「あしたのまち・くらしづくり2011」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

人を包む優しいまちづくり
秋田県能代市 のしろ白神ネットワーク
 のしろ白神ネットワーク(以下「のしろ白神NW」とします)は、平成18年4月、秋田県能代市に設立されました。のしろ白神NWのコンセプトは主に次の4つです。
①木のまちらしい、木の香る道を創造します
②にぎわいのある優しいまちづくりを進めます
③里山・農山村の風景を保全・再生します
④地域そして訪れる人の心を紡ぎます

 特別に新しい建物やイベントじゃなくていい。今あるモノや人材やグループをうまく利用して、自分たちにできることを少しずつやっていこう。それゆえ、のしろ白神NWのメンバーは多様であり、それが強みでもあります。自治会の女性会、黒松のお世話をする会、里山づくりのためのNPO法人、隣町の古民家活用の研究会、市内にある秋田県立大学の木材高度加工研究所、地元行政機関など、民・学・官の連携で成り立っています。そして、どなたでも随時参加していただける柔軟さも良い点です。特定のイベントにのみ参加することも可能ですし、むしろそれがなければのしろ白神NWの活動は活発になりません。
 それぞれがのしろ白神NW設立前、参加前から活動していたことを持ちより、得意分野の知恵を出し合い、互いに協力しながら、より良い活動に向かって進んできました。

 活動実績の一部をご紹介します。
 自治会女性会の中でも市役所や体育館に近い上町すみれ会は、積極的にまちなか美化活動に取り組んでいます。地域住民や訪れるお客様に楽しんでいただこうと、毎年色とりどりの花を植えた木製プランターやコンテナをあちらこちらに並べています。昨年はこれらの花の苗を能代市内の高校から分けていただき、新たな繋がりが生まれました。ビオラにベコニア、サルビア、日日草・・・植栽も高校生のみなさんと一緒にワイワイ楽しく行ないました。これからも続けていけたらと思っています。
 さらに、平成21年から始めた「まちなか美術展」も成長を続けています。
 中学校の美術部の生徒さんや養護学校の生徒さんの魅力的な作品たち、幼稚園児のみなさんの思わず目が細くなってしまうようなかわいらしい作品たちは上町すみれ会はもとより周辺商店会の手により展示や広報が行なわれました。
 美化活動だけではありません。独自の活動をいろいろ行なっている上町自治会ですが、防災セミナーは話題を呼んでいます。自主的な防災訓練ですが、上町以外の人でも参加できるようにしているのが特徴的です。昨年はのしろ白神NWの繋がりを利用し、木材高度加工研究所の協力を得て、早稲田大学や秋田工業高等専門学校から講師を招いて地震について理解を深めたほか、避難食作り体験を行ないました。いざというときに、地域コミュニティの本領が発揮されます。普段から楽しむ機会だけでなく、いざという時のために生活に密着した活動という視点から地域のあり方を考えることも大事にしています。

 能代市は古くから「木都能代」としてその名を知られ、現在に至るまで培われた技術を活かし様々な木製品が生み出されています。木には人を癒す特別な力があると考えます。人気のパワースポットも魅力的ですが、身近なところで木のぬくもりを感じられたらちょっと嬉しい。それをうまく利用して元気なまちを造っていけたらもっと嬉しい。
 秋田スギの間伐材の廃材を用いた夜間のライトアップ「スギ灯り」は回数を重ねるごとに知名度が上がってきています。燃料は環境にも優しい廃食用油等で作ったロウソクを使用しています。市内で夜間に行なわれる既存のイベントにお邪魔しての「スギ灯り」も好評ですが、やっぱりのしろ白神NWが周辺の商店等と連携しての主催イベント「まち灯り・夏/冬」(平成19年開始)は見逃せません。
 「まち灯り・夏」のメイン会場は、国道沿いの黒松並木周辺。「黒松友の会」の手によりきれいに剪定された黒松並木は歩行者や運転中のドライバーを見守ってくれます。そこに400個ものスギ灯りをともすと、周囲は柔らかな光に包まれます。スギ灯りだけでも十分なのですが、4年前から製作し今では200個にもなる灯ろうが、これまた圧巻です。これらは「黒松友の会」が主体となり地域の子どもスタッフを募集して一緒に製作したものです。ふわっとした灯りがとても風流で訪れる人の心を包み込みます。それでも花より団子!というお客様には、灯りをじっくり堪能したら、黒松並木沿いにあるホテルの駐車場をお借りしたイベントスペースヘ向かっていただきます。そこには杉製の屋台とそこで出迎えるお母さんたちの笑顔があります。
 昨年度は、ロウソクと同じく廃食油で作ったバイオディーゼル燃料(BDF)でエコバスを運行し、会場と市街地を結びました。「今年もバスは走るのですか?」という問い合わせがすでに来ていますが、ちょうどこのレポート作成中も今年の内容について検討しているところです。楽しみに待っていてくださっているのだな、と嬉しく感じます。
 ロウソク作りにも燃料づくりにも子どもたちが参加して賑やかに行ないます。親子のふれあいの場や環境教育の場にもなっています。
 「まち灯り・冬」のメイン会場は、中心市街地の商店街の一角です。能代の冬は寒く、足が重くなって家にこもりがちですが、ついつい外出したくなる心温まるイベントを毎年ご用意しています。バレンタインデーに近い週末に開催しますので、集合場所で本命チョコを手渡したカップルに抽選で賞品をお渡しする商店会連合の企画もあり、雪とスギ灯りがロマンチックな雰囲気を演出します。「まち灯り・冬」も温かい食べ物を提供する杉製の屋台は大賑わいです。
 もちろん全てが順調に進むことばかりではなく、準備の人手不足や他の団体、イベントとの調整などなど苦慮することも多いのですが、お客様からの「1日限りではもったいない。暗い能代の夜を照らし続けてほしい」「このイベントに関わる皆さんの熱意が感じられた」という言葉に励まされ、毎年続けられています。

