「あしたのまち・くらしづくり2012」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

生ゴミのリサイクルから環境と食の大切さを伝えたい
新潟県新発田市 NPO法人ユー&ミーの会
新潟県新発田市 NPO法人ユー&ミーの会
 自然豊かな城下町の新発田市は、十数年前までゴミステーションから漂う悪臭、その生ゴミを食べ散らかすカラスに悩まされてきた日本中のどこにでもあった光景がありました。
「ごみを減らして、空気と水をきれいにしたい。そんな思いで近所の林さんと二人で家庭でできることはなんだろう」。1996年、ふたりの思いから始めたのが生ゴミのリサイクルでした。
 小さな活動が7年かけて広がりました。2003年には「NPO法人ユー&ミーの会(以下当会と記す)」として法人格取得。今では新発田市内の小・中学校の給食の食べ残しや家庭で出た生ゴミを分別し、生ゴミから有機堆肥を作り、農家に還元。出来上がった農作物を地元の学校や家庭で消費する「地産地消」として食の循環につながっています。『捨てればゴミ、ひとてまかけて資源』を合言葉に当会は生ゴミのリサイクルに取り組んでいます。

子供たちに変化、食べ残しが減った!
 当初、生ゴミの分別に協力する会員は100世帯、法人会員2社。9年前から新発田市と提携し、6モデル地区の1000世帯で生ゴミの分別指導を行なっていました。さらに学校へ直接お願いに行き、校長並びに先生がたのご理解を頂き、給食の食べ残しの残さ(ざんさ)の分別指導、回収も行ないました(市内2校が参加)。子どもたち自らが給食残さを分別するのは全国でも珍しい試みです。
 2004年に始めてから、少しずつ子どもたちにも変化が表れました。「子どもたちの好き嫌いと食べ残しが減ったんです」と各校の先生たちは口をそろえます。給食を食べ終わると、子どもたちが自分の残したものを水切りのついたバケツに入れ、それを校内に設置した集積所に運び、米ぬかを入れる一次発酵まで、子どもたちに行ってもらいます。食べ残しの多さや肥料になることを目のあたりにすることが出来ます。
 当会は週に2回、その生ゴミを回収し、市内の有機資源センターへ運びます。ある小学校では、この肥料を利用した野菜づくりの取り組みで、民間企業の食育コンクールにてグランプリを受賞したこともあります。
 学校での取り組みは、初年度から順風満帆だったわけではありません。においやウイルスなどを心配する声も多かったのです。問題が発生したらその都度、学校を訪れて先生に説明し改善策を練りました。
 今でこそ、市内の中学校でも行なっていますが、まだ中学校が生ごみリサイクルに取り組んでいなかったころ、ある小学生が中学校に入学する直前、私共にこう尋ねてきました。「中学校でもやるんだよね? またゴミにするのかな?」。その言葉に、当会として子どもの思いを叶えるために、中学校でも導入してもらうよう市の教育委員会に直談判したこともありました。
 また、生ゴミのリサイクルだけではなく、学習の一貫として、有機資源センターの見学、その堆肥で野菜を作っている農家へ子どもたちを案内することもあります。目を輝かせる子どもたちに、野菜を育てる、料理を作る、食べる、残ったものを土に返すという食の循環を経験してもらっています。
 今では子どもたちから「ありがとう」という手紙が届くようになりました。当会としてそれがなによりうれしいんです。

