「ふるさとづくり'01」掲載
<集団の部>ふるさとづくり賞 主催者賞

恵み野花のまちづくり運動
北海道恵庭市 恵み野花のまちづくり団体連合
花のまち・ガーデニングの街といわれるまでの概要

 恵み野地区は、札幌市のベッドタウンとして1980年に、恵庭市に生まれたニュータウンです。現在は、道内外各地から寄せ集まった約4200世帯の人々が居住する新興往宅街ですが、街路から個人の庭のいたる所に植えられた花が、まちに彩りを添え、心の和みを覚えるまちです。
 まちの緑化や美化は、行政の都市計画によるのが普通ですが、恵み野の花の風景は住民が主体となって生まれてきたのが特色です。
 1991年、花のまちの海外視察報告会(ニュージーランドの花のまちクライストチャーチ)のスライド上映を見て感動した住民が「この新興住宅地恵み野を、いつまでもきれいな花のまちとしていきたい」との強い思いで、2、3人の女性が「恵み野花の愛好会」を立ち上げたのが始まりです。
 その第一歩は、西商店会の協力で公募による個人の庭花壇を対象にしてフラワーコンテストを実施したことです。4回目からは応募方式ではなく、全地域対象の「恵み野花探偵団」方式に切り替えて実施していますが、その結果、庭を花で飾る住民がどんどん増えてきました。
 ユニークなのは、家庭のガーデニングに留まらず、商店街や公共の花壇や植樹ます、駅前ロード花壇等のまちの景観環境整備へと波及させ、少ない予算にもかかわらず多くの住民が自己負担でボランティアとして参加し、まちづくりを主体的に考えるようになったことです。そのため、町内会をはじめ商店会、企業等、次々と理解・協力を呼びかけ、花のまちづくり活動の輸が広がり、現在は、市民主体の9団体による「恵み野花のまちづくり団体連合会」が構成されるまでになりました。
 1997年には「花のまちづくりコンクール」で建設大臣賞の最高賞を受賞、翌1998年に婦人雑誌「ミセス」に「花の街・恵み野」として紹介されて以来、全国各地から花の庭を見学し散策する人々が訪れるようになっています。


恵み野花のまちづくり運動

 花のまちづくり活動の開始から10年を迎え、恵み野地区は安らぎとうるおいのある新しいふるさとづくり、コミュニティづくりの輪が広がり根づいてきています。まさに、新興住宅街のまちづくりに相応しい取り組みと言えます。

(1)恵み野フラワーガーデンコンテスト実施
 1992年、「花づくり愛好会」の女性2、3人で実行委員会を組織して、コンテストを実施しました。全く予算がない中で、商店会に主催者名義を借用し、審査員には海外の花のまち視察者3名にスポンサーを依頼、しかも審査料まで頂き(現在もこの方式で実施)第1回の開催にこぎつけました。
 1995年には、花飾りをする人の関心の拡大を目的に、恵み野全域を対象とした「花探偵団方式」に切り替えました。活動内容としては、4200戸全戸を回って歩き300件を写真撮影し、その中から約50件を本審査します。5つ花(モデルガーデングランプリ)、4つ花(モデルガーデン)、3つ花(一般特選)、2つ花、1つ花まで決定し、審査表彰式や街並み写真展を行います。3年以上の特選にはモデルガーデンとして、審査対象から除外し裾野を広げることにしていますが、現在モデルガーデンは12件になりました。
 その周辺では、影響を受けて点から線へと広がりをみせるとともにストリート部門も充実してきています。中には、入選したことに驚き、励みになったり審査についての問い合わせも多くなりました。

(2)西商店会とラベンダークラブの活動
 この活動が商店会にも波及し、1993年に西商店会にフラワーロードプラン部が組織され、花の予算を措置し、商店街町並み景観の整備計画がスタートしました。
 その中心的活動グループとして、1995年に活動を始めたラベンダークラブ(商店会女性の花の通りの研究会)があります。このグループは、花による駅前商店街やその周辺花壇、公共用地の景観美化整備のために意欲的に取り組みました。例えば、公共ますや公共花壇を測量し、花の数量や種類や管理費を計算し、その資金確保のため「花の協力依頼」の文書を持って、駅前商店110の全店舗を回り資金集めをしました。この結果、各商店会も理解・協力し西商店街にも花飾りの輪が広がるとともに、駅前商店街周辺を「雑草の通り」から明るい「花の通り」に変貌させました。この活動は、他の商店会にも波及効果をもたらしました。

