「あしたのまち・くらしづくり2014」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

どんな時もつながり合える街の家族について
神奈川県横浜市青葉区 街の家族
はじめに
 活動開始3年目を迎え、住宅地の空家にまちの人たちが、みんなの家族の居間のように集う「街の家族」の家になりました。今、赤ちゃんからおじいちゃん、おばあちゃんまで、地域の人が集い、おしゃべりしたり、お昼を作りあって食べたり、また得意のパソコンや手芸を教えあったり、庭では畑や花壇を作ったり、思い思いに1階の交流スペースで過ごしています。
 また2階では、若いママたちならではの街を元気にする活動が階下で過す子どもとシニアの傍で始まっています。「街の元気紡ぎ出し工房」活動です。人がつながり、自分の得意なこと、やってみたいこと、習ってみたいこと、人の触れ合いから生まれるアイデアが、みんなで布を織るように身近なところで活動のつながりを紡ぎだし始めました。自分たちが加わわりながらまちに元気を呼び起こし、子どもたちに住みよいまちを生み出しプレゼントしていく活動が始まりました。子育て真っ最中の地域のママたちが編集部となり、本当に身近な地域の情報紙月刊「まちの家だより」の発行が今年の2月から始まりました。毎月1000部、まちのカレンダー、ホットニュース、イベントレポート、活動の呼びかけなど、つながる活動をまちと共有する活動が始まっています。

活動の経過と現在の状況
(1)活動の発足
 どんな時もつながり合える街の家族は、平成24年5月、5人の発起人で立ち上げました。働き・子育て世代の少人数・共働き化、シニア世代の独居化進行、新規転入者の増加など、頼れるつながりの希薄化が進む地域で、3.11の福島で避難生活のご家族に無料滞在の提供活動の最中に、青葉区奈良町の住宅地で「長く空家となっていた家を地域のために活かしたい」オーナーさんの志に触れることができました。普段のコラボ活動の話題「非常時・災害時に本当に頼れる地域づくりが必要だよね!」、自分たちでできることをやろう。私たちは、直ちに地域の有志に声をかけ、普段の生活の場で、皆ができる力を出し合って作り上あげる“どんな時もつながり合える「街の家族」”の企画を練りだし、ヨコハマ市民まち普請事業に提案しました。地域の住民の参加を呼びかけながら、平成24、25年の2年間にわたり、事業活動を具体化してきました。

(2)ヨコハマ市民まち普請事業への参加と街の家族の活動の立ち上げ
 まちの自治会や学校を軸にした伝統的な縦的のつながりの骨格に、世代間で共有できる横的なつながりの希薄化が止まりません。「街の家族」の活動は、伝統的なつながりにプラスして、全世代の元気な人々がそれぞれ力を出し合いながら、日常の生活に近い場に、一つ一つ顔見知りの横のつながりを作り足し込んでいき、結果としてすごしやすい安心・安全、子育てしやすい街づくりを進めてゆく活動です。“家”に来られた方へのアンケートやオーラルヒストリー調査、街の資源調査などを進めながら、街の家族の事業を①食事の作り合いと食事づくりが学べる「憩いの台所」、②子育てを支援する「街のリビングこども」、③庭造りや野菜栽培等を行う「憩いの庭」の三つの事業ベースを築きました。空家が日常の身近な横のつながりを醸成する活動拠点になりました。この間、神奈川県社会福祉協議会ともしび助成金、生活協働組合パルシステム神奈川ゆめコープ市民活動応援プログラム助成金を頂き、台所のオープンキッチン化、交流の場としての庭の整備や菜園の造成、通路や階段の手摺など、活動拠点の環境を整えてきました。
 これらの事業ベースの上に、利用者やまちの意見、要望を柔らかく取り込みながら、身近な生活圏の家族的な横のつながりを広げる活動「“こんにちわ!”街」を現在進めています。「人は人の中にいるのが好きだから」を皆で心に刻みながら。

(3)まちの元気化と街の家族の活動の継続に向けて
 私たちが進めるもう一つの活動は、街の元気エネルギーの源となる元気力を「街の家族」の活動を通して生み出し、まちの元気化と街の家族の活動を継続させる活動です。これには新しいまちのパワーの出現とその育成が必要ですが、このために「街の元気紡ぎ出し工房」活動を進めています。
 街のママさんはとても元気です。子育てしながら何かをしたい、始めたい、役に立ちたい、お金も得たい、仕事力を身につけたい、意欲満々です。このエネルギーを、子育てしながら身近な場所で気の知れた仲間と共に地域の元気に変え、これからの街の元気につなげています。街づくりの経験豊かな地域のエキスパートの傍で、子育てしながら仲間と自分たちの仕事づくり、イベント作り、情報・メディア事業づくりしながらスキルアップし、街の元気づくりを担う人・活動の生み出しを優先課題にして活動しています。

街の元気紡ぎだし工房について
 “住みよく、安全、子どもたちに良いまちをプレゼントしよう”を共通の思にして、地域の資源に目を向け、力を出し合い、みなで作り上げるまちの横のつながりづくり活動です。かつての右肩上がりの高度成長期は、一人一人が日々忙しく動き回り、単純な縦のつながりで十分、私たちは何も感じませんでした。しかし、成熟・安定、何もしなければ衰退のあるのみ今、生活の周りに空虚さ、さびしさが漂っています。これを変える何か、街を元気にする何かが必要です。
 街の家族では2年間の活動を通し「街の元気つむぎ出し工房」の活動を描き出し、まず出来るところから手をつけて活動を始めています。
○身近な具体的な工房活動から開始=ニット工房、リメーク工房、ミシン工房と手作品の販売、ネット販売
○ママコミビジネスの産み出し
○街の保存食、家庭食、伝統食を介した新たな街のつながりづくり活動
○街の家族情報ステーションの開設
○広報誌まちだよりの発行
○育てやすい、子どもの傍で働きやすい地域環境づくり活動の推進

まとめ
 まちのマイナス資源の空家が、多くのママさんの交流の場、自分企画の活動の場、シニアの憩いの場、まちの居間のような集いと交流の場所になりました。
 実行委員も当初の5名から、地域の方を中心に21名になり、利用者も子育て中のママさんを中心に60家族を超えました。また、“家”のイベント、地域のお祭り、助成金の交流会、区のコラボレーション企画への参加しながら30以上の団体とのつながりができました。元気なママさんたちのまちを元気にする活動“まちの元気紡ぎだし工房活動”が動き出しました。地域の人と人、活動と活動、自分の得意なこと、やりたいことを、みんなで布を織るように紡ぎ、子どもたちにいいまちのプレゼント作りをしていきます。空家であった場所を活動拠点にしながら地域の内外と交流を進め、日常の生活に寄り添える身近な場所で、まちづくりのエキスパートとママから元気なシニアパワーまで、みんなが同じ場所で一緒に進める街の家族の活動が、これからのまちの元気化の全体的な流れの中で、公共施設の果せる役割の補完的な役割が果たせることを願いながら活動しています。