「ふるさとづくり'01」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 振興奨励賞

海浜美化ボランティアからスタートした住みよい地域づくり活動
山形県酒田市 特定非営利活動法人 庄内海浜美化ボランティア
 山形県の庄内地域は、豊かな自然環境に恵まれていた。名山・鳥海山と名水。海浜の白砂青松は、質量共に日本で一、二を誇る。昭和60年、この地で始まった美化ボランティア活動の輪が、平成11年11月、NPO法人の認証を受けて「庄内海浜ボランティア」として再発足。活動に一段と弾みがついた。


環境の保全や子供・高齢者問題に幅広い活動

 昭和60年にボランティアの会を結成して以来、酒田市ボランティア連絡協議会を立ち上げ、平成9年には、官民一体の組織として、酒田港クリーンアップ推進協議会を設立し、環境美化推進員制度を発足させた。こうして、「酒田港をゴミのない世界一きれいな港にしよう」「釣りを始める前と終わった後のゴミは持ち帰ろう」などの「酒田港みんなの約束」運動を展開してきた。
 また、ゴミを捨てにくい環境づくりが大切と、岸壁に花壇を作った。ボランティアポートフラワー運動と称して進めてきた結果は大成功。今二つ目の花壇作りは、みんなで自主的に少しずつ金を出し合って進めている。人々の意識喚起も必要と、酒田市防災無線やハーバーラジオ、YBCテレビに出演し、酒田港や庄内海岸砂丘林の美化啓発に努めた。
 恵まれた水環境の恩恵を、21世紀を担う子供たちに引き継ごうと始めた「水環境庄内圏民講座」は、生涯学習文化財団からも高い評価を得て、同講座の5回以上の受講者には修了証を発行している。第2期は、「庄内海浜に遊ぶ」がテーマ。海浜に楽しく遊びながらゴミの調査や流木アートを体験する。
 海浜美化ボランティア会員の平均年齢は60歳。昨年から介護保健制度も導入されたが、会員たちは、介護保健の世話になるより、世話をする方に回って同保健に協力したり、ボランティア活動で社会に貢献していくことに生きがいを求めている。また、IT時代、会の役員会などもEメールで開催できるようにしたいと、高齢者もパソコン教室に積極的に通い、勉強に余念がない昨今だ。
 都市景観や快適環境の創造などにも力を入れている。今年、新日本製鉄の風力発電計画が中止された。建設予定地が県自然公園域内で自然景観を損うという理由からで、「設置場所は十分話し合った上で慎重に決断して欲しい」と、会で申し入れていたもの。最近、国土交通省酒田港湾工事事務所から、クリーンエネルギーの開発には賛成の会に、酒田港の未開発部分の有効利用とその構想プランなどで提案を求めてきている。


ビーチクリーンアップで国際交流も展開

 平成12年の6月、酒田宮海海水浴場で、国際交流ビーチクリーンアップが開催された。これは、全国各地の英語指導助手たちに、滞在場所の周辺でビーチクリーンアップに協力してもらおうと開いた。外国人と県民が広く交流していこう、というのが目的で、海浜ボランティアとして会も協力した。外国からはカナダや中国、韓国、アメリカ、フィリピン等々と、多くの国の人々が参加してきた。
 活動は、同じ弁当を食べながら、自己紹介や情報交換で交流を深めてから、ビーチクリーンアップに取り組んだ。素手で大きな丸太や流木、粗大ゴミを集め、終わって酒田短期大学で、活動の検証としての「ビーチクリーンアップ反省交流会」を持ち、「来年もまたやろう」と約束し合った。
 青少年の健全育成にも力を入れてきた。NPOのボランティア組織として、最初の受託事業は、泉地下道の清掃活動だった。地下道周辺には新しい高校ができて、夜になると高校生たちの溜まり場になっていた。そのため地下道の壁に落書きをされたり、空き缶やゴミなどが散乱していた。そうした落書きをペンキできれいにしたり、ゴミなどの清掃活動をするのだが、その際、学生たちに「こんにちは」「お帰りなさい」「気をつけて帰りなさい」などと声を掛けながらやっている。
 この地下道を舞台に、会で今計画しているのは、ツッパリや粋がっている学生たちを実行委員にして、地下道の両側にボランティア活動のパネル展示コーナーを設けよう、という案だ。そして、年に2、3回、優秀作品を表彰したりして、快適なボランティア地下道にしていきたい、と意気込んでいる。
 素晴らしい自然環境を維持する上で、保安林の管理も大切な仕事だ。しかし、外材の輸入で木材の価格が下がり、営林署の機能も低下し、保安林の管理も行き届かなくなっていた。こうした現状に危機感を抱いた会では、市民の力で営林署に協力していくよう呼びかけ、「保安林保存対策協議会」の組織化に向けて努力を重ねている。
 今年度からは、「ボランティア・サポート・プログラム」にも取り組み始めた。道路や住んでいる所をきれいにする活動で、企業やロータリークラブ、学校等との連携と、行政とのパートナーシップを重視している。