(3)美しい恵み野花のまちづくり推進協議会(以下「恵み野花協」と略称)の活動
 1996年から、恵み野にある東西南北の4町内会、商店会、ラベンダークラブ等の11団体に対して活動の推進を呼びかけ、翌1997年に「恵み野花協」を組織しました。その結果、次のような活動がスムーズにできるようになりました。
・機関紙「花便り」の発行により、花によるまちづくりの情報の提供、啓発をする。
・花協力依頼文書により、公共花壇、花ますの商店、企業に向けても依頼をする。
・花基金の募金を通して、市民の理解・協力と花代の確保を図る。
・公共花壇のデザイン、花の種類やその購入計画を立て、町並み景観づくりを考える。
・「環境ボランティア」の人材の確保により、定期的な花づくり活動の推進を図る。
・花の講演会1回、ガーデニング講座(2000年には26回開講)を開催する。
 これら計画的活動により、市民のガーデニングや花のまちづくり意識が向上しました。

(4)「花の千人植え」や「ふれあい除草デー」の活動
 1999年より「花の千人植え」と名付けて、駅前商店から4キロメートル区間の両側の「花のロード」づくりに取り組みました。これは「ふれあい除草デー」とあわせて、個人・商店・事業者等広範な市民を対象に、花の植栽や手入れに自由な参加を促すものです。
 その結果、専門学校生や中学生の参加協力も見られるようになり、現在では、3.2キロメートル区間の両側に「花のロード」が完成しました。さらに、中学校前の植栽ますには、中学生が花を植栽するようになったり、専門学校駐車場前ゾーンでは「交歓会」と銘打って、除草作業や宿根草を植えるなど、市民と学生の交流の場としても活用されるようになりました。このように、市民による花のまちづくり活動の着実な広がりがみられます。

(5)市行政との連携による活動
 1997年に「恵み野花協」から、「花に関する担当係の一本化」と「花に関する図書の充実化」の内容で、市へ2つの要望をしました。その結果、2年間にわたり「花のまちづくり懇話会」が持たれ、1999年「花のまちづくりプラン」が作成され、「花と緑の課」も設置されました。ボランティアとして「本の交換会」を実施し、その益金で花に関する図書を揃えるなど図書館が市民の花に関する学習の場に成りつつあります。さらに、図書館の周辺花壇には住民が宿根草や色彩豊かな花を植えるなどしています。
 このように要望するだけではなく、市民団体としても展望を持って、市とともに花のまちづくりプランを検討し、図書の充実にも取り組みました。もちろん、市からも花に関する費用も予算化され、公的花壇の花代として活用するようになりました。


恵み野花のまちづくりのこれから

 このような10年の取り組みの中から、現在は「恵み野花のまちづくり団体連合会」として9団体がまとまり、今後の花のまちづくり運動を推進していくこととなりました。
 市民は、自分たちの庭を美しく飾り、うるおいある生活を楽しみたいと思っています。
 また、公共用地やその空地は市民の共有財産でもあり、美しいまちを作るのに市民が公共花壇に花を植える義務はないが、権利はあると思います。
 そのため、行政に要望し頼るだけではなく、自分たちも知恵と汗を出していきたいと思います。これからも、女性の美的感性や創造性・実行力を発揮し、しかも楽しみながら着実な花のまちづくりを通して、この新興住宅地恵み野にうるおいと安らぎのある新しいコミュニティづくり、ふるさとづくりを目指していきます。
 現在までは、スムーズにボランティア的に活動してきましたが、今後の課題や展望として、この活動を継続し定着させるに実務担当機関を設置し、統一的な企画運営を図ることが課題となります。この組織化を図った上で、NPO的な組織にすることも視野に入れながら、花のまちづくりの発信基地としていきたいと考えています。