「あしたのまち・くらしづくり2014」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

「もったいない」を「ありがとう」の笑顔に変えるまちづくり
鹿児島県鹿児島市 特定非営利活動法人フードバンクかごしま
 私たちフードバンクかごしまは食と人をつなげる橋渡しの役割を担っています。フードバンクとは、まだまだ食べられるにも関わらず、様々な理由によって市場に出せなくなってしまった食品たちを引き取り、食に困っている人や施設へお渡しする活動のことをいいます。まだまだ食べられるのにも関わらず、廃棄されてしまう食品を「食品ロス」といいます。
 設立は、2011年。きっかけは、東日本大震災です。周りは絵手紙を書いて、売上額を寄付するなど、自分の得意なことを活かして「お金」を集めて寄付をしていました。「自分にも何かできないか」と考えたときに「食べ物であれば集めることができるかもしれない」ということがきっかけで「食べ物」を集めました。その時がきっかけで、フードバンクという活動をしている団体が東京にあることを知り、そこで日本には捨てられる食べ物がたくさんある現状とその一方で食に困っている人たちの存在を知り、鹿児島の地でフードバンク活動をすることになりました。

 具体的にどのような活動をしているかというと、企業さんや個人の方からまだまだ食べられるけど廃棄してしまう食品を「お預かり」してホームレスの支援団体や児童養護施設、母子寮など福祉施設に「渡す」という活動をしています。私たちの倉庫にはジュースやお菓子、レトルト食品、カップ麺などが様々な企業や個人から寄贈されてきます。毎回量も、食品内容も様々です。その寄贈されてくる理由も様々です。例えば、ラベルの変更で、前のラベルの在庫分は廃棄しなければいけなくなった。クリスマスや、バレンタインなど季節の商品はイベントの日にちを過ぎたので、店頭に出せなくなった。調理の過程の段階で、加熱時間が少し過ぎてしまった、など。
 それらの食品は全て、廃棄されてしまうはずだった食品たちです。毎回、100ケース単位、多い時には1000ケース近くの食品を受け入れることがあります。しかし私たちフードバンクが引き取る量はほんの一部で、引き取り手のなくなった食品はすべて廃棄されてしまいます。
 日本では捨てられる食品が1700万トン、そのうちの500~800万トンが食品ロスです。平成25年度のフードバンクかごしまの食品引き取り量が120トンなので、ごく一部なことがわかります。
 食の豊かさの一方で、貧困で苦しみその日1日の食を食べられない方々も多くいます。一人親世帯の50%が貧困線以下の暮らしをしている現状です。日本には貧困線以下、つまり年収112万円以下で暮らす人が約2000万人いると言われています。1月に換算すると約9万円です。9万円以下で毎月暮らしていかなくてはならない計算になります。

 私たちフードバンクかごしまは、事務局だけでなく多くの鹿児島市民で一緒に作って盛り上げていきたい、と考えています。「もったいない」を一緒に考え、食品ロスの削減していきたい、また「もったいない」を減らすには、事務局だけではできません。市民のみなさんで一緒にフードバンクかごしまを作っていきたい、そんな思いで活動しています。

 フードバンクかごしまの主な活動としては
1.食品をボランティアさんや学生に地域の施設へ運んでもらい、たくさんの施設の方に触れ合ってもらっています。触れ合い、つながり知ることが結果的に、支え合い、助け合いにつながります。
2.食品ロスを減らす活動や講演、ワークショップなど啓蒙活動をしています。
3.学生チームによる被災地支援活動「鹿児島県産の茶葉を被災地に送ろう」を定期的に開催しています。

 1について。食品配送や荷物の積荷を多くのボランティアさんにお手伝い頂いています。配送に行ったときには施設のみなさん、笑顔で食品を受け取ってくださいます。ボランティアさんも毎回この笑顔に会いに食品配送を積極的に参加してくださっています。
 また児童養護施設や母子寮の子どもたちはボランティアさんが行くととても嬉しそうにお菓子や食品を取りに来てくれます。お菓子や飲み物がくることももちろん嬉しい一つのポイントなのですが、それ以上に「施設の大人以外の大人」に会い、一緒に遊んだり、勉強を一緒にして、触れ合うことができるからだと思います。
 また施設に行ったボランティアさん、学生さんも普段では接することのない施設の子どもたちとの触れ合うという経験をすることができます。私もよく施設へ行くことがあるのですが、子どもたち本当に嬉しそうな顔をするのです。そして、小さい子どもたちに手を引っ張られながら、追っかけっこをしたり、走り回ります。このように施設の子どもたちや、利用者さんと触れ合うことで、知ることができます。人が人を助けたい、何かしたい、と思う時には「知る」過程というのがとても大事だと思います。知ることは、お互いの関係を深めるためには必要な過程です。

