「あしたのまち・くらしづくり2014」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

地域課題解決プロジェクト
岩手県盛岡市 永井地区まちづくりの会
1.概要
 私たちのまち永井地区は、岩手県盛岡市にあり、東北本線盛岡駅から南に二つ目の「岩手飯岡駅」を中心とした静かな地区です。
 永井地区は、昭和40年代から60年代にかけて田園地帯が市街地化した地区で、急速に人口が増加し、新旧の住民が混在するなか、様々な地域課題が発生した。
 上永井、中永井、下永井のそれぞれの町内会で運動会やお祭りといった各種の地域行事が行われてきたが、各自治会間の確執や自治会活動への新住民の参加が少ないなど、地域に共通する課題となっていた。
 都市計画マスタープラン「飯岡地域・まちづくりワークショップ」をきっかけに、平成18年2月に『自分たちの町を自分たちの手で、安心・安全で住み良いまちを創造すること』を目的に「永井地区まちづくりの会」が発足し、三つの自治会が垣根を越えて連携しながら、住民主体の視点で課題への取り組みを始めた。
 発足当初は、道路整備や信号機の増設などの課題要望が主で、行政頼みのまちづくりの活動が多かった。
 課題の解決を進める中で、NPO団体の参加と活動支援が進むと、住民主体による課題解決のための調査や交渉などを行うなど、地区の魅力となる地域資源を高めるべきとする意見も多く出されるようになり、自立的な活動が行われるようになった。
 会員構成は、上・中・下永井の3町内会役員と有志からなる任意団体で、会員数としては32名が登録されている。この他に、県・市議会議員、市立永井小学校長、同校PTA会長、子供育成会長、市立永井児童センター長、土地改良区役員、市都市計画課職員及びNPOがアドバイザーとして参加している。また、会員以外に特技・趣味を生かした準会員も加わるなど、奇抜なアイデアを有効に生かそうとしている。
 会の発足時より、月末に月例会を開き、活動報告や活動予定を確認している。また、課題解決のために講師を招いて勉強会を行うこともある。

2.まちづくり活動の状況
 平成18年度には、地区内の魅力と課題を明らかにするため、全住民を対象とし「住民アンケート」を実施している。
 平成19年度には、住民アンケート結果を参考に「お宝・課題問題発見ウォーキング」を行い、約100件のお宝・課題問題をまとめ、地区のお宝・課題問題を傾向別に大まかに分類し、所属町内会の枠を取り払って人選した「プロジェクトチーム」を編成し、それぞれの目標に向けた活動を行っている。
 また、岩手県の「元気なコミュニティ100選」に選定され、知事の訪問による「県政懇談会」が開催されている。
 平成20年度からは、市下水道施設管理課と協議し、地域内を流れる農業用水路の一部区間を住民が草刈り、清掃等の管理をする管理サポート活動団体(アドプト活動)に認定され活動している。また、市民活動推進課の公募型協働推進事業に選定され、「安全・安心な道づくりのためのワークショップ」により地域課題の改善策を検討し、住民による交通量調査の結果とともに関係機関への協力要請を行い、念願の「横断歩道」と「信号機」等の設置が行われた。
 平成21年度には、永井地区まちづくりの会を主体にNPOや市都市計画課職員からなる地域協議会が「農山漁村(ふるさと)地域力発掘支援モデル事業」(農水省)に認定され「水辺と花の里」「情報文化」「歴史・伝統文化」のテーマ毎のプロジェクトについて取り組みを行った。
 特に「永井ふるさとお宝マップ」は住民アンケートから採用されたもので、プロジェクトのお宝探しウォーキングをもとに作成され、全戸配布による情報発信と「お宝案内板」を設置した。現在、このお宝マップは永井小学校の4・5年生の授業教材として活用されている。
 高度情報化、少子高齢化が急速に変遷する社会を迎え、行政依存から住民が自ら汗を流し、希薄になりがちな住民間の連帯意識の向上をはかり、地域全体の各種連帯ネットワークを広げ『だれかが私たちのために何をしてくれるかではなく、私たちが地域のために何を残せるのか』を理念とし、地域の人たちが『住んでいてよかった』と思えるよう課題問題に継続して取り組み、小さな活動ではあるが地域に定着するよう次の世代にしっかり伝承していく。