 最近、特に好評なのは木の香るくつろぎスペースです。
 おもてなし空間を創造したいというのが、のしろ白神NWの願いのひとつですので、これが好評を博しているのは嬉しいことです。
 木製のベンチには柱に使われるような木材を組み合わせて即席でできる長いものもあれば、濃い色の塗装でちょっとおしゃれなものもあります。木製のテーブルにはパラソルを挿せるようになっており、夏の強い日差しや、少しの雨でも快適に過ごすことができます。また、シーニックデッキはその時々に応じていろいろな目的で提供しています。デッキの上にテーブルやイスを置いて休憩スペースにしたり、5月に行なわれた屋外でのイベントではデッキがステージとなり三味線とパーカッションユニットのライブに一役買いました。ほんの一段高いだけのぬくもりあるステージは観客との距離がぐっと近く感じられました。
 能代はバスケットボールの街でもあり、毎年ゴールデンウィークに行なわれる大会「能代カップ」には県内外から大勢のお客様がお見えになります。ここでも是非のしろ白神NWのくつろぎ空間を!と、今年初めて会場の外のスペースをお借りし、木製のベンチやパラソル付きテーブルを並べたところ、たくさんの方が利用してくださいました。これまで飲食できる場所が少なく、地面に直接座っていた人も見られましたが、これなら快適です。これがきっかけで、他の行事でも使いたいという依頼もいただいています。

 白神のふもとに育まれた能代とその周辺には、決してなくしてはいけない風景や里山があります。
 隣町に位置する八峰町手這坂は江戸時代の紀行家、菅江真澄に「桃源郷」と評され、無人の集落となった今でものしろ白神NWの一員である「手這坂活用研究会」が古民家や植物の手入れを行なっているため、四季折々の風景を楽しむことができます。維持していくのは大変な苦労ですが、この風景を楽しみに訪れる人は後を絶ちません。
 春から秋までの半年間、週に一度の日曜日はNPO法人格も取得した「常盤ときめき隊」が常盤地区の里山を飛び出し、上町すみれ会の活動拠点「上町ほっとステーション」で朝市を開催しています。里山発信のまちなかとの交流、スーパーとは違う顔の見える関係です。いつも開店前から大勢の人で賑わうのは、農家の方と「これはどうやって食べるの?」などとコミュニケーションをとりながら、疑う余地なく新鮮な野菜や山菜が安価で手に入るからです。

 これらの活動はほんの一部です。
 ご紹介したとおり、のしろ白神NWには、たくさんの団体が関わっています。各団体の情報を共有するため、のしろ白神NWは2か月に一度、定期的に懇談会を開き、活動報告や予定を確認し合い、互いにどのように協力し、活動の幅を広げていけるかを話し合っています。

 木材高度加工研究所や地元行政機関は、のしろ白神NWの一員としてその活動のための技術面や事務的な面、情報提供、イベントの際の人手提供という形で関わっています。

 人と人、まちとまち、まちと人がうまく繋がっていくことで、まちづくり・地域づくりは進められます。自治会と高校生、まちと商店会、子どもたちと大人たち、里山とまちなか、住民と観光客・・・組み合わせは無限にあります。それらを繋ぐ結び目のような役割を果たすのがのしろ白神NWです。
 誰でも安心して暮らせる楽しいまち、子どもたちが健やかに育つまちを望んでいるはずです。人やまちのネットワークがうまく機能していれば、結果として自然とそうなっていくと私たちは信じています。
 のしろ白神NWは6年目に突入しましたが、いつも新しい発想を忘れず、様々なことに挑戦しながら、結び目の数を増やし、小さな結び目は大きく育てていきたいと考えています。