「あしたのまち・くらしづくり2013」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

世界自然遺産白神山地の麓で知恵とアイデアを出して町民が明るく元気になる取り組み
秋田県藤里町 NPO法人ふじさと元気塾
 NPO法人ふじさと元気塾は2010年10月1日に創設して現在正会員が17人、賛助会員が約50人の団体で、藤里町民が明るく元気に生活できるように地域の抱える課題を解決するために前向きにプラス思考で取り組んでいる。30代の優秀な若手正会員と首都圏で仕事をして退職後に戻ってきた女性たちも加わり、柔軟な発想で活発に取り組んでいる。町民に認知してもらうために総会以外に賛助会員などを対象にした活動報告会を行なって意見交換をして、事業をより一層軌道に乗せるために組織運営や仕組みづくりについて秋田県立大学でアグリビジネスを専門とする生物資源科学部の荒樋豊教授に指導助言をいただいている。
 世界自然遺産白神山地の麓の藤里町の中山間地横倉地区にある貴重な棚田を守り続けている古老の男性に協力して草刈りや稲刈り作業を手伝っている。ゲンジボタルが乱舞する町内の粕毛地区の環境保全活動を進め、ホタルマップを作成して訪れる人たちを案内している。日本テレビのダーツの旅のスタッフも案内した。清流の藤琴川の中通地区の河川敷の景観保全活動のために草刈りを行なっている。1人でも多くの観光客が訪れ満足してもらうために町内の観光資源である棚田、ホタルの棲息地、清流や里山などの環境と景観の保全活動を積極的に行なっている。さらに会員3人が県の結婚サポーターとして町の少子化対策の婚活イベント事業を町と協働で推進している。
 活動資金は、会費、賛助会費、寄付金が中心で、2011年1月に民間のスギッチファンド助成(30万円)、11年4月に県の森づくり県民提案事業(約31万円)、12年にIM実地指導事業、11年から町の婚活イベント事業、11年から藤琴川の河川敷の草刈り事業を委託しているが、さらに活動を充実させる資金を得るために2011年度トヨタ財団地域社会プログラム助成金に「白神山地・男鹿半島・湘南藤沢協働チーム」として応募して、12年と13年の2年間で400万円贈呈してもらうことができた。2013年3月にNPO法人ふじさと元気塾と鵠沼海岸商店街振興組合が事前に綿密な打ち合わせを行ない、2012年4月からふじさと元気塾が主体になって活動をスタートしている。なぜ白神山地と男鹿半島と湘南藤沢なのかというと、藤里町出身の理事長と男鹿市出身で活動を一緒に行なっている副代表が30年程藤沢市で教員をしていたという縁である。
 藤里町には、豊かな森林を活用する木工づくりの達人、地域の活性化に取り組む生産者や、Uターン、Iターンで積極的に山野草、山菜、野菜などを生かした活動をしている女性がいる。NPO法人としては山菜、キノコ採り、ブナ、杉、広葉樹を使った箸、携帯ストラップ、白神山地入山記念プレートなどの木工品づくり、染め物、ドライフラワーなど都会受けしそうな作品づくり、古着を活用した小物づくり、手料理やお菓子づくり、地元の大豆を使った味噌づくり、アユの燻製づくり以外にも白神山地のきれいな水と空気と利用して厳選されたニンニクで付加価値のあるにんにく味噌の加工品など収益も考え知恵を出し合って取り組んでいる。町民を元気にするためのヒトとモノは十分に揃っている。
 トヨタ財団の助成プロジェクトで交流している藤沢市は、湘南の人気スポット湘南海岸と江の島があり大企業も多く、人口も増え続けている日本でも有数の活気のある都市である。その中でも鵠沼海岸地区は、政治家、画家、音楽家、会社の社長、大学教授など有名人や文化人が住んでいる高級住宅街である、鵠沼海岸商店街と、過疎化と人口減少の進む藤里町を結びつけ交流を深めて、藤里町民が元気になるような取り組みを行なっている。
 プロジェクトでは、2012年度6月22~24日の3日間のオープニングイベントを行ない、藤里町の山菜、ワサビ、味噌、豆腐、漬物、フォゲットの燻製とレトルトカレー、ブラックベリーのジャム、そば粉で作ったお菓子、藤里町開発公社の白神山水と白神山水のかき氷などを販売して多くのお客さんに訪れてもらった、8月16、17日には、鵠沼海岸商店街の「夏祭り」のイベントに参加して、味噌たんぽ、ブラックベリーのアイス、ところてん、白神山水などを販売した。男鹿からは男鹿焼きそばばかりでなく、なまはげが登場して多くの子ども連れの家族に大評判で会場を大変盛り上げた。10月26、27日には、「秋穫祭」イベントで新米のあきたこまち、新米のきりたんぽ鍋、旬のキノコ汁、クルミ、山菜の加工品などと、本場の横手市山内のグランプリのいぶりがっこ、田沢湖の地ビール、秋田の美味しい地酒などを販売した、2013年2月3日には秋田の小正月行事「あめっこ市、もちっこ市」イベントを行ない、藤里町のきりたんぽ鍋と川ガニ汁、大館市のあめっこ、テレビで話題になり急激に広まった北秋田市のバター餅を中心に販売すると、評判を聞きつけて多くの人たちが訪れ行列ができた。