「あしたのまち・くらしづくり2012」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

目指すは地域包括ケアのまち―中山間地での支えあいの仕組みづくり―
高知県津野町 地域の応援隊 和
 私の住む津野町は、平成24年5月現在で人口6530人、高齢化率約38%。少子高齢社会の課題を抱える日本の縮図のような町です。例に漏れず毎年人口が減少し団体を設立する平成19年には、既に一つの地区では助け合うこともままならない状態になっていました。
 介護保険制度の導入以来、町の社会福祉協議会が訪問介護事業所を始め、在宅介護を一手に担ってきました。途中、何度か町外からの民間事業者が参入しましたがウナギの寝床のように細くて長い山道の先に数件の家があるというような谷合の地区の集まりである我が町では採算が合わず、すぐに撤退しました。
 当時、その社会福祉協議会で訪問介護事業所の管理者兼サービス提供責任者であった私は、常に違和感を抱いていました。措置の時代と比べ利用者の権利は主張しやすくなり、制度を使うことによって必要とする利用者に応えられる数がそれまでより圧倒的に多くなった点では画期的な事業です。しかし介護計画では自立支援を謳っていても事業所の経営や現場での時間的制約等により実際には予防的観点がほとんど抜け落ちてしまい介護は、本人家族ではどうにもできなくなってから支援を受け家事援助は、まだできる力はあるけれど少ししんどくなってきた頃から、お金を出すのだから、その間は楽をできる。というのがほとんどでした。
 本当にその時に困っていても、制度に乗らないためにできないことがほとんどで、私が想い描いていた地域福祉像と、それを担う社会福祉協議会に求めていた理想とが、かけ離れてきた気がしました。随分悩んだ結果、思い切って11年間勤めた社会福祉協議会を辞め、平成18年4月に2人の仲間と共に助け合いの団体を設立しました。1年が経過しようとする頃、文化的観点が強くなった団体から卒業し、設立当初から在宅支援を目的としていた私は、新たに「地域の応援隊 和(なごみ)」として平成19年4月1日よりスタートしました。
 初めは、町の現行サービスにないものの中であったらいいな? と思うもの。そして、これなら自分たちでできるというものを手作りのパンフレットに載せて一軒一軒を回りました。不審な勧誘と思われないように「興味や必要なことがあればお電話下さい」と簡単な説明と共にパンフレットを置いてきました。すぐに約50人の賛同者が集まりました。
 当初から拘って大切にしていることがいくつかあります。まずは団体の活動をすることによって困る人ができないこと。例えば団体に属する人が幸せになっても、町内の業者さんの仕事がなくなって不幸になる等ではダメだけれど、町全体がみんな幸せになればいいという考え方。そして、支援する人とされる人に決して分けずに、会員同士が助け合う“お互いさま”の仕組みにすること。年齢や障がいで分けずに子どもからお年寄りまで全てを対象とすること。どんな人でも特技や長所があるはず。良い所を見てより多くの方に関わってもらうこと。住民のための団体だから、住民の意見を汲み、その時代、その時に合わせて団体に柔軟性を持たせること。形に拘って使い辛いものだと意味がない。それから、基本的に有償ボランティア活動であるということ。有償であることによって提供者には、ある程度の責任感を持たせ利用者には頼みやすい環境を作る。そして何よりお互いにとって継続性を持たせると考えました。
 そんな、いくつかのことを大切にしながら団体の中で最も重視している支援活動の具体内容は、家事援助、介助、草刈り、草引き、剪定、お墓掃除、買い物や金融機関・役所等への代行、ゴミ出し、農作業のお手伝い、犬の散歩、不燃物の廃棄代行等…多種多様です。
 サービス毎に料金が決められています。家事援助など1時間当たり600円のサービス料のうち100円を団体運営のためにいただき、残りを提供会員さんに支払う仕組みです。年会費1口500円を支払えば誰でも会員になれます。登録時にできるだけ得意分野を記入していただきます。困りごとの相談があった時に、それまでの登録会員さんの得意分野を活かせる形でコーディネートします。会員は口コミでどんどん広がり昨年度は283名。それまでも平均250名以上が毎年支えて下さっています。
 町内では他にインフォーマル支援をする団体がなくたくさんの相談がきます。最近では、同じように担い手がない隣の市からの相談も多く、活動範囲が広がりました。
 活動の中から地域が見え新たに加わったサービスもあります。3年程前から始まった一品配食サービスもその一つです。家事支援を希望する方のほとんどが食事前の時間に集中され家事を得意とするスタッフも足りなくなってきました。毎日のこととなると体力的にも若い方の力がより必要になってきました。しかし、一日のうちの11時~12時と17時~18時以外はそれほど決まった依頼が多いわけでもなく、収入を考えると若いスタッフをなかなか繋ぎ止められません。
