「あしたのまち・くらしづくり2014」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

地域で支え合い安心して暮らせるまちづくり
北海道深川市 納内地域づくり推進協議会
 北海道のほぼ中央部にある深川市は、北海道有数の米どころであるとともに、そばの生産量は全国第2位、花卉の生産も全道でもトップクラスの農業都市です。
 深川市中心部より東側に位置し、旭川市に隣接している納内町は、明治28年から29年にかけて入植した200戸、1102人の屯田兵とその家族の開拓により農業を中心とした町として発展し、昭和36年には人口6177人、1099世帯を数えるまでとなりましたが、その後は、国策による地元企業の合理化や離農などにより人口減少と高齢化が進み、平成26年6月現在では人口1877人、998世帯までに減るとともに、65歳以上の人口(高齢化)も45%に達するようになりました。
 屯田開拓の子孫たちが中心となって発展してきた歴史的背景をもつ納内町では、地域住民同士の強い連帯感と結束力があり、昭和46年には当時の自治省から全道でただ1か所のコミュニティづくりのモデル地区の指定を受け、納内地域の人々がお互いに理解を深めながら「美しく豊かな心をつくるまち」を目指して設立した納内町コミュニティ審議会も平成23年11月には創立40周年を迎えるなど、地域住民がお互いに理解を深めながらコミュニティ活動を長年、継続してきました。
 納内町では、将来の高齢化社会を見据えた生活環境整備を図るため、平成9年に納内地区ネットワーク推進委員会を立ち上げ、高齢者が安心して暮らし、災害に備えた街づくりに取組んで来ました。平成17年12月に「だれもが住み慣れた地域で、安心して暮らしつづけるために」をテーマに「納内地区地域福祉計画」を策定し、その推進組織として、平成18年4月に、様々な組織で活動している団体をはじめ、民生児童委員や町内会連合会など地域の活動団体32団体で組織する「納内地域づくり推進協議会」を設立しました。
 協議会では、「交流ふれあい部会」、「助け合い部会」、「安心・安全部会」の三つの部会で構成し、それぞれの部会の所属団体が連携しながら、子どもからお年寄りまで地域で互いに支え・助け合いながら、交流・ふれあいの輪を広げ、安心して暮らせるまちづくりのために、地域福祉計画に基づき各種事業に取り組んでいるところです。
 交流ふれあい部会としては、交流ふれあいの輪を広げる場として、平成17年度から、地域の芝居小屋を活用した「子ども野外映画会」、平成21年度から、深川市民が演じる深川浪漫劇団による人情芝居「納内ふるさと劇場」を毎年9月に開催される納内神社祭に合わせて共に実施しており、それぞれに子どもから高齢者まで世代を超えた住民100~150人が集まり、映画や芝居を一緒に楽しむことで交流を深めています。「子ども野外映画会」については、上映作品を子どもたち自身が選び、運営はその子どもたちの親で構成する子供会育成者連合会が行うなど、子どもの自主性や感性を養う場として有効な取り組みとなっています。
 また、「納内ふるさと劇場」については、人情芝居を楽しみにしている高齢者が多いこと、劇団員として演じる地元住民もいることなどから、生きがいづくりという面でも有意義な取り組みとなっています。
 助け合い部会としては、地域での支え・助け合いとして、納内地域にある特別養護老人ホーム清祥園が実施しているデイサービス利用者のための旭山動物園見学(毎年6月、全5回)には車椅子の補助、介添えをするボランティアが延べ60人必要となることから、協議会では「助け合い部会」を構成する各団体に呼びかけてボランティアを募集、例年、清祥園の職員と一緒に車椅子ボランティアに参加協力しています。
 老人ホームの職員だけでは実施が難しい事業のため、ボランティア協力することで職員からは感謝され、参加者からは大変喜ばれており、地域に住む施設利用者との交流を深める意味でも有意義な活動となっています。
 安心・安全部会としては、現在、国では認知症サポーター100万人キャラバンを推進していますが、納内町では深川市認知症ケア研究会とともに、認知症になっても住み馴れた地域で尊厳ある生活を営み、安心して暮らし続けられるようにと、声の掛け方や接し方を実際に体験する徘徊摸擬訓練を認知症サポーター養成講座とも連動させて平成24年度に実施しました。平成25年度も引き続き実施して、徐々に認知症に対する理解が地域に深まりつつあることから、今後も継続実施することとし、平成26年度は8月31日実施予定で準備を進めているところです。
 また、納内地域全体の活性化と交流の場として、例年8月、町内会連合会、商工会議所納内支所、きたそらち農協納内支所、神竜土地改良区等の組織を中心に、子どもから高齢者までが参加しやすい盆踊りや景品入り餅まき、地元農産物の直売、地元商店街によるビアガーデンなどを行う「納内ふれあい夏祭り」を開催し、1000人以上の地域住民が集まり世代間の交流を図っている。地域のイベントとして幅広く定着しており、家族連れから単身者、地域の福祉施設に入所・通所している方など多くの住民が楽しみにしています。