4回のイベントを通して秋田県の白神山地と藤里町をはじめ男鹿半島、県内の特産品、名物も紹介でき多くの藤沢市民に認知されるようになった。藤沢市では世界自然遺産白神山地を訪れたいと思っている人が想像以上に多く、イベントの際のPRを契機に白神山地を訪れるようになった。波及効果は藤沢市以外にも広がった。一連の活動やふじさと元気塾の事業や取り組みに関しては、秋田さきがけ、北羽新報、毎日新聞、朝日新聞湘南版をはじめ藤沢市の広報誌「広報ふじさわ」(2012年7月10日)、リビング湘南(2012年9月22日など)、秋田県地域活力創造課発行「んだすな」(2012年11月10日)、一般財団法人地域活性化センターの「地域づくり」(2012年9月号)、かがり火(2013年4月150号)などでも紹介された。
 2012年は年間4回のイベントが中心だったので、2013年6月からは鵠沼海岸商店街にアンテナショップを開設した。商品数は十分とは言えないが、白神山水をはじめ懐かしい味や安心して食べることができる食材を提供することで、アンテナショップは単なるアンテナショップではなく、小さな農山村に勇気と誇りを与える存在になっている。町民がやる気を出して付加価値のあるよりよいものをつくるようになれば、多くの消費者の期待に応えることができると思っている。イベントの回数を減らしてもアンテナショップで町の山菜、キノコ、漬物、味噌、豆腐、そば粉の缶詰(そばがき用)、伝説のさぶろうドーナツ、食品加工品や隣の能代市の老舗の桧山納豆などを販売することが大事だ。交流人口を増やすこともねらい、ふじさと元気塾が企画して鵠沼海岸商店街、藤沢市観光協会、江ノ電関係者、藤沢市民を対象にしたモニターツアーを10月中旬に実施する。将来的には江ノ電バスの白神山地と男鹿半島のツアーや定期運行につなげることができればと考えている。さらに藤沢市との絆をさらに深めるため、町の空き家、農家民宿、集落のお年寄りが運営している宿泊施設を活用してのんびり1週間と言わず10日間自炊もできるような滞在モデルを検討している。秋田県の小さな農山村が活性化して元気になるための方策を若い女性にも会員に加わってもらいアイデアを出して取り組んでいきたい。
 2013年10月27日にはNPO法人ふじさと元気塾と鵠沼海岸商店街振興組合が全国的にもほとんど例のない画期的な民と民の災害時の協力に関する協定を藤沢市長の立会いのもとで締結した。東日本大震災の災害を受けて災害時にはお互いに助け合わなければという気運が盛り上がってきたので、災害時には瞬時に救援物資を提供できるような体制を構築して先進的な民間同士の広域連携モデルになるように取り組んでいる。
 藤里町では過疎化、人口減少、少子化、高齢化が進んでいるが、ふじさと元気塾は元気なお年寄りに積極的に活動に参加してもらい、趣味感覚で取り組める山菜やキノコ採りをはじめ、特技を生かすことができる活動を通して少しでも収入を得ることができるように考えている。少子化と人口減少を食い止めるように町と協働で街コンをはじめ独身男女が集う婚活イベント事業も行なっている。
 2013年2月21日には、ふじさと元気塾と町の7地区の活動推進協議会等が主催で町が共催して「藤里町の将来を考える」シンポジウムを開催した。県内のNPO「アート夢ネット・あきた」事務局長大和田しずえさんの基調講演、秋田県立大学荒樋豊教授がコーディネーターをして社協の事務局長、商工会の理事、三種町のNPO法人一里塚理事長、男鹿焼きそばを広める会副会長、ふじさと元気塾理事長と木工品事業担当者などがパネリストになって行なわれ、町内外から参加してもらい町の未来について真剣に考え話し合うことができた。秋田さきがけ、北羽新報が取材を受け町民に認知してもらえるようになった。
 それ以外にもIM(インキュベーション・マネジャー)の資格を有する理事長が、NPO法人あきたパートナーシップの委託を受けて県北地区のNPO法人の運営に関して指導助言をして支援している。NPO法人創設3年目にして協賛企業の協力を得てPR用のパンフレットを作成でき、秋田県で3番目になるが、県が審査する認定NPO法人としては初めての認定NPO法人をめざして申請をした。民間企業の株式会社アルビオンと協働事業として町の協力を得て白神牛や羊を放牧している大野岱地区にわずかに残るブナ林の里山を保全して、訪れる人たちに身近にある貴重なブナをはじめ広葉樹などを観察してもらい、ブナの葉や枝などで商品開発をして収益の一部を社会貢献として提供してもらう。
 アイデアを生かした活動を通して町民が明るく元気になったと実感してもらえるように会員ならびに賛助会員を中心に多くの町民を巻き込んでプラス思考で前向きに地域の課題を解決して活性化するように取り組んでいる。