「あしたのまち・くらしづくり2011」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

障害者が地域に溶け込み、共に進める防災活動
徳島県徳島市 NPO法人ほっとハウス
 ほっとハウスは2000年4月に「地域共同作業所」として開所。2006年9月に特定非営利活動法人ほっとハウスを設立。現在、地域活動支援センターを運営しています。通所者メンバーは14人、スタッフ3人、常連ボランティア、親等の協力を得て、12年目を明るく楽しく元気一杯に歩んでおります。
 この法人は、徳島市及びその周辺に在住する障害者に対して、働く場を提供し、生活訓練及び社会に適応する力を養う。また、音楽活動や文化、芸術活動等を通じて広く社会と交流することで障害者に対する誤解や偏見をなくし、正しい理解を呼び掛けて、やさしい福祉社会の実現に寄与することを目的としています。
 一つ、喫茶運営により障害者の社会参加を支援する事業では、こんなことがありました。
 恥ずかしがり屋のメンバーYさんは、学校時代もずっと挨拶ができなくてよく叱られたそうです。ほっとハウスに来るようになってからもなかなか挨拶ができませんでしたが、2年8ヶ月目に「おはよ!」とお客さんに言えました。そのお客さん感激して、わ~Yさんが挨拶してくれた!!うれしい、ありがとう!とYさんの両手を握って喜んでくれたことで、友だちにも挨拶ができるようになりました。友だちとのコミュニケーションもうまくいくようになり、「あいさつって気持ちええなぁ」と、今ではやかましいほど(笑)(今年12年目です)
 また、メンバーのAさんは、いろいろあって人間不信に悩んでいました。
 お客さんが入って来ると逃げ回っていましたが、今ではニコニコして「いらっしゃいませ~」と明るい声で落ち着いて、「何しましょうか」と接客も板についてきました。持ち前の几帳面さで、コップもお皿もピカピカにしてくれます。後輩にとっては最高のお手本です。さらに彼女は、老人施設へのボランティア活動の時には得意な皿まわしで拍手喝さいを浴びています。ほっとハウスで唯一、皿まわしができる達人(笑)です。「お年寄りが、手をたたいて喜んでくれるのがうれしい、役に立ててうれしいです」と笑います。いつの間にか良い方向に変わっています。(今年11年目)
 喫茶の仕事での日々の地道な積み重ねの成果です。
 二つ、音楽を通じて、障害者に対する正しい理解を促進する事業では、こんな取り組みをしました。
 知り合いのピアノ講師に「トーンチャイムを使って音楽を楽しみたい」と指導をお願いしました。トーンチャイムは一人ではできない楽器です。ひとりひとりが自分の音(チャイム)を担当し、グループ全員が一つになった時に素敵な音楽になります。ひとりひとりが受け持ったチャイムをタイミングよく鳴らし、一つの曲を作り上げます。右手と左手にそれぞれ違った音を持ち、決められた場所でポーンと鳴らしていきます。スタートした時は、チャイムを持つのも大変そうな感じで左右の区別もつかなかったりどこで鳴らしたらいいのかわからなかったり、途中で止まってしまうこともありました。1時間近く立ちっぱなしの練習はつらいこともあったでしょう。でも、先生が来ない日も練習日を設け上達していきました。レパートリーも8曲に増え、すばらしいチームワークを発揮して、あちこちから演奏を頼まれ、多くの方々から絶賛の拍手をもらうまでの腕前になりました。
 小学校との交流でトーンチャイムの演奏をします。後日、交流の感想文が届きます。
 ぼくは、ほっとハウスの人たちが前に座った時、「ヘンな顔」と言ってしまいました。キラキラ星の演奏を聞いていると、とってもきれいな音で、ほっとハウスの人たちがキラキラ見えて涙が出そうになりました。ヘンな顔って言ってごめんなさい。(1年男子)
 また、僕はほっとハウスのBさんが自己紹介の時、どもるので何を言っているのか全くわかりませんでした。ぼくは一生けんめい「心をすまして」聞こうとしました。そしたら何を言っているのかわかってきました。ぼくは心の中で、「ガンバレ」とさけんでいました。(4年男子)
 など素直な気持ちを寄せてくれます。メンバーたちのトーンチャイムの音は、聴いた人たちの心に深く響き渡るまでになりました。トーンチャイムを始めた時、メンバーはこんな日が来ることを想像していたでしょうか? どんな夢を持っていたのでしょうか? それぞれに何かを創り上げていく喜びがいつしか多くの人を感動させることになっていっただけなのかもしれません。これからも音楽を通じて障害者への偏見をなくし、誰もが住みよい町づくりを目指します。
 三つ、芸術作品や手づくり小物の製作を通じて、生きがいを高める事業では、こんなことに取り組んでいます。
