「あしたのまち・くらしづくり2011」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

安全安心❤支え愛いっぱいのまちづくり―子どもの居場所づくりを通して―
新潟県柏崎市 比角地区子ども育成会
 比角地区は、中心部に古くからの住宅地があり、近年その周辺部に住宅やアパートが建てられ、中心部の人口減と高齢化が進んでいます。また、地域の北部には、古くからの機械工場地帯があり、その後東部には機械工業団地が新設され、工場と住宅が隣接している地区もあります。以前は、周辺部には稲田や蓮田が広がっていましたが、近年の宅地化により南部に稲田を少し残すのみとなりました。若者の郊外への転出による高齢化や郊外の大型マーケットの進出に伴う商店街の過疎化などの都市化現象は当地区でも進行し、地域そのものに沈滞傾向につながっています。
 また、全国的な傾向でもある少子化、核家族化、近隣社会の日常的なふれあいの希薄化なども顕著に表れています。このほか、ゴミや臭気・騒音、川の汚れ、狭い道路に係わる環境問題、防犯・防災といった安全問題、健康や福祉など様々な問題が顕在化しています。
 これらの課題は、人と人の結びつきを基盤とする地域活動を推進することである程度解決できる面もありました。しかし近年の地域社会への関わりに消極的な住民が多くなり、そのことが地域コミュニティの弱体化につながり、課題解決を難しくしている面もあります。
 そこで、比角コミュニティを中心に平成12年・13年と2年間に渡り、学校完全週5日制施行前に子どもの安全・安心な居場所をテーマにシンポジウムを開催し、地域が何をすべきかを真剣に論議した結果、私たち小中学校PTAOBが中心となって平成14年4月に育成会の前身である「比角子ども育成応援団」を立ち上げ、放課後時における子どもたちの安全・安心な居場所(時間・空間・仲間)づくりを目的として活動を開始致しました。
 翌年の平成15年5月には、比角地区の青少年健全育成を目的に組織する団体及び支援する団体を繋げた「比角地区子ども育成会」を設立。組織の中には、単位子ども会や青少年健全推進市民会議、民生委員、老人会、小中学校PTA、青年会、コミュニティ学習部等々の団体の代表の方々から入っていただき、会員数921名。理事19名で年間の活動計画を立案しています。
 最初の居場所として、平成14年は第2土曜日の学校体育館を開放させていただき、翌年の15年4月からは、比角コミュニティの協力でサークルの方々が利用しない時間の15時30分から18時までの時間、コミュニティセンター(以下、コミセンという)を開放し、子どもの放課後時の安全な居場所としました。コミセンを拠点としてからは、お年寄りの集まる場・健診会場のコミセンではなく、誰でもが集う場として老若男女が気軽に立ち寄れる場所となり、今では若いお母さんや小さな子どもたちからも多く利用していただける所となりました。コミセンの隣に公園が隣接していることから、今では一日30名以上の子どもたち(幼児~高校生)が遊びに来ています。
 体験活動として、野外キャンプや川遊び・地区外交流「どんど焼き」などを実施しています。たくさんの地区外の指導者からも協力していただき、活動スタッフとして高校生や大学生からも協力していただいています。
 また、この体験活動を展開していく上での資金面や地域の方々を指導者とした活用策として、平成16年9月から地域子ども教室として文部科学省の委託を受け、「放課後クラブ」を開設。案内も毎月発行し、幼保育園・小学校・中学校などにも配布しています。
 平成19年からは、放課後子どもプランである「放課後子ども教室」を開設。年数回ですが、放課後児童クラブ指導員や学校職員との懇談を通し、地域における児童の安全について共通理解を深めたり、学校内での保護者会時やクリーン活動時での子ども預かりなど、保護者の皆様から大変好評の活動となっています。もちろん、この活動にも地域の方から先生となっていただき、折り紙や物づくり等、時には子育て支援団体からの絵本ライブや体操教室なども実施しています。
 平成19年におきた中越沖地震の際に比角小学校に開設された避難所でボーイスカウトと一緒に会場の運営や災害ボランティアヘのコーディネーターをするなど、様々な体験をさせていただきました。そこでの経験から今現在も東日本大震災への復興支援も地域のNPOサポートセンター等と連携し、支援活動を展開しております。
