「あしたのまち・くらしづくり2014」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

村づくりは人づくり
徳島県吉野川市 森藤村づくり推進協議会
 私たちの森藤地区が昭和61年から農村トータルライフ事業に指定され、その一環として、森藤地区にある八つの自治会がボランティアで運営する森藤村づくり推進協議会の活動が始まりました。爾来30年、「村づくりは人づくり」を活動の理念にして、地域の絆を深めてまいりました。
 地域住民が協力して活動するためには、集う場所が必要ですが、当時の森藤地区は、集会所が一つもない状態からのスタートでした。しかし、町(合併前の鴨島町)に働きかけ、3か所に集会所を設けることができました。毎月第2火曜日、この六つの集会所を持ち回りで使い、森藤村づくり推進協議会の定例会が開催されています。毎年初夏に開く森藤村づくり推進協議会総会は、今年度で29回を数えました。
 森藤地区は、農村風景の残る自然豊かな地域です。また、平家物語の「足摺」で有名な俊寛と共に鬼界ヶ島へ流された平康頼を祭る康頼神社など、古い歴史と文化が残る土地柄です。私たちがまず目指しだのは、豊かな自然と歴史・文化を生かした村づくりでした。農家の高齢化と共に増えてきた休耕地をどうするか。後継者が減ってきた祭りの担い手をどうするか。定例会では、こうした身近な課題が話し合われています。
 災害に強いコミュニティを目指した活動として、自主防災訓練の炊き出しや避難訓練、救急救命訓練等を行っています。これらの活動の拠点となっているのが、「森藤ふれあいランド」です。森藤地区を流れる三谷川のほとりにある「森藤ふれあいランド」は、ハッサクの栽培放棄地を整備し、芝生広場に遊具を設置した近隣住民の憩いの場です。地質調査のボーリングで偶然湧き出した地下水は、「龍王水」と名付けられ、水汲み場を整備しました。以来、おいしい名水を汲みに来る人の姿が途切れることがありません。水汲み場の隣にはパーゴラも作り、しだれ桜や蜂須賀桜が咲き誇る春には、お花見に絶好の場所となっています。この名水の湧く「森藤ふれあいランド」を維持・管理するため、定期的な木の剪定、草取り、導水パイプの点検・補修を行っています。
 また、園内には実習農園もあり、地元の小学生が農業を学ぶ場にもなっています。地域と学校との連携活動も12年目を迎えました。地元の森山小学校では、4月の籾蒔き、5月の田植え、6月には春ジャガイモ収穫とサツマイモ苗植え、9月の稲刈り、11月にはサツマイモ掘り、2月には春ジャガイモの植え付けと、年間を通して農業を指導しています。また、餅つきや収穫祭等活発な活動を行っています。

 森山小学校との交流は、農業体験だけでなく、伝統文化の継承にも広がっています。森藤地区には、約180年前に始まったと言われる「森藤獅子舞」が伝わっています。この獅子舞の彩りとして子どもたちが踊ってきたのが「傘おどり」と「二十四孝」です。子どもの減少で消滅の危機に瀕していたこの踊りの継承に取り組んでくれたのが、森山小学校です。平成23年度から、総合的な学習の一環として3・4年生が、森藤村づくり推進協議会の会員でもある森藤獅子舞保存会の指導で「傘おどり」と「二十四孝」の練習に取り組んでいます。練習の成果は、森山地区文化祭や吉野川市伝統芸能の祭典で披露する一方、平成24年には第54回中国・四国ブロック民俗芸能大会に徳島県代表として出演しました。小学校で「傘おどり」と「二十四孝」を習った子どもたちの中から、秋祭りの獅子舞に出る子どもも増えてきています。
 森山小学校では、私たちとの交流を「コミュニケーション能力を育てる体験活動」と位置づけ、積極的に活用しています。体験に伴う言語活動が不足しがちな現代の子どもにとって、農業体験を通して森藤村づくり推進協議会の会員と話をすることは、言葉の力ひいては思考力を育てる上で大きな意義があり、学力向上にも役立っているということです。「村づくりは人づくり」という理念は、地元小学校との交流にも生かされています。
 毎年8月、「森藤ふれあいランド」で開かれるのが、今年28回目を数える「森藤ふれあい祭り」です。パーゴラの下での開会式では、「生き生きチャンピオン」の表彰、小学生による農業体験感想文の発表、感謝状の贈呈などが行われます。芝生広場では、吉野川市防災局や消防署の協力による防災訓練が実施され、おやつつかみ取りやビンゴゲームに小さな子どもたちの歓声が上がります。また、三谷川では、小学生と幼稚園児を対象にしたあめご(あまご)のつかみ取りを行い、かつてはウナギもいた谷川の楽しみを今の子どもたちに感じてもらおうとしています。
 環境問題への取り組みも、私たちの重要な活動です。ごみの分別やリサイクルを進め、市内11団体とともに調印したマイバッグ運動の推進と併せて、二酸化炭素の削減に努めました。5月のレッツクリーンデーには、市民参加で地域の美化を進めています。
 県や新聞社主催のイベントにも積極的に参加しています。平成24年度は、東日本大震災復興支援募金活動を行い、「ひまわりアクリルたわし」を購入して、復興支援の一助ができました。
 今日、私たちの地域でも、後継者不足から、背丈を超す草に覆われた耕作放棄園や遊休農地が増え続けています。独居老人や買い物弱者の増加も心を傷める事案です。今後、隣近所の助け合いや声かけがますます必要になってきます。「村づくりは人づくり」という理念に基づき、一人一人の思いを大切に、これまでの活動をさらに充実させ、活動を推進していこうと考えています。