「あしたのまち・くらしづくり2013」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 主催者賞

釈迦内サンフラワープロジェクト―すべては未来を担う子どもたちのために―
秋田県大館市 釈迦内SP実行委員会
1.活動の目的
 我がふるさと大館市は秋田県の北部に位置し人口8万人弱で、釈迦内地区はさらにその北部に位置し人口8000人弱現在(世帯数4000弱世帯)の地域である。
 日本の地方は総じて高齢化・少子化・経済の空洞化が課題となっており、このままでは、地域から若者が消え、学校がなくなり、地域そのものの存在が危ぶまれる状態に陥ってしまう。我が秋田県はその課題を最も抱えている県であるが、有効な対策がなかなか見いだせないのが現状である。
 一方、とどまることなく変化する社会の中で、子どもたちが希望を持って、自立的に自分の未来を切り開いて生きていくためには、変化を恐れず、変化に対応していく力と態度を育てることが不可欠である。そのためには、将来の社会人としての基盤作りとしてのいわゆる「キャリア教育」の推進が強く求められる。
 これらのことを踏まえ、地域の活性化と学校におけるキャリア教育の推進を目的に、釈迦内地区では釈迦内まちづくり協議会内に「釈迦内サンフラワープロジェクト(釈迦内SP)」を設立し、学校と家庭・地域が一体となって、自分たちの地域は自分たちで守り発展させるという強い決意のもと、釈迦内地区で古くから大切にされてきた言葉「向陽(ひまわり)」を活用した6次産業化に取り組むことにした。そして経済産業省が提唱している「社会人基礎力」(前に踏み出す力・考え抜く力・チームで働く力)の向上を目指し、「顔の見えるお付き合い」をキーワードに、より一層地域の絆を深めながら、学校をど真ん中に据えた地域活性化を進め、未来を担う子どもたちの健全育成に寄与したい。合い言葉は、「ALL FOR CHILDREN〜すべては未来を担う子どもたちのために〜」である。

2.活動の主な特徴
(1)発足までの経緯
 釈迦内地区では古くから「向陽」(ひまわりのように明るくたくましく成長しよう)という言葉を大切にしてきており、釈迦内小学校も明治7年「向陽学校」として創立されたが、現在は幼稚園の名前で残っているのみである。一方、「地域の元気の源となる学校」を経営のキーワードにしている釈迦内小学校が、平成16年度に金融知力普及協会の協力を得て、全国に先駆けていち早く「キャリア教育」を導入し、郷土料理のきりたんぽをキーワードに、生産から販売までの活動を行なってきた。また、阪神淡路大震災での「はるかのひまわり」とつながり、「ひまわりいっぱい運動」も行なってきた。
 このような経緯から、釈迦内の地域に「向陽」の精神性を復活させ、ひまわりそのもので地域の活性化を図ろうと、釈迦内小学校から釈迦内まちづくり協議会に呼びかけ「釈迦内SP」を設立し、「大館地域応援プラン」から補助金(3年間)をいただき、平成22年度は準備段階として1/2成人式を迎える小学校4年生が中心になって休耕畑を借りて耕起しひまわりを育て、ひまわり油を50本製造した。この活動が東北経済産業局主催「地域の魅力発信アイディアコンテスト」の小中学校部門で大賞を受賞し、平成23年度からの本格実施に弾みがついた。
(2)地域活性化のための四つの視点
 学校をど真ん中に据えた地域活性化のために、縦軸に社会力と人間力、横軸に創造力と協働力を位置づけ、4視点の方面から活動を展開している。一つ目は人間力と協働力の向上のための「キャリア教育」推進、二つ目は人間力と創造力の向上のための「地域との連携」推進、三つ目は社会力と協働力の向上のための「企業協力(CSR)」推進、四つ目は社会力と創造力の向上のための「商品開発・販売」推進である。これら4視点を推進しながら、「ALL FOR CHILDREN」の合い言葉のもと地域活性化に挑んでいる。
@人間力と協働力の向上のための「キャリア教育」推進
 釈迦内小学校では、「向陽ぐんぐんプロジェクト」という名称で、主に生活科や総合的な学習の時間を活用して釈迦内SPの活動に参画している。地域の方々とともに、地域からお借りした耕作放棄地への牛糞まきから種まき、除草、収穫、種取り、ひまわり油の販売までの6次産業化に取り組んでいる。(種からひまわり油を絞る工程は業者に委託している)販売については、子どもたちが中心となって行なう地元の産業祭や公民館祭、スーパーマーケットでのイベント販売のほか、一般のお店にも置かせていただいている。さらにオリジナルラベル作成のための学習や売れ筋の瓶のリサーチなどの活動も取り入れ、幅広い「キャリア教育」に取り組んでいる。
