「ふるさとづくり'01」掲載 |
<市町村の部>ふるさとづくり賞 内閣総理大臣賞 |
「自分たちの町は自分たちの手で」を合い言葉に |
愛媛県 城川町 |
城川町では、昭和58年から「わがむらは美しく」を町づくりのテーマに掲げ、景観・住環境の整備に取り組んでいる。この運動は、西ドイツのオーバーフンデム村に習った中山間地域の生き残り策。私たちの住む生活環境や農地環境、さらにそれを取り巻く森林環境を美しくし、町全体を自然公園化しようという運動である。 「生活環境を美しく」とは、道路、交通、通信、住宅、水道、保健、福祉、教育などの居住空間を改善し、高齢者や身体障害者など社会的弱者でも安全で便利、快適に暮らせる定住環境整備を推進しようというもの。 「農地環境を美しく」とは、農地に年中緑の衣(作物)を着せようというもの。ほ場整備や農道、水路などの基盤整備を進め、生産性の向上と土地の高度利用を推進し、環境保全と農業振興を図るものである。 「森林環境を美しく」とは、町土の82%を占める森林に、自然林とのバランスを考え、適地適木を植栽。1へクタール当たり30メートルの林道や作業道網を整備し、手入れの行き届いた美林を育てる。すなわち、環境保全と林業振興である。 これを柱に、環境美化や花いっぱい運動、地場産品を利用した特産品開発、文化財の保護、文化施設や観光・リゾート施設を整備し、交流人口の増加を図っている。また、企業誘致促進条例や人口定住促進条例の制定、町営住宅の整備などによりU・Iターンの促進を図り、定住人口の増加を積極的に進めている。 つまり「わがむらは美しく」とは、私たちが暮らす生活環境や農地環境、森林環境を美しくし、町全体の自然公園化構想である。生活環境を構成する農地や山林、自然や施設、歴史的・文化的伝統が、互いに他を生かし合うようにバランスがとれ、その中で生活する私たちとの間に、真の調和がとれている好ましい環境づくりを目指すものである。 緑化・自然環境の保全に関する取り組み (1)花のまちづくりの推進 昭和58年から花いっぱい運動を展開し、花と緑を育み美しい風景をみんなで共有する「花のまちづくり」を目指している。花いっぱい運動は、地域住民と行政が一体となって花の魅力を活用して、まちづくりのエネルギーにするものである。 (2)コミュニティ推進奨励制度による環境美化活動の推進 コミュニティ推進奨励制度は、町民がふるさとを愛する心を持って自主的に参加し、お互いの連帯を深め自己表現する創造的な、コミュニティづくりを目指している。「環境美化活動の推進」「保健活動の推進」「生涯学習の推進」「社会福祉の推進」「ボランティアの推進」「町政への参加」を目標に掲げ、62の自治組織ごとに推進が図られている。 地域文化の振興に関する取り組み (1)町立美術館「ギャラリーしろかわ」の整備 平成7年からは、「絵はだれでも、いつでも、なんにでも描ける」をスローガンに、「全国かまぼこ板の絵展覧会」を開催。毎回、全国から約13000点余りの作品が寄せられ、小さな美術館からの文化発信イベントとして話題を呼んでいる。同展覧会は、平成9年第1回ふるさとイベント大賞優秀賞を受賞。平成5年7月のオープン以来、毎年約35000人が訪れ、他の観光施設等への波及効果も大きい。 (2)こころのふるさと茶堂(ちゃどう)の保存 町内の旧往還には、茶堂と呼ばれる小さなお堂が52か所も大切に守られている。昔は、旧暦7月に各戸輪番で道行く人にお茶の接待をした。これを「お茶供養」といい、茶堂の呼び名のゆえんとなっている。茶堂では、お講や集落の施食会、虫送り念仏などが行われる信仰の場であった。こうした茶堂での習俗は、国選択無形民俗文化財に指定されている。温かい人情のシンボルであり、町を代表する農村風景となっている。 (3)その他 町内の文化財や地質学・考古学上の資科などを保存展示するため、歴史民俗資料館や、考古館、文書館、地質館、どろんこ祭り保存館を整備している。 