「あしたのまち・くらしづくり2012」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

高齢者生きがいづくり支援事業「地域力を活かしたふるさとの再生」
熊本県上天草市 上天草市中央公民館
1. はじめに
 近年の公民館活動は、全国的な傾向として平成の大合併以降、校区の再編や人の流出入が激しいこと、指定管理者制度の導入などで最前線においては指導者、住民ともに混乱が生じている。
 上天草市は平成16年3月の4町合併後も過疎化と高齢化の進行は止まらず、合併後の人口も約10%減少している。そのため行政は、体制のスリム化を推進しながら経済の活性化を進め、人口減少に歯止めをかける政策を推進する一方で、住民に向けては地域の自助・自立、そして協働・共生を求めている。
 教育委員会・中央公民館の事業方針においても、業務の効率化と効果的な事業運営を推進するため指定管理者による運営を検討、推進中である。そして行政部局と方向性を合わせ、自治公民館との連携や地域活動の活性化を促すことで住民の自立・再生を図ろうとしている。

2.事業取組みの経緯と内容
 このことを受けて中央公民館では、“小さな政府”を目指し、従来の“おんぶに抱っこ”の事業形態から脱却し、住民の意思を尊重しその活動を支援する体制に移行することとした。
 また、大幅にスリム化した中で、効率的でかつ効果的な事業に集約するために次の視点で事業に取り組んだ。
(1)住民サービスの視点から事業の恩恵を受ける人が少ない(参加者が少ない)事業の見直し。
(2)多くの職員数を必要とする事業(非効率事業)の見直し。
 さらに自主活動移行のための財源確保策として、高齢者の方の“生産活動と社会奉仕に参加することで生きがいを得たい”との提言をヒントに「高齢者生きがいづくり支援事業」をスタートさせた。

3.「高齢者生きがいづくり支援事業」について
 具体的には平成22年度にモデル地区を選択し団体立上げの支援を行い、この団体で耕作放棄地を活用しニンニク栽培を行った。この成功事例を受けて平成23年度は上天草市全体に事業を展開した。

4.具体的な事業の推進方法
(1)呼びかけ
 中央公民館のいろいろな事業を通じて「高齢者生きがいづくり支援事業」の存在を告知した。
(2)団体設立
 最初に呼びかけに応じた人にリーダーになっていただき、仲間づくりを行った。
(3)リーダーの指導のもと、テーマの設定や年間事業計画を立案し活動を開始した。

5.事業実施にともなう留意点
(1)中央公民館はソフト面での支援を行い、各団体がスムーズに自主運営できるように努めた。
(2)上記(1)実現のために、事務局となる人の育成に努めた。
(3)自主運営を早期に実現するため、助成金申請などの手続き方法を伝えた。
(4)「公民館総合保障制度」活用のため、中央公民館との共催事業の表示にも配慮した。
(5)活動の開始にあたり、自治公民館長を活動の中心になってもらうようにつとめ、地域の自主主催事業にもっていくようリードした。

6.活動の評価・成果
(1)平成23年度活動記録
設立団体名 創造ネット・二間戸 NPO法人希望 合津金比羅川土手会 夢・ネットワーク長砂連 NPO法人かみあまさ
名簿登録人数 26人 11人 11人 16人 12人
登録年月 22年7月 23年4月 23年4月 23年4月 23年2月
年月 累計参加者(人)
23年4月 26 11 11 12
   5月 26 11 16
   6月 26 11 10 12
   7月 11
   8月 11 10 12
   9月 52 11 16
  10月 11 10 32 12
  11月 11 16 28
  12月 22 11 62
24年1月 26 31 14
   2月 32 10
   3月 26 32 16 12
220 205 62 112 164
合計 763人

(2)成果
 前述の表に記載の通り、5団体が設立され、それぞれの活動を行っている。平成22年度当初の事業仕分けにより年間累計79人の参加者にとどまっていた事業を廃止し、代わりに立ち上げたこの事業の参加者は、年間累計で平成22年度は376人、平成23年度は763人の参加者となり、地域づくりにも貢献し大成功したと言える。

7.今後の課題
 初年度(平成22年)のモデル地区の成功とそれに続く平成23年度の成果は、自己評価では満足のいく結果であった。
 しかし、今後の展開を考えたときに、次の課題が見える。
(1)完全な地域自主活動へのスムーズな移譲。
(2)助成金に頼らない活動費の捻出。
(3)団体の円滑な運営。
ア.生産活動がテーマの場合、収益や財産が発生し、このことが起因で任意団体ではトラブルが発生しやすい。解決策としてNPO法人化があるが、高齢者主体の団体ではなかなか最適な事務局が誕生しない現状がある。
イ.奉仕活動のみを活動テーマとしている団体では活動資金の確保が課題として残る。

8.まとめ
 今回の事業では“公民館活動として本筋から逸脱しているのでは?”という意見を承ることがあった。それは、結果がまちづくり活動につながっているからだと思われる。この意見については、公民館法が掲げる「教育・学術・文化」につながる要素として各個人から「経済・健康・生きがい・自己存在感」などの力を引き出すことは大変重要なプロセスであり、結果的に公民館法の目的に近づくのではないかと考え取り組んだ事業である。また、最近の社会の流れでは「公民館はまちづくりの核になるべき」との意見も多く見られるようになった。これらのことを理解していただき、目的達成という頂上に登るひとつの道順として寛容に受け止めていただければ幸いに思う。

9.付記〈各団体の活動内容を紹介〉
(1)創造ネット・二間戸 会員26名
 耕作放棄地の再生と地域の美化活動
(2)NPO法人希望 会員11名
 買物難民のためのお買物代行センター
(3)合津金毘羅川土手会 会員11名
 皇帝ヒマワリの植栽による景観づくり
(4)夢・ネットワーク長砂連 会員16名
 耕作放棄地再生を起点としたコンパクトタウンの実現
(5)NPO法人かみあまくさ 会員12名
 耕作放棄地の再生と地域の美化活動