 また、幼稚園・第二中学校も敷地内の土地を活用し、小学校と同様の活動に取り組んでいる。幼稚園には5年生が出かけ、一緒に種植えを行なった。保育園児は1年生と一緒に種植えを行なっている。
 このように異校種との連携も積極的に行なっているが、そのほか「夏休みに親子でひまわり畑を訪れて写真を撮ろう」のイベントの審査に地元高校写真部が協力し、1枚1枚の写真にコメントを寄せてくれている。また、地元の秋田職業能力開発短期大学校では、手作業の種取りを能率化するために、生徒が種取りマシーンを開発してくれた。このように、互いにキャリア教育の一環として「GIVE & GIVE」の関係で結びつき、子どもたちの「社会人基礎力」の向上に努めている。
 釈迦内小学校の「向陽ぐんぐんプロジェクト」はひまわり油の6次産業化だけでなくさくらっ子農園での実践的食育にも力を入れ、その総仕上げとして11月に全校縦割り班で郷土料理の「だまこ鍋」を作っており、だし取り、野菜切りから全部子どもたちの手で行なっている。食材の米・ネギなどは基本的に自分たちで作ったもので、ダシを取る比内地鶏も飼育している。その料理の一品として、野菜サラダ用のひまわり油を使ったドレッシングを作っており、その日がひまわり油完成第1号として食している。
 ひまわり油の収益金から経費を差し引いた分は、釈迦内SP設立当時から実施している6年生の4泊5日(うち3泊がお寺泊と民泊)の長期宿泊体感学習(北海道木古内町・函館市、おもに漁業・酪農体験、地元の木古内小学校や子ども会との交流)の費用の一部(約40万円)に活用し、一層自立心を培うようにしている。
A人間力と創造力の向上のための「地域との連携」推進
 平成22年度から地域の皆さんに呼びかけて、休耕田畑の借用や自分の田畑でのヒマワリ栽培をする方の募集を行ない、昨年度から延べ1.5ヘクタール以上の土地を確保することができた。土地の確保には市の行政も全面的に協力した。さらに昨年度から休耕畑での栽培に加え、多くの人に呼びかける種入りパンフレットを子どもが作成し配布して、「釈迦内一家庭一ひまわり運動」を展開し、どの家庭にもどの道ばたにもヒマワリが咲いている「ひまわり(向陽)の街釈迦内」づくりを目指した。その結果、地域のあちらこちらにひまわりが目につくようになったり、他地域にも協力者が増え市全体に広がってきており、本運動が着実に進んでいることを実感している。
 このように、婦人会の皆さんをはじめとする種まき、除草、種取りの協力者を始め、上記の様々な方々を「ひまわりサポーター」と呼び、活動を盛り上げていただいており、子どもたちから一人一人に感謝状をお渡しして、「顔の見えるおつきあい」を展開している。4年生は福祉の心を養うために特養老人ホームの畑に植え、入居者との交流を行なっており、常に学校教育を強く意識した取組を心がけている。
 地域を一層盛り上げようと、「釈迦内向陽(ひまわり)音頭」を作成した。地元の女性歌手と子どもたちの作った詞へ専門家に曲をつけてもらい、小学生で「ひまわり合唱団」を結成しCDを作成した。それに向陽幼稚園の先生に振り付けをしてもらい、学校や地区の運動会や催し物で踊っている。
 昨年度から、県内外にも釈迦内SPと連携したサンフラワープロジェクトが発足し、それぞれ地域活性化に取り組んでいる。そこで、将来へ向けての「友情のネットワークづくり」を目的に、県内のひまわりやそばなど核にして地域とともに活動している小学校5校の代表と関係者の参加の下、釈迦内小学校で実践発表とボランティア民泊・きりたんぽ作りをセットにした1泊2日の「ひまわりサミット」を開催した。今年度も開催予定である。そのほか、島根県浜田市のツーリズム協議会、神戸のNPO団体、関東一円で展開している学習塾などと幅広い連携が進んでいる。
B社会力と協働力の向上のための「企業協力(CSR)」推進
 地元企業が「CSRとして、釈迦内SPと連携して何ができるか」を模索してくださり、様々な連携が図られている。その一端を紹介する。
 十分成長しないひまわりを地元の花屋さんが買い取ってくれ、観賞用として販売してくれた。代金はその場で子どもに渡してくれた。
