「あしたのまち・くらしづくり2015」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞

空き家から始まる商店街の賑わい創出プロジェクト nanoda(なのだ)
長野県塩尻市 nanoda
 「地域の課題を想像て?捉えるのて?はなく、実際に住んて?みないと商店街の現状・課題はわからない」と、地元塩尻の“大門商店街”に空き家を借り、可能な限り閉まってしまったシャッターを開ける。そんな空き家/空き店舗を活用した「空き家から始まる商店街の賑わい創出フ?ロシ?ェクトnanoda(なのだ)」を2012年4月より開始。現在までに商店街の空き店舗4軒を運営、マッチングして活用している。

 「公務員か?元気なら、地域は絶対元気になる」と、その熱に巻き込まれたメンハ?ーと共に、nanodaを拠点に多様な活動を実施。人と人、人と地域をつなけ?る。
 2014年1月「地域に飛ひ?出す公務員アウォート?2013」大賞を受賞。

 TEDトークでの動画「元ナンパ師の市職員が挑戦する、すごく真面目でナンパな「地域活性化」の取組み」が話題に。http://logmi.jp/23372

空き店舗を活用した行政職員の人財育成
塩尻市役所若手職員の勉強会「しおラボ」

 2011年から「50年後の塩尻市が豊かであるために」を主要テーマとして、そのために職員は何をするべきか、未来の塩尻市をつくる職員像とはどんなものか、持続可能な自治体経営をするために何が必要かを考え、対話し、行動に移すことを目的に、原則毎月第4木曜日の18時〜21時に勉強会「しおラボ」を開催しています。役所の若手・中堅職員の有志が配属先の壁を飛び越え集い、毎回ゲストに若手職員の所属長(部長など)や時には、市長や副市長も招き、意見交換が行われています。
 「ワールドカフェ」というワークショップの手法を用い、職員同士が積極的に参加しやすくなる仕掛けを導入しています。また、各回とも勉強会の最後に「プロミスカード」という「明日から自らが取り組む課題を、参加者全員の前で宣言する」。nanodaのアイデアは、2012年3月22日に行われた第17回目の勉強会で「魅力ある商店街を考える」をテーマに話し合いが行われた際に誕生しました。わたしは「まずは自分たちが商店街に身を置こう、住んだことも、商いをしたこともないのでは課題を解決できない」と考え、この回でのプロミスカード発表の際に「商店街で空き家を借ります」と宣言し、そこから活動がスタートしています。

空き家から始まる商店街の賑わい創出プロジェクトnanoda
 前述した市若手職員の勉強会から生まれたこのプロジェクトは2012年4月からスタートしました。塩尻市の中心地に位置する大門商店街の空き家を、月1万1000円で家主から借り受け、家賃や光熱水費、修繕費、活動費などを、当初は、塩尻市役所職員の有志を中心としたメンバーが1人月1000円払うという方法で、共同運営を始めました。
 このスペースの名前を「nanoda」と名づけ、商店街の賑わいを創出すべく、テーマごとに「○○なのだ」と銘うち、様々なイベントを実施しています。メインとなるイベントは「朝食なのだ」、「ワインなのだ」、「空き家をお掃除なのだ」「ぐるぐるカレーなのだ」「敵に塩を送るプロジェクトしおなのだ」など多彩です。
 「朝食なのだ」では「週末の朝に、商店街の人と朝ご飯を食べてみよう」というメンバーの声がきっかけとなり、朝7時にnanodaに集まり、みんなで朝食を食べそれぞれの仕事に出勤しています。「ワインなのだ」では日本ソムリエ協会が定めた毎月20日の「ワインの日」にnanodaに集まり、塩尻ワインの振興を目的とし、塩尻の名産品である塩尻ワインを飲む機会を設けています。ワインなのだは、現在も継続し、平成27年7月で36回目の開催、3周年を迎えます。「空き家をお掃除なのだ」では、商店街の空き家をメンバーで掃除させてもらい、その後、建物の所有者と一緒にお食事会をします。お食事会では、大家さんから、「昔、商店街はどうでしたか」「なぜ閉めてしまったのですか」「今後、どんな町になればよいですか」「この空き家貸す予定ありますか」など、大家さんが現在、抱えている課題などお話を聞きます。このように、自ら空き家を借りて、イベントなど様々な活動を行いながら、若手職員自身が地域の人々と出会い、学びながら、商店街の賑わいづくりに携わり、商店街の現状・課題を知る活動をしています。

自発性を尊重しながら行政職員全体で若手職員の人材育成
 近年の新規採用職員は、就職氷河期の高い募集倍率を潜り抜けて採用された優秀な職員が多く、熱い思いを持って入庁するも、日々のルーティンワークに追われ、本来やりたかった仕事や企画をできずに数年で熱い想いが消えてしまう職員が少なくなく、若手人材の活用という視点で組織として見てももったいないことだという問題意識があり、その問題意識が現在まで毎月、勉強会を継続しています。
 勉強会を継続的に開催することで、若手職員が自らのキャリアデザインを描けたり、仕事へのモチベーションを向上させることにつながったり、また、退職間近のベテラン職員から、若手職員へ、想いやこれまでの経験・知識を継承する場として活かされています。
 さらに、勉強会を通じて、職員自らが自発的に地域の中でアクションを起こすきっかけにもつながっており、その経験が結果として、本来業務である行政としての市民サービスを提供するために活かされています。
 行政職員のボランティア活動として、職員個人が個人の裁量で活動が行われることは多くありますが、若手職員の育成という視点を持って、業務外で取り組まれている行政職員主体の活動は全国でも珍しく、このような職員の活動を市役所からも応援され、塩尻市の将来像を考える市民対話型ワークショップ企画「塩尻未来会議」の運営・ファシリテーターも任させています。

商店街の空き店舗が若者や移住者の活動拠点になる
 nanodaの2階には、運営に関わり、そこを管理しながら住んでいる若者がいます。また、2013年には通り沿いにもう1軒空き店舗を無料で借りられることになり「アトリエnanoda」というアートイベントや展示スペースとして活用できる場所ができています。ここには、美大出身で美術教育に携わりながら、アトリエを持ちたいという思いのあった京都からのIターンの女性が運営しています。また、2014年6月には、6年間閉まっていた旧「ミミー洋装店」をお掃除させていただいたことがきっかけで、シェアハウスとして再生され、松本市で設計店を営んでいた若者の建築士が事務所を開設し、松本市でコワーキングスペースのスタッフをしている東京出身の若者が住居として活用しています。
 このように、古民家ではなく、商店街の空き店舗であっても、若者や移住者にとって、住む場所としても使えたり、活動拠点として活用できます。さらに、その場所が中心となって、地域住民や地域外の若者など興味・関心に惹かれた多様な人が集まる場となり、イベントが生まれたり、プロジェクトが生まれたり、ビジネスが生まれたり、移住者にもつながる展開が生まれる可能性を秘めているということが言えます。

県外からの交流人口、移住者のコミュニティとしての商店街の拠点へ
 nanodaには、先月までの10ヶ月間で126人がnanodaに宿泊滞在し、3年間で5人の住民が商店街にIターンで居住する実績にもつながっています。nanodaは沢山のファンや地域住民から賛同を得て活動していますが、その一方で、取り組みに無関心な人や、私たちの活動を知らない人も多い。地域の人々が活動スペースとして活用してくれたり、今後も、いろんな人が訪れる場所にしていき、商店街の新たな賑わい創出の場、拠点として継続していきたいと思っています。