空気と水が汚れている、私たちができることから
 当会発足のきっかけは、私自身の難病にありました。20歳代~30歳代まで紫外線を浴びると顔や体がむくむ特異なアレルギー体質で、苦しさのあまり寝たきりの日も多くありました。月に4回も通った大学病院皮膚科の医師に「空気と水が汚れているから。地球が汚れているんだよ」と言われ、私に出来ることから始めなければと少しでも地球環境に役立てることがあるのではと思いました。
「ゴミを減らさなければ、同じ病気にかかる人が増えるかもしれない」、近所の林さんに声をかけて、二人で勉強を始めました。
 野菜くずや魚など残飯類の生ゴミは土に戻る。悪臭は生ゴミから出る水分が原因だとわかり、そこから二人の思考錯誤が始まりました。
 どうしたらゴミと水分をきっちりと分けられるか、嫌なにおいがしないようにするには、どうしたらいいのか試行錯誤しながら視察したり、資料を取り寄せたり勉強しました。2年目にして、生ゴミと水分を分別する二重底のバケツの使用と、水分を抜いた生ゴミに米ぬかと新聞紙を混ぜることで、嫌なにおいがしなくなることがわかりました。
 米ぬかは農家にお願いして無償で提供してもらいました。それから私と林は「ゴミを減らしましょう」と、各家庭を1軒ずつ説明しながら歩き、賛同してくれた10軒の家に二重底のバケツを置いてもらい、定期的に回収しました。
 当初は生ゴミの中にビニール袋やプラスチックが入っていたこともあったため、バケツを1個ずつ調べ、手で取り除いたこともありました。各家庭に分別のためのチラシを作成して説明に回ったり忙しい日々を送りました。その集めた生ゴミを堆肥にするために、知人から借りた土地で私ども自らスコップで生ゴミともみがら、落ち葉を混ぜて二次発酵させました。そして数ヶ月かけて出来上がったものを農家に持っていくと、「こんなの堆肥じゃない」と叱られたこともありました。
 それでも地道に活動を続けることで協力してくれる人や企業も現れてきました。
 生ゴミは市の有機資源センターが受け入れ先となることで、生ゴミの回収量も増やすことができ、良質な堆肥を大量に作られるようになりました。
 当会と有機資源センターは、よりよい堆肥を作るために、今でも改良を重ねています。堆肥の良さが口コミで広がり、「ぜひ売ってほしい」という農家も増えてきて近年では、堆肥が足りないときもあります。

できることはある、そのきっかけ作りがしたい
 生ゴミのリサイクルや環境問題について、学校や団体、新潟県内の市町村などから講演の依頼も増え、県内を飛び回る日々を送っております。忙しい合間をぬって、地元の食材を使ったエコクッキング教室も定期的に開催。その日の食材を提供する農家を呼んで、参加した市民と農家の交流も深める役割も担っています。ときには、市民から希望の野菜のリクエストがあれば、その野菜の農家を紹介したりと、人と人をつなぐパイプ役としても頑張っております。
 老人クラブへ招かれたときには、「お孫さんたちに、美しい地球を残しましょう」と、生ゴミのリサイクルのことはもちろん、空き缶やペットボトルのリサイクルの出し方についても伝えています。
 当会としては、まだまだやりたいことがあります。それは市内の幼稚園や保育園での生ゴミのリサイクルです。小さいころからの意識づけが学校を経て大人になったときでも当たり前にできるようになるからです。
 もうひとつは「私たちが地球を壊したんです。だからこそ、みんなでエコに取り組んでいきたい」。各家庭を回っていると、ゴミ以外にも環境に自分たちでも出来ることに対して興味を持つ方が増えてきました。若い人たちにも興味を持ってもらえるように取り組んでいきたいと思っております。
 現在は当会の活動を多くの市民の方々に知っていただき、生ゴミ分別は11自治会(2335世帯)までに広がりました。学校は19校に広がり、多くの児童・生徒が熱心に取り組んでおります。当会もわずかながら有機堆肥を使用して野菜を栽培し食の循環をいつでも体験できる場を提供しております。
 また、一昨年からは市と連携し、「ゴーヤグリーンカーテンプロジェクト」を立ち上げ、ゴーヤを育て収穫し、料理コンテストを開催しております。本年は市内35団体が参加してくれました。
 新潟県内で開催されるエコイベントにも積極的に参加し、たくさんの人たちに生ゴミのリサイクルや環境問題について呼びかけております。「誰にでもできることはあります。そのきっかけをつくりたい」。
 最後に。
 できることから一歩ずつ、美しい地球を未来の子どもたちに残すために、私たち一人一人が運動を進めていきたく思っております。