心は、学校であるが、高齢者の声を生かしたイベントの復活、外国人を迎えての国際交流、ミニコンサートの開催などである。


学社融合・ミニコンサートや国際交流

 一方、今、「開かれた学校づくり」や、さらに「総合的学習時間」の完全実施は、学校にとっても、地域との結びつきは不可欠であり、学校の授業を、学校と地域の協働の場とした「学社融合」は、これまでのふるさとづくりとは、視点を変えた「学校を核としたふるさとづくり」として確実に振興している。
 学社融合とは、学校活動でもあり、地域活動でもある活動をつくりだし、重ね合わせ実施し、双方にメリットをもたらそうという考えである。
 この活動は、学校教育の支援活動のように見えるが、学社連携と違い、学校支援活動が活性化すれば、地域にもたらす成果も大であるという特色がある。特に、地域社会で現代的課題とされる、高齢化、国際化、情報化、環境保全は、大人にとっても未知な課題であり、解決には学習が必要である。
 したがって、これらの課題を学社融合で扱い、学校(子どもの学習)支援を通じ、大人が学びを深め、地域社会の課題解決を促進することになり、これからの地域社会をつくる有効な手立てなのである。
 例えば、音楽担当教師と地域の音楽愛好家でつくる音楽支援委員会は、今年7月、51回目のミニコンサートを同校体育館で開催した。観衆は、同校児童とその保護者や地域住民である。わずか15分間の生演奏であるが児童は音楽の感性を高めるとともに、地域の音楽愛好家の活動を活性化してきた。
 このコンサートで演奏を披露する愛好家の登録数は30人を超え、登録者の演奏をすべて消化出来るのは2年先になる。コンサートで演奏した愛好家がバンドを組んで、喫茶店などで演奏するなど、地域に新たな音楽活動を作り出している。
 つぎに、国際理解担当教師と国際交流を進める地域の人々で構成する、国際理解教育推進委員会の活動である。近年、国際化が進んでいるとはいえ、同校区に居住外国人はおらず、これまで学校を訪れる外国人は、年間2人程度であった。現在は年間30人を超え、地域も盆踊りに招待するなど積極的な対応が見られる。学校の国際理解教育の授業づくりを目的に発足した同委員会が、今では、地域の国際化の有力な担い手となっている。


高齢者の声を生かしたイベントの復活

 高齢者福祉教育担当教師と老人クラブ代表者、それに児童代表で構成する、高齢者福祉教育推進委員会がある。同校は、かって高齢者を招いたふれあい集会を、教職員の企画で開催していた。参加の高齢者に積極性がないことから、同委員会を発足、当事者の声を聞き企画立案することにした。
 ある高齢者から「今の運動会のダンスは速くて踊れない」との発言があった。
 この一言に、同推進員は、音楽支援委員や家庭教育学級生とかかわり、高齢者でも踊れるダンス、40年前運動会の全校ダンスで踊っていた「赤い花咲いた白い花咲いた」を復活することにしたのである。
 その復活には、音楽支援委員が、高齢者に歌ってもらい譜面をおこし、家庭教育学級生が歌い録音し、学校の協力で昼休み校内に流し、子どもたちが歌の意味を理解するように持っていった。それ以来、同校の運動会では大勢の高齢者と子ども、保護者たちが校庭いっぱいに、フォークダンス赤い花白い花を咲かせ続けている。
 つぎに、同校の家庭教育学級が伝統的に行っている、地域を語り継ぐ活動がある。
 これは、3年生の社会科授業でふるさとの遺跡や史跡見学を行う場所で、家庭教育学級生が解説役を努める活動である。応募の学級生は石川地区以外から嫁いだ母親も多く、事前学習や自主的な調査で、地域の歴史や文化の理解を深め、高齢者との対話で連帯意識を高めるなどの効果を上げている。学級生の活動は「石川の歴史と文化」の小冊子にまとめ児童の教材に活用されている。
 この学社融合の手法は、学校の授業づくりを通し地域づくりが同時に振興できることから、今、鹿沼市から全国へ普及しつつある。