3.プロジェクトチームによる活動
(1)景観づくり班
 平成22年度には、永井地区の景観まちづくり事業が岩手県公募事業に認定され、地区に残されている生垣を活かした「景観づくり」の調査を行った。調査結果は、「永井地区生垣位置現況図」として整理され、生垣と建物のバランスが素晴らしいたくさんの景観があることを地域に情報発信した。

(2)「水辺の里と花」班
 平成22年度に農業用水路鴨助堰の「草刈りとごみ清掃」による維持管理や鹿妻穴堰土地改良区とのアドプト協定事業として、「鴨助堰の清掃活動」と「河川愛護」の看板設置を行っている。また、平成23年度には全労災地域貢献助成事業の支援を受け、鴨助堰の護岸に「花の植栽」をするなど、継続的に活動を行っている。

(3)「歴史・伝統文化」班(永井地区さんさ踊り)
 地元に伝わる「伝統さんさ踊りの保存・継承」などの取り組み、指導者の調査を行った。その結果、以前にさんさ踊りは上・中・下永井それぞれで盛んに踊られていたが、現状、後継者がなくごく一部の地区で踊られているだけであることが分かった。何とかして伝統芸能として地域に保存するため、唯一さんさ踊りを知っている長老の方々の協力で、笛・太鼓の譜面起こしや踊りのDVD作りをしながら20回を超える練習会を行うことができた。
 練習の成果は、多賀神社例大祭宵宮、介護施設慰問、永井小学校全校集会、及び東日本大震災被災地などで披露するまでになった。小学生から80代までの幅広い年代コミュニケーション・絆が醸成され、やっと伝統さんさの伝承に微かな灯りが見え始めた。

(4)「せせらぎ隊」班
 小学生の夏休み子供会活動の一環として平成22年度に「地域探訪」、そして毎年環境アドバイザーの協力を受け、「水棲生物観察会」の実施と除草作業を行っている。

(5)公園づくり班
 平成21年度と平成22年度には、市公園みどり課と協働により、「グラウンドワークによる公園づくり」に取り組み、地域住民や子供会が企画段階から共同作業に加わり、子どもから大人まで憩いの場となる「にじ色ポンプ公園」と「かえる公園」を完成させた。また、平成23年度から24年度には、「高櫓児童公園」の整備を行った。
 公園の看板は、高校生自らデザインと作成を手掛けるなど、多くの皆さんのアイデア満載公園である。

(6)岩手飯岡駅を中心としたまちづくり
・岩手飯岡駅ロータリー班は、子供会や老人クラブなどの協力でチューリップや芝桜を植え、草取り、水やりなどの管理をし、駅利用者の一時の憩いの場となっている。
・キショウブ班は、お宝さがしの際、岩手飯岡駅路線沿いの堀で雑草の中にわずかなキショウブを見つけた。草取りや移植そして案内板も設置し、今では毎年6月にきれいな花で道行く人の目を楽しませている。
・平成24年度からは、JR岩手飯岡駅周辺に係る区画整理や道路事業などの整備も行われることになり、西側の広場や自由通路などの計画を地域ぐるみで検討を実施している。なお、財団法人区画整理促進機構が行う街なか再生助成事業にも採択され、地域へのアンケートやワークショップ、先進地駅周辺の見学会などを実施し、検討結果を報告書にまとめ駅を中心としたまちづくりの在り方を提言することとしている。
・平成24年には、永井小学校3年生と5・6年生の児童たちは、『あったらいいな、できたらいいな、つくってみたいこんな駅』をテーマに夢あふれる未来の「岩手飯岡駅」への希望を絵と作文で表現してくれた。

(7)広報班「まちづくり情報紙 ながい」
 「ながい」の文字デザインは、住民公募より選ばれたものである。
 会の活動の目的や様子、地区のまちづくりの情報をまとめた「まちづくり情報紙 ながい」は18回発行され、全戸(2800世帯)に配布しており、地区内の住民への情報提供を行い、地域におけるまちづくり活動に対する理解を深めている。