「あしたのまち・くらしづくり2015」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

地域をエコで編集! 生活メディア森ノオト
神奈川県横浜市青葉区 特定非営利活動法人森ノオト
 NPO法人森ノオトは、広く一般市民を対象として、環境に配慮し持続可能な地域社会をつくるため、環境保全活動や環境啓発活動を通じて地域交流事業を行い、自然共生・地域循環型のライフスタイルを提案していくことで、人と自然、農が調和できるようなまちづくりの推進に寄与することを目的に活動を展開している。
 代表・北原まどかは、大学卒業後、地域新聞の記者、エコ住宅雑誌の編集部を経て、フリーランスのライター・編集者として、子育て雑誌、生協の広報、自治体の環境レポート記者、低炭素ビジネスメディアのエコロジー特集記者など、様々な環境メディアに関わってきた。2009年の出産を機に、自らのキャリアを地域貢献のために生かそうと地域工務店の援助を受けて2009年11月に「地元のエコ発見メディア森ノオト」を立ち上げる。当初は一人で取材・執筆・編集・更新をこなしていたが、半年もすると地域で読者が広がり「読者を巻き込んだ編集ができないか」と考え、2010年8月より読者の主婦にリポーターとして記事づくりに参加してもらうようになった。その時より毎月1回、第2火曜日に行っている編集会議は、「主婦の社会参加と地域情報が集まる場」として、多くの取材や視察が入っている。地域の子育て世代の生活者が、取材をきっかけにまちの魅力を発見し、エコを切り口に情報を発信していく独自の市民メディアのスタイルを確立する。
 取材エリアは拠点となる横浜市・青葉区を中心として、集まってきたリポーターの生活圏から「半径15分」の範囲としている。徒歩、自転車、自動車、電車で15分という範囲は、母親が子どもを連れて動ける行動エリアとほぼ一致している。横浜市青葉区、都筑区、川崎市宮前区など東急田園都市線沿線に情報が集中しているが、リポーターが増えるにつれ、川崎市麻生区、町田市など、小田急線沿線情報も充実してきている。
 2011年3月11日の東日本大震災、原発事故を契機に、生活者の目線でエネルギー問題を学び、考え、エネルギーシフトを実践していく市民団体「あざみ野ぶんぶんプロジェクト」を立ち上げる。有識者や企業を招いた勉強会、講演会、ドキュメンタリー映画上映会を重ね、市民の声をエネルギー政策に反映させようと『お母さん版エネルギー基本計画』を自費出版。2012年9月に当時の国家戦略担当大臣に直接手渡し政策提言するなどの活動を行った。同時に、座学だけではなく身近な自然エネルギーを電気に変えるための独立型ソーラーシステムのワークショップを展開。ソーラークッキングのレシピ開発など、対立軸をつくらずに、自らの暮らしを見つめ、変えながら、女性らしい視点で「エネルギーと仲良くなる」切り口は、多くの共感を呼び、多数の取材を受けている。2013年9月より森ノオトの枠組みで活動を継続し、横浜市と東急電鉄がたまプラーザエリアで進める「次世代郊外まちづくり」に参加、2014年9月には「非営利型株式会社たまプラーザぶんぶん電力」として会社設立を果たし、市民発電事業、省エネ事業を計画している。
 月間の読者が1万人を超え、エコを通じた地域コミュニティが形成し始めたことから、2013年1月、「森ノオト」をNPO法人として設立。第一弾の自主事業として「リポーター養成講座」を開催した。取材、編集のスキルやSNSの使い方、メディアリテラシーなどの基礎知識を習得したうえで、読者がリポーターとして地域社会にデビューする仕組みを整えた。本人が取材したいテーマを大切にしながら、編集方針として「地域の役に立つか?」「環境問題解決に貢献するか?」の軸を取り入れ、リポーター自身に「日常生活の中にある社会課題・環境問題」解決につながる、明るく楽しい情報発信を心がけてもらっている。また、リポーター一人ひとりの個性とスキルを、「記事として地域に共有する」ことを通じ、読者にとっては「近所のママ友」がよく読むメディアで活躍している! という、雑誌モデルへの憧れ軸を、地域の身近なママさんに移しながら、読者にも社会参加の機運を広げていこうとしている。