 65歳以上の高齢者を対象とした交流事業として、平成4年から22年間、年6回、高齢者を対象に交流会を開催してきましたが、さらに、平成25年からは毎月1回、「ふれあいサロン」として開催しており、野外レクリエーションや健康体操、保健師による健康相談、宅配弁当、ソバ打ち、災害防止等の講話など高齢者が気軽に楽しめる内容の交流会を実施しており、家に閉じこもりがちな高齢者の外出・交流を促す事業として大変、有効に機能しています。その他に、昨年まで実施しておりました、パークゴルフによる子どもと高齢者の世代間の交流を図る「ふれあいパークゴルフの集い」、昔遊びを通して子どもと高齢者が楽しむことで昔遊びの伝承と世代間交流を図る「昔遊び交流会」、民謡や大正琴など地域のサークル活動を発表してもらうことで文化継承と交流を図る「文化サークル発表会」などの交流事業も実施してきましたが、高齢化の影響により現在は実施しておらず、それに替わる新たな交流事業を実施したいと考えています。
 安心して暮らせるまちづくりとして、平成18年に消火訓練や避難訓練を体験する防災教室、平成19年に子どもの安全、食の安全、命の安全を考える安全教室を開催するとともに、平成22年9月には、避難所、高齢者や身体障がい者がいる要援護者世帯等を記載した「納内地域防災マップ」を作成、各町内会や消防署、警察などの関係機関に配付するとともに、平成23年8月には北海道旭川方面深川警察署や深川市社会福祉協議会の指導をいただきながら町内会長や民生委員など関係者25人を集め、防災マップを利用した災害図上訓練(DIG)を実施しました。地域防災マップの作成とマップを利用した災害図上訓練は他の町内会の模範となり、納内町の防災マップを参考にしながら防災への取り組みを始める町内会も出てきており、防災意識の向上を市内に波及させた先進性のある取り組みとなりました。
 さらに、平成25年2月には、火災や行方不明などの緊急時に被災者の家族と早急に連絡が取れるよう、地域住民の理解と各町内会長の協力により「緊急情報連絡調書」を独自に作成、合わせて「納内地域防災マップ」の更新も行いました。
 「緊急情報連絡調書」については、その後も各町内会長と連携を取りながら随時、更新をしており、高齢者や生活弱者の見守り活動に有効利用されています。
 「緊急情報連絡調書」の必要性は高いとの認識は以前からありましたが、個人情報保護等の関係などで、なかなか行政では取り組みが難しい中、納内町では市内でいち早く、住民組織が主体となって独自に作成したもので、他の町内会からの関心も高く、納内町を見習って「緊急情報連絡調書」を作成しようとする町内会も増えています。
 また、平成22年1月に納内地域の木造2階建ての民家が電気火災で全焼するなど、電気器具の不具合が原因とされる火災の件数が多いことから、平成23年11月15日を「納内電気の日」として独自に制定、電気器具に関する注意事項と自主点検を呼びかけるチラシを作成し、各家庭の見える場所に張ってもらおうと納内地域全域に毎年配布している。注意を呼びかけることにより、日頃からの火災に対する防災意識を高めることに寄与しています。
 現在の納内町の課題として、人口減少や離農等の影響により空き家が増加していること、住み慣れた納内で住み続けたいが、通院・買い物への交通不便や除雪が大変なために転出せざるを得ない高齢者がいること、高齢化率も増加して限界集落に近づいていること、などがあることから、協議会では納内地域の抱える課題対策に向け、平成25年3月、北海道が市町村や住民による集落対策の取り組みを促進するために実施する集落対策に関するモデル事業に応募、同年6月に北海道からモデル地域に採択されたのを受け、協議会組織の中から「納内地域集落対策協議会」を組織しました。
 納内地域集落対策協議会では、平成25年度は納内地域の状況分析、課題整理、課題対策に向けた具体的な取り組みの実施について取り進め、今後は、納内地域づくり推進協議会と連携して、交流施設を整備して、子どもからお年寄りまでが気軽に立ち寄れるサロンの運営と世代間交流事業、冬期集注、移住体験などの具体的な取り組みを実施していく予定でおり、これまで取り組んできた事業の一層の展開と新たな取り組みの発展性が期待される状況にあります。
 現在、納内地域集落対策協議会で取り組み・検討を予定しているものは次のとおりですが、その内の統合廃止後の中学校の跡地利用、診療所問題については、深川市と連携した活動により、中学校跡地へのクラーク記念国際高等学校野球部の誘致が実現するなど、状況が好転しつつあり、地域の将来にとって明るい兆しが見えはじめています。
 また、住民交流の拠点づくりに関しては、総務省の交付金事業を活用して駅前通りに位置する地元商工会館を借用、会議室等の一部を改修して高齢者から幼児まで地域住民が気軽に交流できる施設(名称:サロン「なごみ」)を本年9月3日にオープンしました。
 地元ボランティアグループの協力をいただきながら、現在、週3日(月・水・金)の午前10時から午後2時までの開店としていますが、昼時には多くの人が来店し、地域の交流拠点として徐々に定着しつつあります。

☆平成26年度の取り組み
・空き店舗等を活用した住民交流の拠点づくり
・市街地の空き家等をリフォームし、冬期集住や移住体験などの住み替え体験
・納内中学校跡地の有効活用
・地域イベントの活性化
☆平成26年度以降も継続検討する取り組み
・離農高齢者世帯の市街地へ集住化
・診療所改築と専従医師の確保
・買い物の利便性の向上
・活気あふれる魅力あるまちづくり
・農業者と地域住民が一体となった6次産業の推進
・農業経営の安定化
・要支援世帯の支援
・クラーク記念国際高等学校との連携による地域づくり