 一方、在宅の一人暮らしや高齢世帯のほとんどが「ご飯は自分で炊けるけれどおかずを作ることが面倒でつい漬物やお茶漬けだけで済ませる。味噌汁をたくさん、または煮物をたくさん作って、何日も沸かしては食べる。お弁当程でなくて、おかずを一つだけでも届けてくれるものがあればね?」という声。
 そこで聞き取りのアンケート調査によって形を決め、一品配食サービスが始まりました。このサービスはまず会員の中でも配食サービスを希望する方は事前に申し出ることによって登録され、月・水・金の週3回の内の希望日、10時半~12時までの間に届けられます。その時1品150円のおかずを15品以上持ってこられるのでその中からご自分が食べたいものを何品でも選べます。調理スタッフは8時~9時に来ていただければ何時でもよい。子どもがまだ保育園や幼稚園で正規の仕事にはつけないけれど子どもを送り出した後、迎えに行くまでの間は少しでも働きたいという方でも、来られる仕組みになっています。調理終了は10時半から11時を目途とし、終了次第、配達員3名が約1時間のルートに分けて出発。調理スタッフに1回1000円。配達員に1回800円の労務費が支払われます。配食の際、電話で注文すれば日用品等の配達も町内の商店から預かって同時に行ないます。その日に残ったおかずは町内の協力商店で利益を取らずに置いて下さり、仕事帰りの主婦や近隣の方々が購入して下さることによってスタッフへの賃金が確保でき団体を支えて下さっています。
 日頃、家事支援等を利用される方でも「これなら私にもできる」と庭先で採れた野菜を提供して下さる会員さんもおいでます。診療所の医師から、糖尿病だけれど食事がきちんととれていないため血糖値が不安定で薬の処方ができないからと依頼があり配食サービスを利用することになったケースや隣町の総合病院の相談員さんから退院するにあたって相談を受け始まったケース。町の包括支援センターや民生委員、町外にお住まいの一人暮らし高齢者のご家族からの相談により始まったケース、その他口コミなどで約40件の利用者がいます。
 また、活動は福祉という小さな範囲で捉えず、町づくりという総合的な観点で考えています。人口もサービスも少ない町では、極端に言えば、専門家より何でも屋が求められることのほうが遥かに多いと思ったからです。例えば高齢者支援をしようと考えれば若い世代の力も必要で、若い世代の力を借りようと思えば子どもの支援も必要、子どもの支援をしようと思えば団塊世代くらいの力が必要で…とグルグル回って繋がっています。したがって団体の活動の中には子育て支援や文化教育活動地域活性化活動も含まれています。また、子どもの頃から“お互いさま”の心を育てようという目的もあり毎年夏休み子ども教室を3回以上行ないます。
 そして、先生にもよりますが設立以来4年間は小学生が地域の高齢者の所に昔の民話を聞きに行きそれを元に授業の中で地域の方や父兄と共に紙芝居に仕上げ、地域のサロンや高齢者施設で発表するという活動を続けてきました。団体は紙芝居の作り方の指導や作成のお手伝い等、教育委員会の協力もあって行ない紙芝居を見た地域の方々は涙を流して喜んで下さいます。子どもたちの絵の力、語りの力も大変上達して自信に繋がり、イキイキとした姿が見られます。
 その他、活動に必要な研修会を地域住民対象に行なっています。また、会員同士の楽しみもなくては続かないと考えお花見や新年会、ビアホール、蕨採りツアー等の交流事業も行なっています。
 先日、リウマチのため支援の相談に来られた方が「本当に困ったことだけお願いできる私の理想のものです。早速、会員になりたい」と早速入会申込書を記入して下さいました。私が「強制ではないですが、もし、私これなら出来ます。という特技などあれば何でも書いていただけると有難いです」と言いますと「この私が? こんな手やけど?」と驚かれていました。「例えば読み聞かせとか話し相手とか…」と言うと「それも今は疲れるので」と言っておられました。翌日「あれから帰って私にもできることって、ずっと考えていました。そしたら一つだけありました。着付けなら、自宅まで来ていただければできます。めったに必要なことないかもしれませんが、もしあれば、無料でします。そんなことでも誰かの役に立てると思えば嬉しいので」とわざわざ電話を下さいました。私もとても嬉しかったです。
 できることを、できる時に、できる形で…。そして、それが生きがいになる。素晴らしいと思いました。今、会員の中には障がい者の家族も何名かいます。フォーマルと違って、子どもが休みの時には連れて来てスタッフとして働くこともできる。そんな利点もあります。たくさんのいろんな方がいて支えて下さっています。
 まだまだ課題はありますが、昨年は県内で3市町と県外からも視察等、団体紹介の機会を頂き、あちこちで助け合いの活動が広がってきつつあることを大変嬉しく思っています。同時に、継続と発展のための励みにもなっています。