 森ノオトが持っている強みは、「環境情報を徹底的にローカルに落とし込む、情報を通じて一般の主婦を巻き込みながら、環境・社会問題を解決していく」こと。取材を通じ、また自分の書いた記事が地域の人に読まれ、反響があり、評価を受けることで、主婦リポーターたちは「社会に参加していく」大きな手応えを得る。その結果、彼女たち自身のスキルや才能を地域に還元し、リポーターが講座の講師として活躍したり、新聞やテレビ、ラジオ出演など、人前で話すシーンも増えてきた。森ノオト主催のイベントでスタッフになったり、行政からエコクッキングの講座の依頼を受けたり、写真講座の講師や、イベントのコーディネートなど、活動の幅が広がっており、「主婦の社会参加」と「主婦の仕事復帰」の中間に位置するような「地域仕事の発掘」にもつながっている。森ノオトがきっかけの一つとなりリポーターの中から地産地消のケータリングビジネスで起業した女性、地域工務店に就職して地域活性化に貢献している女性、森ノオトの交流会で出会い地元のカフェに就職して地域でマルシェイベントを定期開催している女性など、森ノオトが介在したことで地域活性化につながる事例も出てきている。
 2013年1月のNPO設立以降は、メディアでの情報発信だけでなく、地域の人と人がリアルにつながり集えるイベントも行っている。毎年11月に行っている地産地消オーガニックマルシェ「あおばを食べる収穫祭」では、地元・藤が丘商店会の協賛を得て開催。エコやオーガニック、フェス好きなど「テーマ型コミュニティ」への発信ではなく、地元幼稚園・保育園・小学校・自治会など「地縁型コミュニティ」にチラシ1万部を配り、「普通の人にエコロジー、オーガニックを伝える」発信方法に徹している。リユース食器の使用、マイ食器の持ち込みを呼び掛けた結果、2000人規模のイベントで出たゴミは、2013年は家庭用45リットルごみ袋4袋、2014年はわずか1袋に。環境行動への成果を「見える化」し、環境行動への参加した結果の効力感を出すことに成功している。
 2013年6月から11月まで、毎月開催した「あおばECOアカデミー」は、行政担当者、地域企業のリーダー、大学教授などを招いて「地球温暖化」をテーマにした講演会と、ワールドカフェなどの対話のプログラムを合体し、「学び、考え、対話して共有し、実生活で行動する」PDCAをメディアで追いかけた。この取り組みはeco japan cupで評価され、「みんなで創るエコまちづくり」で特別賞、東急グループ賞を受賞した。
 2015年度は日立財団の環境NPO助成を受け「エコDIYまちづくり」プロジェクトを実施。エコハウス建築の第一人者でもある建築家・みかんぐみの竹内昌義氏のアドバイスの元、6月に講演会・ワークショップを実施。市民発の「エコDIY」のアイデアがいくつも生まれた。また、地域工務店や地域の造園業者の協力を得て、グリーンカーテンづくり、天井断熱施工のワークショップを開催。横浜国立大学理工学部建築都市環境系学科の学生との共同研究もスタートし、エコDIYの効果測定を行っている。
 代表の北原は森ノオトの活動を通じ、市民の代表として横浜市の環境創造審議会で「温暖化対策実行計画」の専門委員や「横浜市再生可能エネルギー等導入推進基金事業に関する評価委員会」の委員を務めたり(2015年9月より横浜市廃棄物減量化・資源化等推進審議会の委員に内定)、横浜市地球温暖化対策推進協議会の幹事に任命されるなど、市民と環境行政の橋渡しとしての活躍の場を与えられている。同時に、地元の市会議員とも党派問わず連携を密にし、生活の場からの声を行政に伝え、未来そのものである子どもたちにつながる地域づくりをしっかり行っていきたい。
 今は生活圏内である横浜北部・川崎西部(東急田園都市線沿線)にしぼって活動しているが、森ノオトの「メディアを通じた社会参加、課題解決」の手法は、横展開可能な仕組みだと感じている。また、環境政策は自治体によって異なるため、近い将来森ノオト「横浜版」「川崎版」「町田版」を分派させて、各メディアが経済的に成り立つ仕組みを構築したいと模索している。今後は「まちの編集者」になる人材を育てていくなかで、森ノオトをスピンアウトして横展開し、各地で「情報を通じた社会参加と課題解決」を担える女性たちを輩出することで、地域が元気に、豊かにつながっていくと確信している。
 ウェブメディアは、まちで起こっているデジタルアーカイブになる。グローバルに進む問題を徹底的にローカルに落とし込み、足元から社会課題を解決していく。そこで得てきた手法を、逆に「地域おこし」という形で全国に広げていけたらと願っている。