 中越沖地震の避難所閉鎖後は、震災後の心のケア活動(講演会や震災アンケート実施等)にも取り組み、平成20年には「比角はぐくみ実行委員会」を立ち上げ、家庭での教育を考える「きっかけ」に「命」、「心」、「食」を柱として掲げたポスターを完成しました。
 のちに家庭教育に関わるアンケートも配布し、その結果、近年の核家族化で孤立した子育てをしていること、顔の見える形での地域の支え合いの力が弱くなってきたこと、保護者の就労時間が長く、家族が協力して子育てを担う環境が整っていない、などの現状が推察されました。
 これらのことなどから、平成21年には文部科学省の「訪問型家庭教育相談体制充実事業」の委託を受け、家庭教育支援チーム「よろんごの木」を立ち上げ、民生委員・児童委員から戸別に家庭を回っていただくと共に孤立した子育てをしないよう、子育て便利帳の発刊や企業への出前講座も実施させていただきました。
 また、企業とのつながりから、小中学校と連携し、地域一体となったキャリア教育懇談会を年2回実施しています。
 この訪問時の傾聴活動において、小学1年生の時に震災を経験した子どもたちが小学4年生になることから、震災後、子どもをひとりで家に置いていられないという保護者からのSOSがありました。
 企業とのつながりから、平成22年春から学習塾の一室を借用し、4年生以上の居場所「よろんごクラブ」を試行的に開設いたしましたが、年間の運営費を賄えないため、今年度は柏崎市社会福祉協議会との協働事業として実施し、現在に至っています。
 これらのことから、地域で助け、助けられるネットワークを作る必要と、市内にはまだまだ子育てに関しての温度差を日頃から感じていたことから、柏崎市全体での底上げをする必要性を訴え、子育て支援を行なっている団体とのネットワーク化を試みさせていただきました。平成23年2月には、中越沖復興支援ネットワークとの協働で、子育て支援ネットワーク座談会を実施しました。
 一昨年・昨年と安心こども基金「地域子育てサポーター養成講座」の補助金も活用し、子育て当事者(親)や子育て支援者が、地域や社会との接点をもち、多くの人に支えられて子育てをする実感を得て、次の子育て家庭をサポートできる立場になれる、支え愛の循環型地域にしていきたいと願いを込め、子育てサポーター養成講座も開催させていただきました。
 また、子育てばかりではなく、地域全体での支え愛を循環していくために、平成22年の柏崎市元気なまちづくり事業「種まき」部門の補助金を活用させていただき、地域全体で支え愛の循環型社会をつくるために比角コミュニティを中心とした「元気なまちづくり実行委員会」を立ち上げさせていただきました。あいにく、今年の補助金申請を受けることはできませんでしたが、地域のネットワークを駆使し、昨年取り組んだ事業を継続していきたいと思っております。
 今回のまちづくり事業として実施したものには、「ボランティア手帳の試行発行(地域の町内会に委託)」と「比角ヒヤリまっぷ」及び「こども110番の家」の一覧表を改正させていただきました。
 この「こども110番の家」は、全国的に児童・生徒等をはじめ社会的弱者を狙った通り魔的犯罪が多発傾向にあり、新潟県内においても、この種事件の前兆事案と思われる児童・生徒等に対する声かけ・つきまとい事案が発生したことなどから、新潟県警と教育委員会が、平成9年から学校・PTA・自治会等と連携し、かつ、地域の皆様から協力を得て、児童・生徒等が「声かけ」や「つきまとい」などの身の危険や不安を感じたときに、直ちに駆け込み、救助を求められる緊急の避難所として「こども110番の家」を設置したものです。設置から14年が経ち、ご協力いただける企業・個人の皆様も年々増加し、組合などによっては、独自でプレート等を配布しているところもあり、警察署でも把握できないところも多く見受けられるようです。
 そこで、これからの活動として、学校・企業・警察・地域との連携を試み、一層の安全安心な地域づくりの展開を図るとともに、子どもだけではなく、弱者(高齢者・障がい者等)にも優しいまちづくりを推進していきたいと思っております。
 昨年は、長年の防犯活動に対し柏崎警察署様から防犯ジャンパーを、また、今年に入ってからは交通安全協会様から交通安全功労団体表彰を受けましたので、今後も一層、子どもを中心とした連携と協働による人育て、まち作りを推し進めたいと思っております。
 私たちは、子どもを中心とした活動としながらも、地域に支えられ、安全で安心な地域社会にしたいと心から願いながら活動を展開しております。
 今後も色々な団体と連携を取りながら、未来の子どもたちのために頑張りたいと思っております。