 毎年、県が主催しての障害者芸術祭エナジー展に積極的に参加しています。2001年には、幅1.4メートル、縦1.2メートルのアクリル画「夏休み」を製作(メンバー合作)し、エナジー賞を受賞。メンバーは、目をくるくるさせ、飛び上がり喜んでいました。その絵は、空まで突き抜ける大きなひまわり、水平線に浮かぶヨット、打ち寄せる波しぶきに真っ赤なカニ、青い空に入道雲、手づくりの額縁に粘土を張り付け製作者の手形を押しました。居合わせたお客さんたちにも手形を押してもらい(笑)、色を流して仕上げた大作です。製作期間は、半年。週に一度、仕事の合間を見つけてはコツコツ取り組んできました。毎年新しい題材で挑戦しています。
 小物づくりは、トールペイントのペン立て、タオルハンガー、布ぞうり、パッチワークの財布等、生活に役立つオリジナル商品を開発しています。
 また、ほっとハウスの焼き菓子は、甘さひかえ目でおいしいと評判です。2010年11月には、徳島市産のブランド野菜の中から人参を使ったクッキーやカップケーキ、パウンドケーキを新しく開発しました。人参は皮ごし丸ごとすりおろし自然の甘さを生かすことで、「甘すぎなくて、うますぎる」新商品の出来上がりです。この商品が、地産地消、とくしまIPPIN店の認証を受けました。
 これからも、安心と安全のお菓子を提供してまいります。
 四つ、イベント開催による障害者と地域とのふれあい事業は、手芸教室の開催は高齢者や熟年者の生きがいの場になっています。
 例えばアクリルタワシを作った時のことです。針も動くけど、お口はそれ以上に動きまくり(笑)仕上がりには、かなりの時間を要します。でも、その時間こそが、充実して楽しいとおっしゃっていました。(納得)経験豊富な知恵袋を生かしいろいろなことを惜しみなく教えてくださいます。ほっとハウスの若いアイデアをプラスして、バラのエコタワシが完成です。持って帰れば家族が便利やなあと喜んでくれるし、洗剤がいらないので環境にやさしく、見てもかわいい!! 手芸教室は最高ですと好評です。
 また、月に一度健康体操インストラクターにボランティアで来ていただき、地域の人たちと一緒にいい汗を流しています。徳島と言えば阿波踊りです。毎回「阿波踊り体操」を取り入れ、糖尿病を予防しようと声を掛け合い、健康への意識を高めています。
 地域ふれあいほっとまつりは、11年で17回開催しています。小さな作業所なので、ご近所の2軒の病院長さんが駐車場をご提供くださりありがたいです。朝の8時にテントを張り始めると、10時からなのにジワジワお客さんたちが押し寄せてきます。たこ焼きには行列ができ、野菜やお花、トン汁等、ほっとハウスのお菓子は超人気です。一般のボランティアさんも多数協力してくださり、200人余りの人出になり大盛況です。
 近所に住んでいてもなかなか会うことがない人たちが、ほっとまつりでめでたく再会(笑)一緒におうどんをすすり、コーヒーを飲みながら、えっとぶりのおしゃべりに花を咲かせています。
 明るくておチャメなSさんは、フリーマーケットの担当です。わんさと詰め掛けたお客さんに、おばちゃ~ん、これどうで? 安うてLLじょ。似合うよ!! と売り込みも上手(拍手)(今年12年目)また、いつもはスローペースなメンバーのOさんは、たこ焼きに青のりを“パパッ”とふっていつもよりスピードアップしているように見えたのは、錯覚でしょうか?(笑)(今年4年目)
 こんなふうに、どこを向いても、ほほえましい光景が広がるほっとまつりは地域の憩いの場。子どもも大人もホッとできるほっとまつりは、地域になくてはならない行事になりました。
 そして、今年4月22日(金)災害に強い町づくりを目ざし、防災頭巾づくり講座を提案、実施しました。地域の婦人会を巻き込んでの開催になり、大変有意義なものとなりました。各地域から代表たちが参加され、習って持ち帰り、地元婦人会で広がり、女性特有の“口コミ”でまたまた広がり(笑)その成果を徳島市役所内で2週間にわたり展示会を開催したところ、地元新聞にも取り上げられ、徳島市内のみならず、県下各地から見学者が多数訪れました。「私たちの地域でも作りたい」「ぜひ作り方を教えてもらいたい」。中には今教えて(汗)と作り方を聞かれたりと大好評です。小さな町の小さな作業所からの“ほっとな発信”は、大きな大きな防災の輪を拡げています。

 まあいっぺんほっとハウスに来てみてだ
 夜には星が輝いて昼間は私たちが輝いていますから(笑)

 私は、ほっとハウスのメンバーのキラキラした生命に励まされ、癒され、生かされています。これからも障害を持つ人の暮らしを豊かにする力になりたいです。そして老若男女誰もが安心して、安全に暮らせる町づくりに励んでいきます。