「あしたのまち・くらしづくり2013」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

加古川流域水質浄化プロジェクトとエコ炭銀行
兵庫県加古川市 リバークリーン・エコ炭銀行
 私たちの活動は、いまから10年前、加古川市尾上町養田という、約400世帯のまちの区画整理事業がきっかけになってはじまりました。
 このまちの中心を流れる養田川は、加古川水系で最も河口近くに位置し、区画整理事業にともなって、付け替えられる予定になっていました。
 ところが、トライやるウィークの一環で、地元の中学生が川の調査をしたところ、住宅や工場などに囲まれた市街地を縫うように流れながらも、たくさんの生き物が生息していることが判明します。それをきっかけに、専門家や行政を巻き込んで、環境に配慮した川づくりを考えてきました。
 やがて、この取り組みが、行政までも動かします。コンクリート張りの新河川については、川底を自然のままに残した工法に変更され、廃川となる旧河川については、その一部が公園やせせらぎとして再生・整備されることになりました。
 「リバークリーン・エコ炭銀行」は、2003年3月に、この養田川を拠点にして、炭を使って河川環境の浄化に取り組む町内会の有志のグループとして出発しました。

 加古川流域でも、竹やぶが年々広がり、その処理に困っています。
 森林や竹藪で間伐してきた材料を炭に転換し、それを河川に戻すことで、水質浄化に役立てるというのが、この活動の基本的な考え方です。そのなかで大きな役割を果たすのが炭化装置です。山奥で炭を焼くのではなく、まちのなかでも作業ができるというのがポイントです。
 身近なところで、それぞれの都合に応じて活動ができ、自分で焼くことができない人でも、間伐材や竹を運んで預ければ、その量に応じて炭が還元されます。活動全体に関わらなくても、それぞれにできる関わり方で、河川の水質浄化や、森林・里山の再生に役立つことができる、その気軽さが最大の特徴です。

 2004年5月には、加西市内の竹藪を利用し、炭づくりのことを学習する拠点(研修所)を整備、2005年9月には、愛知万博にも出展するなど、活動の輪もどんどんと広がっています。
 加古川流域を越えて、淡路島、三方五湖(福井)との交流もはじまりました。
 2008年には、神戸で開催されたG8環境大臣会合の関連イベント「NGO・NPOの交流の広場」で展示・発表し、それが縁になり、「eco JAPAN cup 2008」市民が創る環境のまち“元気大賞2008”特別賞の受賞など、全国的にも高い評価をいただきました。

 ここ数年は、いかに活動の輪を広げていくかということに力をいれています。
 国宝鶴林寺での竹林整備ボランティア、一級河川加古川の柳の木を使ったヒラタケづくりなど、たいへんな作業でも、少しでも楽しんで参加できるように企画していくことで、多くの人たちを巻き込み、加古川流域の自然に関心を持ってもらうきっかけになればと考えて取り組んでいます。
 さらに、このたびの東日本大震災に際しては、加古川社会福祉協議会とも連携し、宮城県の南三陸町への支援に入りました。
 私たちにできることで取り組もうと、津波で被害を受けた家屋に除湿のための炭を提供することにし、何軒かの家屋で、床下に炭を敷き詰める作業を行ないました。
 特に、支援活動が一過性の取り組みに終わっては意味がないと考え、被災地においても炭がつくれるようにと、加古川市内の企業の協力も得て、南三陸町に炭化装置を寄贈・設置し、メンバーが出向いての炭づくりの講習会なども行ないました。

 私たち大人が活動できる時間は限られています。
 兵庫県では、小学生のグリーンスクール(3年生)、自然学校(5年生)、中学生のトライやるウィーク(2年生)と、環境学習に積極的に取り組んでいますが、それら行政の取り組みにも協力し、加古川流域の水質浄化をはじめ、地域をあげて、次世代に残していけるまちづくりに取り組んでいます。

 地域のなかで、大人も子どもも一緒になって、地域の環境をよくする活動に取り組むことで、世代がかわっても、いつまでも、いまの環境が引き継がれるまちづくりをしていきたいと思っています。