地場産品の開発、観光施設等の整備に (1)地場産品の開発 農林業振興と雇用の場の創出を目的に、農産物加工センターを始め食肉加工センター、無菌培養施設などを整備。特産のユズ、クリ、ブタ、山菜などを加工し特産品づくりを進めている。これらは、町産業開発公社が経営をしている。 (2)観光施設の整備 長期滞在ができる保養地づくりを目指し、5か所の観光拠点を設けそれぞれ特徴ある施設を整備している。5つの拠点とは、宝泉坊温泉(保養ゾーン)、竜沢寺緑地公園(森林浴ゾーン)、三滝渓谷自然公園(自然探索ゾーン)、下相・総合運動公園(文化・スポーツゾーン)、雨包山と樽滝(山岳レクレーションゾーン)。平成12年度の入り込み客数は、約36万人に達した。 活性化に向けての住民活動 (1)どろんこ祭りの開催 五穀豊穣、無病息災を祈るお田植え祭りは、奥伊予の奇祭「どろんこ祭り」として全国的に知られる。明治14年頃から始まった素朴でユーモラスな農休日の行事で、県の無形民俗文化財に指定されている。城川町を代表する祭りであり、町のイメージアップに貢献している。平成2年に全国農協中央会主催の「日本の米作り百選」に選ばれたほか、平成9年には、「美しい日本のむら景観コンテスト」で農林水産大臣表彰を受けた。 (2)城川町オリンピックの開催 町民の融和と親睦を図ろうと、昭和43年に始められた町最大のスポーツイベント「城川町オリンピック」。NHKが、新日本紀行で「山里のオリンピック」として紹介し、スポーツの町城川を全国にアピールした。五輪ならぬ四輪旗、聖火リレー、特設の聖火台、金・銀・銅のメダル、コンパニオンを従えての表彰など、とことんオリンピックにこだわった趣向。町民の半数以上が参加して、ユニークな競技や応援合戦を楽しむ。 (3)宝泉坊温泉祭りの開催 年間約10万人の入浴客でにぎわう町営宝泉坊温泉のPRと町のイメージアップのために、地元の実行委員会が平成3年から毎年開いている。当日は、ウナギのつかみ取り大会、親と子どもの木工体験「トンカチ広場」、郷土芸能発表会、特産品や農産加工品などを即売する宝泉市、婦人会バザー、もちまきなど多彩な催しを行う。町内外から約1500人が訪れ、楽しい1日を過ごす。 (4)しろかわ夢大賞の実施 21世紀を担う子どもたちの純真な感性を育もうと、平成8年度から実施している。夢大賞は、人生を左右するかも知れないぐらいのエネルギーを持つ「夢」に着目した事業。町内の子供たちから夢を募集して、大賞に選ばれた夢をかなえてあげるというもの。城川町で生まれ育ったことを喜び、生きることのすばらしさを感じてもらいたい、との願いが込められている。また、子どもの視点でとらえた夢を町政に反映させるという広聴事業でもある。第1回目は、小学2年生の「世界一でっかいケーキをみんなで食べたい」が大賞に選ばれた。洋菓子店の協力を得て、直径3.6メートル、高さ3メートルのジャンボケーキを作り、夢大賞発表会を開いた。およそ1500人の親子連れが集まり、ケーキをほおばった。 わがむらは美しく運動の成果 この運動による美しい農村景観づくりは、グリーンツーリズムのベースとして、地域振興に多大な効果をもたらしています。農林業の振興、雇用の創出、町のイメージアップなどにつながり、交流人口も36万人に上るようになった。 環境美化活動や花いっぱい運動を通して、町民のコミュニティが図られ、町づくりのエネルギーにつながっている。ふるさとを愛し、ふるさとに誇りを持ち、自主的な地域興しグループができ、ユニークな活動を行い、徐々にその成果が現れている。 わがむらは美しくの基本は、「自分たちの町は自分たちの手で」ということに尽きる。行政主導で取り組んできた運動を、真に町民自らの自発的な活動になるよう、無理なく、楽しく、長く継続していくことが何よりも大切だ。この運動の一番の成果は、「ほかの誰でもない、自分たちが美しい環境の中で、幸せに暮らせる」ことである。 |