 食品を寄贈してくださる方も自社・個人の作った食品が廃棄されずに、地域の食に困っている人たちに食べてもらえることで、「地域のために役に立っている」という実感を得るそうです。地元の食品がこのように活用されると、自分たちの地域にはこのような特産物や食品があるのかと、ボランティアさん、施設のみなさんへと自然とPRもできるのかな、と思います。私たちフードバンクかごしまは地元の企業や個人の方に直接食品を引き取りに行きます。そこで、出会う企業の方・個人の方、「食に困っている人たちのためになるのであれば…」と笑顔で自社の食品を私たちに預けてくださります。そんな「想い」の詰まった食品を、施設の子どもたちや障がい者、食に困っている方に「想い」と一緒にお渡しできるのがフードバンク活動だと思います。
 昨年度の食品取扱量が120トン。企業は食品をキロ単位で資金をかけて廃棄します。キロ600円計算で換算すると、昨年だけで9000万円の廃棄コストを削減したことになります。またその分のCO2の削減にもつながっています。

 2について。私たちは食品ロス削減の啓蒙活動もしています。家庭での食品ロスは「食べなかったけど、冷蔵庫の奥にあり食べられなくなった」「おいしくなかった」「買いすぎて消費できなかった」など。廃棄されてしまう理由も様々です。
 今現在の、鹿児島市民は60万人です。その全家庭で少しでも減らすことができたら、何トンもの食品たちが廃棄されることなくおいしく食べてもらうことができます。結果的にゴミの削減もできます。私たちは、積極的に大学の講義やフードバンク主催で一般の方対象に「家庭の『もったいない』」を考えるワークショップを行っています。ワークショップを終え帰ってすぐに家で実践できる提案を一緒に考えます。
 昨年25年度には、農林水産省の委託事業としてフードバンクシンポジウムを鹿児島県内2か所で開催しました。

 3について。フードバンクかごしまの学生チームは定期的に「被災地にお茶を送ろう」イベントを開催しています。鹿児島県はお茶が有名です。学生たちが年に数回、鹿児島市内を拠点に商店街や、他団体のイベントでブースを出して、まだまだ飲めるけど家に眠ってしまっている茶葉や、お茶農家さんたちからお茶の寄付をいただき被災地に送り、心も体も温まってもらおう、という活動を行っています。またその時に、鹿児島の方々のメッセージとお茶を送る送料も集めます。学生たちが、積極的にブースに立ち寄る方々に声をかけて、紙にメッセージを書いてもらっています。
 毎回、お茶は30~50キロ、メッセージは多い時には300枚以上集まります。学生自身で考え、学生たちが動き、当日のイベントも学生主体で動きます。
 毎回お茶を送ると被災者の方々からは「自分たちが被災したことを忘れられることが怖い。いつもお茶を送ってくれて私たちのことを忘れないでいてくれていることが嬉しい」という声をいただいたことがあります。東北の大震災のことを忘れないためにも続けていきたいと思います。

 しかしながら、最初で述べたようにまだまだ食品ロスについて、その言葉自体を知らない人が鹿児島でもほとんどです。鹿児島県の中のある調査結果によると日本で発生する食品ロスの量を知っていると答えたのは全体の約5%、おおよそ知っていると答えたのは25%、あとの約70%は知らないと答えました。食品ロスと言う言葉についても知っていると答えたのは全体の50%であとの半数は「言葉は聞いたことがあるが意味を知らない」または「知らない」という答えです。
 まだまだ、食べ物の「もったいない」が地域に浸透していない状況なのだと思います。

 フードバンク活動で、地域の廃棄されてしまう食品を減らすことや、家庭で食べ物の無駄を無くす活動を展開し、実際に実践してもらうことはゴミの削減にもつながりまちの環境保全になります。また、その食品たちが食に困っている方々の笑顔につながります。食がつなぐ人と人。食品を提供してくださる企業さんや個人の方、その食品を持って行くボランティアさん、施設のスタッフや、利用者さん、たくさんの人がつながります。そして、そこから生まれるのが「助け合い」「支え合い」だと思います。

 フードバンク活動は、地域の企業・農家さんが想いをこめて作った食品のもったいない減らしながら、人と人をつなぎ、食品ロスを削減する、環境を守る、活動です。「もったいない」そんな食べ物たちが少しでも減るように、そして「ありがとう」に代わるように。そんなまちづくりをみんなで一緒に作りあげていくことを目指して私たちは活動しています。