 ANAのシンボルマークがひまわり(お客様は太陽である。従業員は常にひまわりのようにお客様の方を向いて接客しなさいという意味)ということから、ANAが乗り入れている大館能代空港と連携し、空港の駐車場近くに2メートル×100メートルの畑を造成して、釈迦内小学校4年生と空港職員が協力してひまわりを植栽した。お盆の頃に満開になり、帰省客や観光客に大変喜ばれた。秋に再び連携して収穫した。
 釈迦内郵便局を含めた近隣の郵便局が、種の入った「釈迦内一家庭一ひまわり運動」パンフレットを窓口においてくださったり、種植え・収穫などに積極的に協力してくれた。昨年度からお歳暮用の「ゆうパック」販売も実施している。
 秋田銀行の行員の皆さん約40名が、休日を利用して種取り作業に参加してくれた。また、窓口で釈迦内SPの紹介DVDを流したり、種の入った「釈迦内一家庭一ひまわり運動」パンフレットをおいてくださった。一方北都銀行では、活動の紹介展示会を催してくれた。
 一連の活動の中で油を絞るところだけ子どもたちが体験できない課題に対して、NPO法人あきた菜の花ネットワークがハンディタイプの搾り器を貸して下さり、体験することができた。
 DOWA産業株式会社が、鉱山の影響で地盤沈下し現在ほぼ収まった土地を無料提供してくれた。(東京ドーム約10個分)その中から選択し、景観としてのひまわり畑やひまわりロードをつくっている。
 店舗の前にひまわりを植え、景観として貢献してくださった釈迦内地区の企業がある。
C社会力と創造力の向上のための「商品開発・販売」推進
 子どもたちのイベント販売のほか、地元スーパーマーケットで常時販売させていただいている。また、地元スーパーマーケットでのイベント販売の時は、総菜料理長自ら季節にあったひまわり油の試食料理を作ってくださり、販売に大きく寄与している。また、販売先は秋田市や首都圏にも広がり、釈迦内SPの活動理念のアピールする機会が増えることを大いに期待している。さらに、県内各地での販売について、県企画振興部や市産業部が全面的に協力してくれ、大館市観光プラザや県内地域振興局全売店での販売を行なっている。
 ひまわり油を絞ってくれる業者「エコサカ」に油の絞りかすをペレット肥料に加工してもらい、これも販売することができた。畑に残った茎等はすき込むと自然に肥料になることとあわせて、循環型農法の学習にもつながっている。
 地元ホテルにひまわり油を使ったレストランメニューを開発してもらい、市長や教育長を招いて会員の会食会を実施したが、大変好評であった。今後、本格的にホテルのスペシャルメニューとしての採用を検討中である。
 釈迦内婦人会がひまわりをイメージしたアイス(秋田特産「ババヘラアイス」の味を改良した物)を開発し、本活動や大館市のPRを兼ねながらイベント会場やJR大館駅で販売している。収益金の一部は、釈迦内小学校の教育活動費に充当されている。
 大館北秋田養蜂組合の協力を得てひまわり畑に採蜜箱を置き、ひまわりからどれだけ蜂蜜が採れるか行なったところ、アカシア・栗・ひまわりの混合蜂蜜が5.4リットル採れ、今回はスイーツに加工して試験販売し好評を博したが、釈迦内小学校では秋から冬にかけての農作物としてニンニクを栽培しており、今年度キャリア教育として「ニンニクの蜂蜜漬け」や「ニンニクのひまわり漬け」をつくる予定である。
 今年の新商品として、ひまわりの種8割、麦2割の割合でブレンドした「ひまわり茶」を地元のお茶販売業者と連携開発し、販売を開始した。ほのかな甘みのあるお茶で好評である。

3.活動の成果
 地域は「学校を元気にする地域」を目指し、学校は「地域を元気にする学校」を目指し、互いに「GIVE & GIVE」の関係で結びつき、婦人会を始め地元各団体・個人が子どもと一体になって活動しているが、その結果子どもたちはもちろんのこと釈迦内地区住民の地域に対する誇りが高まったと同時に、地域の学校への信頼度が増してきている。
 また、学校も地域も多くの各機関・団体・組織と強い連携を図ることができた。そのことにより、学校はより充実した教育実践を生み出すことができ、地域は自分たちの力量ではできないところをカバーしてもらい、今後のさらなる地域活力の創造へ向けての広範囲な強い絆が生まれ、新たな地域活性化の活動が生まれることを信じているし、やらなければならない。
 近い将来、NPO法人化し、地域の雇用を生み出す段階まで構想中である。