「あしたのまち・くらしづくり2015」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

「命の大切さ」を学び、自ら考えて行動する「富士川っ子(子どもと大人)」を育む。
静岡県富士市 特定非営利活動法人富士川っ子の会
NPO法人富士川っ子の会の活動経過
 「NPO法人富士川っ子の会」の前身は、平成14年11月に設立し平成15年度から活動を開始した「コンソーシアム富士川っ子が育つ会」である。
 主として農園における体験活動を通して、「自分で考えることのできる自立できる子どもの育成を地域住民で行うこと」を狙いに継続してきた。
 初めは約40人の児童を対象に、農作業を体験することを主体に活動を始めた。次の年には80人、120人強と増えてきたが、本当の指導には至らず、準備したカリキュラムを消化するだけの活動にならざるを得なかった。その後、保護者の理解もあり、会員40名、対象の子ども40名程度の活動に落ち着いてきた。
 設立時は、高齢者、親世代、幼児・児童の三世代交流を目指したが、大人と子どもの間の会話がスムーズにいかなかった。世代交流を行うには、幼児・児童と大人の間に中高校生、大学生の存在が重要であることを痛感した。丁度そんな悩みの時、静岡県の紹介で静岡大学の生涯学習専攻の学生が約10人ずつ、3年間、当会の活動に参加研修を行って頂いた。

任意団体からNPO法人へ
 平成20年11月1日付けで、富士市に合併することが発表されたのを機会に、NPO法人化を目指すことにし、1年間のNPOに関する研修を行い、平成20年2月1日に登記して、名称を「NPO法人富士川っ子の会」と改め再スタートした。
 NPO法人化に際し、目的を「子育て支援」から子どもと「大人が共に育つ」に拡大して、定款に次のように定めた。
1.「子育て支援」については、事業名を「自然学習、生活体験等を通した生涯学習推進事業」とし、NPO法に定められた活動の種類として、「子どもの健全育成を図る活動」を選んだ。具体的には、農作業の体験を通しての「富士川っ子エコクラブ活動」を続けてきた。平成26年度から青年リーダー(若手指導者)による「ふじかわっこ!遊び塾」として継続している。
2.もう一つの柱になる「大人が共に育つ」については、事業名を「地域づくりへの参加及び支援事業」とし、NPO法に定められた活動の種類として、「まちづくりの推進を図る活動」を選定した。構想としては、誰もが何時でも顔をだせるような「寄り合いどころ」を開きたいと考えた。
 しかし会員の高齢化が進む中、若手会員が少ないまま時間が過ぎてしまったが、平成26年度から若手会員による活動が順調に進んできた。

「NPO法人富士川っ子の会」の今後の役割ついて
 「高齢者を積極的生かす地域社会づくり」に貢献することが重要だと考えている。平成24年度は、文部科学省の「全国生涯学習ネットワークフォーラム2012」の関連事業として「水生生物調査」と「ソバ打ち体験」の二つの事業が承認され全国公開された。
 このように、高齢者の生きがいに通じる意味もあるので、地域の人々、企業等の理解が得られるような活動にしていきたい。
 高齢者を含め住民が求めるところは、「安全で安心して過ごせるところ」だと思う。高齢化も世界で最も速いスピードで進んでいるという。高齢者を十分生かしたまちづくりや地域づくりがますます重要になってくると考えている。高齢者が望むことを高齢者自らが確立していけるような「まちづくり」が必要だと考えている。特に、高齢者が持っている「知恵と経験」をもとに、暮らしやすいまちづくりが重要と考えている。そのためには、「高齢者が責任をもって活躍できる仕組み」を作ることである。
 高齢化率が高まってゆくわが国では、高齢者を生かす施策が絶対必要で、住みよい地域を作るためには高齢者の「知恵と経験」を積極的に生かすべきと考えている。
 このようなことから、当会の活動を見直し、今まで以上に会員と地域の人々の持っている「知恵と経験」をさらに活かして、次世代を担う子どもたちとその親に伝達していくことが大きな役割となると考える。
 そこで、「地域づくり」については、原点に立ち返り「理念づくり」から検討に入った。
 理想的な地域とは、「安心して天寿を全うできるところ」という捉え方をしている。そして高齢者の持っている知識や経験、知恵やノウハウを生かせた地域が勝ちと考えてきた。少子高齢化が進む今こそ地域の「絆」が大事だと考えている。
 平成22年には、富士市若手職員の研修の場となり、行政との協働もできた。また、平成23年度、24年度、25年度は、富士市教育委員会社会教育課が実施している「青少年指導者育成講座生」による、チャレンジ事業の企画計画から実習の場として活動して頂いた。
 平成24年2月には、「設立10周年記念式典」を開催したが、横断幕や立て看板は、「富士川っ子エコクラブ」の子どもたちの手作りで作成し、式典の総合司会は、第1期生の大学生と中学、高校生が務めた。このように、富士川っ子の会の活動を通じて、徐々に世代の繋がりが明確になってきている。
 最近は、保護者も活動当日のサポーターとして参加する人や、活動していた子どもも中学生、高校生になりジュニアサポーターとして参加する人も数名あり、本当の世代の交流が図れるようになった。
 活動を毎年継続してきた結果、最近は、子どもにとって自然体験が重要だとの認識が広まってきて、賛助会員として支援を頂く団体、個人が多くなってきた。

