「あしたのまち・くらしづくり2015」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

街の活性化を目指し空き店舗にカフェを開設
神奈川県横浜市金沢区 特定非営利活動法人さくら茶屋にししば
 私たちの住む西柴の街は、65歳以上の方が占める高齢化率が40%を超える地域も多いだけに、安心・安全な街づくり、そしていつまでも住み続けられる街へという思いを多くの住民が持っています。
 そこで西柴地域で福祉活動の「ボランティア」をしていた有志が、いつでも誰でもが集える居場所づくりに着手しました。高齢化の中で家に閉じこもるのではなく、外に出て地域の方々と交流する、そのための「居場所づくり」をシャッター化が進む商店街の空き店舗をオープンするかたちで進めたのです。その構想を地域の方に伝え、要望を把握する目的でアンケートを全世帯に配布し、住民の思いや要望、そしてこの企画に賛同して協力いただける方を募り活動を開始しました。
 その取り組みが、「お店づくりや在り方」、「スタッフ集めや体制づくり」に大いに役立っています。地域の方の要望や声に沿った各種のイベントを企画し、協力を約束していただいた方々の得手を生かした各種教室を開催するなどで活動の幅は年々広がってきました。
 「居場所づくり」は、横浜市のまち普請事業で開設した「さくら茶屋」だけでなく、同じ商店街にある薬局の一部を借りて設けた「ほっとサロン」の場、同じ商店街の空き店舗に新たに子どもの居場所を併設して開いた「さくらカフェ」と、3カ所の場を設け活動しています。
 丸5年目を迎えた現在、二つのカフェ事業における年間のランチ提供数は1万食ほど、地域住民の交流の場づくりとして各種のイベントや集いを開催していますが、その数は大小合わせると年間200回ほど、約3000人余りの方に参加していただいています。現在展開している活動内容を以下に紹介します。

<活動内容の紹介>
・家庭の主婦が日替わり交替で調理する安心安全な格安ランチや、一人分小分けした各種惣菜の提供など、喫茶・カフェの2店を運営し「食を通しての交流の場」を提供しています。
・地域の腕自慢が制作する小物や洋服・アクセサリー、パンやクッキー、地域作業所が制作する物品を展示販売し、制作者の生きがいややりがいを援助しています。
・地域の方々が交替で講演したり、歌や楽器演奏を披露したり、その後飲食を共にしながら交流する「西柴夜話」を毎月開催し地域住民の交流促進をはかっています。
・ハロウィンやクリスマスなど季節の歳時記ごとに子育て世代のママが企画運営し、住民を巻き込んで実施するイベント開催で地域の活性化に力をいれています。
・地域のボランティア講師による四つの「趣味の教室」、美容師などの協力による「顔のエステや眉毛カットなどの身体のケア」「健康講座」を定期的に開催しています。
・高齢者・介護者のための「おしゃべりの集い」、健康体操、折り紙教室等を定期的に開催したり、グループをつくりお出かけ会を開催したり、元気づくりを応援しています。
・共働き家庭の児童応援を目的に、元学校教師のボランティアによる「朝塾」の開催、「子供の居場所」設置で幼児や小学生を対象に立ち寄りの場を提供しています。
・多世代間交流(子育て世代のママと孫を持つ世代の熟練主婦の交流)や、発達障がい児を持つママたちの経験交流のための「おしゃべり会」を隔月に定例開催しています。
・認知症の方やその家族が社会と係わることを重視し、ケアセンターや地域の民生委員の方々と協力して運営する「認知症カフェ」を月1回定例で開催しています。
・健康づくりを目的に毎週1回、地域にいくつかのコースを設定し、ポールをもってウォーキングする体験会を開催、及び横浜市主催のウォーキングポイント活動の普及も行っています。
・高齢者等買い物サポートを必要とする世帯への買い物代行の援助や、簡単な生活支援を、毎週2回(火・水)担当者を配置して実施しています。
・西柴ショッピングセンター活性化のため、商店街の一員として七夕やハロウィンの各種イベントの企画と運営に携わり、売り出しセールの宣伝を担当しています。
・地域交流・つながり強化を目的に広報活動を展開、広報誌を毎月定期発行し、スタッフによる3000世帯への全戸配布とホームページ・ブログの作成・公開をしています。
・他県や他地域団体から要請される「コミュニティカフェ」としての成り立ちや経験内容を紹介する活動、及び紹介パンフレットやDVDなどの普及に努めています。
・横浜市金沢区と連携した市民活動応援や地域住民の相談活動、地域の昔ばなしの紙芝居作成など、行政と共に「つながりステーション」活動を推進しています。
・その他、スタッフ交流のための各種企画運営や、組織運営に係わる会合を含め、多くの活動を展開しています。

 こうした活動を支えているのは、すべて地域のボランティアスタッフです。活動するうえで私たちがモットーとしていることは、「楽しく、決して無理をせず、できる範囲で行動する。しかし常に少しでも前進させる思いだけは持ち続けよう」ということです。したがって、「さくら茶屋」は日曜を除き毎日、祝日も営業していますが、スタッフは曜日ごとにグループをつくり運営し加重な負担を避けています。総勢80人余りのスタッフがそれぞれに役割を持ち、活動にあたっています。
 地域住民の要望に沿う活動が、住みよい街づくりに尽くすスタッフの活動が、利用者の心に届き、「多くの感謝の言葉」として帰ってきます。それがまたスタッフのやりがいとなり、活動の好循環を生みだしています。
 これからも、こうした活動が地域に根付くように、後に続く後継者の育成も視野に入れながら着実に活動を継続していきたいと考えています。