「あしたのまち・くらしづくり2014」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

生ゴミ堆肥で野菜いきいき ばあちゃんいきいき
三重県松阪市 生ゴミリサイクル亀さんの家
1.宅老所から発足まで
 1997年何がしたいと、はっきりした思いはなかったが、これからの人生を考えたとき、ここでけじめをつけようと決めたのが、51歳でした。その頃、主人は商売をしながら、地域の民生委員をさせていただいていました。二人で自分たちの老後を話し合いました。結論は、最後は地域の役に立ちたいと考えました。その頃は、介護保険が始まる前で、現在のように介護施設が少なく、介護をしている家族の負担が大きかったです。そこで、介護をされている家族の負担を少しでも軽減したいと考えて、民間宅老所「亀さんの家」を立ち上げました。開設時は60名の元気な高齢者が参加していただきました。私たち夫婦の思いは、介護者の負担軽減でした。しかし、介護の必要な方は2名で後は、元気な高齢者でした。そこで、元気な人がいつまでも元気でいられる地域づくりと、変更しました。最初はものめずらしさもあり、60名と多くの参加者でした。その後は、少し少なくなり、20~50名となりました。最後の頃は、40名と、安定していました。
 この事業を進めていくうちに、少しずつ芽生えてきたのが、本当の生きがい作りとは何かでした。一日楽しく過ごし、よかっただけでも、間違いではないが、何か、もっと考えるようになりました。そのような時、あるボランティアから、生ゴミが良い堆肥になるよと、教えていただきました。
 私たちの地域は三重県松阪市の東部に位置し、一級河川の櫛田川が伊勢湾に注ぐ、田園地帯です。かつては海苔養殖と農業で生活を支えた農漁村地域です。だから、生ゴミ堆肥を作り、それを利用した野菜作りができます。
 2003年から、生ゴミの堆肥化を宅老所に参加している人に、話してみました。その中の10名が手を上げてくれました。まず作業をする場所は、空き地に育苗用のハウスの古いのをいただき、立てました。失敗の連続でした。
原因 ①生ごみを腐らせてしまう。
   ②ハウスの中では温度管理がうまくいかない。
 最大の原因は③知識不足でした。
 そのうち、大型台風がきて、ハウスは飛ばされました。
 もう無理かとあきらめかけたとき、使わなくなった豚舎が物置状態であるのを借りることができました。また、堆肥作りを指導していただく「育土研究会の橋本力男先生」の所で、学べるようになりました。その後失敗することもなく、良い堆肥が作れるようになりました。
 2004年にNPO法人生ゴミリサイクル亀さんの家を発足しました。発足当時は10名のメンバーで力を合わせがんばりました。現在正会員23名 作業をしてくれる人、賛助会員60名 各家庭で一次処理をしてくれる人。
 作業は力仕事が多く、大変です。しかし、休憩時間は持ち寄ったお菓子を食べ、野菜作りの情報交換したり、時には愚痴を聞いてもらったり、会員の大切な場になっています。

2.堆肥つくりからいきがいつくり
 家庭の生ゴミは各自の家庭で、一次処理を行います。それを堆肥舎に集めて、二次処理を行い、完熟堆肥となります。
 一次処理は生ゴミを腐らさずに減量、減容することで、木箱のリンゴ箱にモミガラ、米ぬか、落ち葉、土を混ぜあわせた「床材」を入れて、野山の自然循環を応用した処理です。二次処理は一次処理品に米ぬか、落ち葉、土を混ぜ合わせ、微生物の働きで発酵分解させます。その後、1週間に1回の切り返し作業を5~6回行い、約3か月で完熟堆肥になります。
 上記の作業は機械を一切使用せず、スコップで行います。現在60~80代の正会員で行っています。
 完熟堆肥のみで育てた無農薬有機野菜を栽培しています。最初は、自分たちだけで食べていました。しかし、健康に良く、おいしい野菜なら、「みんな」に食べてほしいと思いが強くなり、販売することになりました。
 売上が生産者へと、その日一日の作業することの楽しみや達成感だけでなく、続けていくことの「生きがい」作りにつながっています。
 有機野菜はおばあちゃんたちの各自の畑で栽培しています。
 条件は化学肥料は使用せず、生ゴミ堆肥のみとする。消毒は科学のものは用いず、例えば竹酢液、酢などで行う。後は虫取り、ネットを使用、コンパニオンプランツで工夫する。おばあちゃんたちの有機野菜は市内外での販売、レストランの納品を定期的に行っています。売上の80%は生産者に、20%は会に入れております。

3.堆肥作りを通じた地域づくり
 地域における堆肥作業の実践は地元小学校の4年生の事業に2005年から出前授業を行っています。学校の先生方の理解があったことは勿論である。この授業を行うことにより、子どもたちにも変化が起こりました。始めのころは、ほとんどの子どもたちは「いただきます」の意味を「お母さんにありがとう」でした。しかし、最近は食べ物に対する感謝で、命をいただきます。と話す子どもが多くなりました。これは、お兄ちゃん、お姉ちゃんのいる子どもです。お家で話をしているのかと、嬉しくなりました。必ず、ノーベル平和賞の受賞者のマータイの話をします。
 3R、リサイクル、リデュース、リユースの説明のできる子どもが育ってきました。
 授業には常に会員の高齢者も参加することで、触れ合いが多くなりました。
 堆肥作り、野菜作り、地域との触れ合いの場となっています。地域住民からも子どもたちが挨拶が多く聞かれるとの声もあります。
 地域住民への堆肥化出前教室も年に4~5回行います。堆肥作りを通じて人のつながりができ、よりよい人間関係が生まれました。地域のつながりが強くなり、そこより、「防災のグループ」ができました。また、健康推進のグループが活発となりました。
 副産物として、松阪市のゴミ減量に効果を上げています。
 この会が発足して10年になりました。一時は、若い人(50~60代)がいなくなり、会員の高齢化でもう辞めようかと思うときもありました。ここ2~3年、停年退職された方が6名も参加していただきました。現在最高齢は86歳です。
 自分たちが育てた野菜を喜んで食べてくれる人がいること、労働に対する報酬があること、人との交流があること、それらがやりがいにつながっています。86歳のおばあちゃんから、若い人と一緒に行動ができて嬉しい。この種蒔いたらどんな人が食べてくれるのかと想像すると、うきうきすると話してくれました。

4.亀さんの家のこれから
 2012年にNPOからの脱退、NPOの知名度を利用した活動の普及には一定の効果がありましたが、役割を終えた。活動の内容は何も変えておりません。
 活動の広がりをめざして、地域での生ゴミの一次処理者の増加を図る。有機野菜の栽培者を増やし、また、販売を広げたい。

 3年前より新しい試みとして、オーガニックコットンの栽培を始めました。昨年は200坪の畑でたくさんの綿花を収穫しました。今年は栽培を倍にし、その綿で、布を作るまでの工程を学びます。昔ながらの松阪木綿を自分たちの手で作りたい。地元の産業の一つにしていきます。
 最後に
 私たちの目標である
1 高齢者の生きがい作り
2 地域の活性化
 もっともっと前進し、介護保険を利用することなく、最後までいきいきと暮らせる地域にしたいです。