理念の見直し
 富士川っ子の会がやるべきことは何かについて、平成26年9月25日、グループワークにより検討を開始した。グループワークのテーマは、「理想の地域」とはどういう地域か、その「実現に必要なキーワードは何か」について検討を試みた。
 検討してきての結論は、「人の交流が『楽しさ』と『住みやすさ』を実感できるまち」となり、実現するためには、「人のつながり」と「居場所」が必要であるということになった。
 具体的には地域コミュニティの拠点として「寄り合いどころ」、「高齢者の持てる『知の力(知識、経験、知恵、ノウハウ等)』を生かせる場所」を開設することになった。「寄り合いどころ」には、「よろず相談」の機能を持たせることで、高齢者の「知の力」を生かすことであり、生きがいにもなると考えている。そこでは、生まれてから天寿を全うする間の問題や課題に対してアドバイスし合うことができる環境ができ上がるので、生涯安心した地域にすることができると考えている。

新理念と事業目的
 平成27年度の活動を検討するにあたり、平成26年9月から、設立原点に立ち返り理念を見直し次のような理念とした。事業としては「自分で考える子どもの育成」を目指した「遊び塾」事業と地域のコミュニティ拠点づくりを目指した「寄り合いどころ(かわっこカフェ)」事業の二つに絞った。
理念:
 「命の大切さ」を学び、自ら考えて行動する「富士川っ子“子どもと大人”」を育む。
「ふじかわっこ!遊び塾」の事業目的:
 地域の小学生(1年~6年生)と地域の青年リーダーとが「命の大切さ」を共に学ぶことを目的とする。
「寄り合いどころ(かわっこカフェ)」の事業目的:
 自ら考えて行動する「ふじかわっ子」の育成を地域で支えるため、地域のコミュ二ティの拠点を作ることを目的とする。
 平成27年度の事業については、ホームページURL:http://www.npo-fujikawakko.net/で公開している。

二つの事業の連携
 二つ事業に共通しているのは、「命の大切さ」について学ぶことであり、概念図に示すように互いに繋がれるように活動拠点を同一施設に設置した。
 「寄り合いどころ」は、「かわっこカフェ」を名づけ、お茶やコーヒーなどの簡単な飲み物なども用意し、誰でもが自由にいつでも立ち寄れるようにした。また遊び塾の塾生(子ども)も、寄り合いどころに設置した「ガチャガチャ」で運だめしなどを行うことができるので、自然と高齢者との交流もできた。保護者もまたお茶を飲みながらの会話も楽しんでもらえるようになってきた。当然、子育ての話や学校生活のことなども自然に話題となるので、徐々に自らの力で課題を解決できるようになっていくことが期待される。

活動の自己評価
 地域での子育てに関わること13年目、第1期生は大学を卒業し勤めているが、青年リーダーの一員として後輩の指導に関わっている。「富士川っ子の会」で育った青年が「富士川っ子」を育てる正に循環ができつつあることは自己評価としても高い。
 あきらめずに継続することが大事である。その他、自己評価をしても特記すべきことをあげると次のとおりである。
○若手の青少年指導者養成講座修了者にバトンタッチができた。
○NPO法人と行政との協働モデルとなりうる。
○「寄り合いどころ(かわっこカフェ)」は、対象者を制限しない誰でも話しに来られる拠点である。
○活動メニューは特定せずに、来た人で共通課題を見つけ、自ら解決する方向に誘導するようにした。
○このような「寄り合いどころ」は、歩いて行ける場所で、地域の公民館単位に実施できるモデル事業である。
○理念がしっかりしていて、「遊び塾」と「寄り合いどころ」の役割が明確で、かつ両者は自由な緩やかなつながりで連携しているので、無理がない。
○「遊び塾」と「寄り合いどころ」とが連携していることで、若夫婦の赤ちゃん育ての心配や、学校生活、就職、退職後の生きがい探し、さらには人生の終わり方の終活まで、あらゆる課題を地域で一番よい解決方法を探り出せる拠点を目指している。