「あしたのまち・くらしづくり2010」掲載
あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞

地域を支える―高齢者の暮らしの中の困りごとを解決―
鳥取県鳥取市 NPO法人くらしのお手伝いよねさと
法人設立の経緯

 当法人の設立は、平成17年に遡る。
 地区公民館のボランティア活動に積極的に参加していたグループが、定年退職を機に、高齢化の進む地域で何か役に立つことができないかと考えていた。
 それと同時期に、地域の中心地にあった農協支所が統合され新しい建物に移ることになり、空き店舗は取り壊されることになった。その空き店舗を残し活用することで地域活性化に繋げたいという思いと、何か地域の役に立ちたいという気持ちがひとつになり、空き店舗を拠点に地域に根ざしたNPOを立ち上げることにした。


主な仕事

 当法人の主な仕事は、高齢者の暮らしの中での困り事を、時給800円で引き受け解決することだ。例えば、雨樋に木の葉が詰まって雨水が流れなくなったと依頼があれば、雨樋の掃除と修理をする。
 他にも庭の草取りや畑の耕起、高い場所にある窓拭き、重い本箱の移動、高くて手が届かなくなってしまった木の剪定、枯れた木の伐採、塀のペンキ塗り等々、高齢者の困り事に応じて仕事を受けるので、内容は年々多種多様になってくる。しかしお年寄りに「おかげさまで良い具合にしてもらった。ありがとう」と言われると苦労が報われる気がする。


地域の人との繋がり

 NPOの会員はみんな米里地域で生まれ育った者ばかり、または縁故者ばかりなので、仕事に行っても高齢者のみなさんとは顔見知り。それが地域にあるNPOの良いところで、依頼者からは安心して仕事を頼めると言われ、信頼関係もすぐに生まれる。
 一度依頼があった高齢者世帯からは次々に仕事を頼まれるようになった。それが地域に口コミで広がり、どんな依頼でも断らないということを心がけているために、小さなことでも気軽に引き受けてくれる所として次第に広く認識されるようになった。


会員同士の繋がり

 会員は、お互いが昔からの幼馴染や知り合い。それで毎週月曜日の夜はミーティングを兼ねて集まり、隔週一杯飲みながら色々な話をする。昔話や米里地域のこと、これからの事業のこと、夢や、家族の話など、毎回本当に話題が尽きない。
 その中で、各集落の情報も集まり、米里地域全体の姿も浮かび上がってくる。
 地域資源の利活用の話もその中から出てきたものだ。


地域資源の利活用

 米里地域は、人口4000人余り。昔は旧米里村8集落の農業主体の地域だったが、昭和50年代に新しい団地が造成され、人口の4分の3はその新興住宅地の住民が占める。しかしながら自然はほとんど昔のまま残り、地域の南端の空山(そらやま)では乳牛が放牧されており、頂上には近年、風力発電の風車も3基立って、のんびりとした景観を生み出している。
 その空山山麓で、これまで試みたことがない「バードウォッチング」と農業用ため池・七谷堤での「カヌー体験」の事業を開催し、住民や地域外の人たちに米里のゆたかな自然を広く知ってもらうことができた。参加者は若い親子連れが多く、毎回、地域内外から約50人の参加者がある。


不用品

 空き店舗を利用して、住民から持ち込まれる不用品を無料で引き取り、それを修理して低価格で販売している。大型のものはタンスや食器棚、本箱、机などから洋服、着物、日用雑貨まで様々な物が運び込まれる。
 それは年代ものの物、ギフト商品、納屋から出てきたもの、引越しでいらなくなった物など、「もったいない」ものばかり。どんな物でも断らないことをモットーに引き受けて販売している。
 中には新しい物を買う前に、まず店を覗いて安ければ中古でも買って行く人もたくさんあり、それが広まって何か良い掘り出し物がないかと探しに来る人もある。何でも置いてある、と面白がって来てくれる常連さんもいる。
 若者は、レトロな感覚が良いと言って買って行くので、若い知り合いもたくさんできた。


交流の場

 事務所は誰でも自由に出入りでき、地域の人たちが気軽に立ち寄って話しをしていく場所になっている。
 また使われなくなった畑を借り、市民農園として貸し出している。その畑の作り手に呼びかけて交流会を開き、農作物の情報交換などができる機会を作っている。
 また地域で使われなくなったおひな様を譲り受けて毎年3月におひな様を飾り、子どもからお年寄りまで楽しめるイベントを開催している。


地産池消

 昨年は、中心市街地に2日間テントで出店する機会を頂き、新米を「米里米(よねさとまい)」と名づけて販売した。上から読んでも下から読んでも同じネーミングにした。袋の中身は100%米里地域で収穫された「ひとめぼれ」。混じり物がないので美味しいと自信を持って勧め、市街地の人たちにたくさん買ってもらった。
 この経験を元に、今年は地元で「新米祭り」を開催してお客さんを呼び込み、新米を販売しようと計画している。またひとつ米里の特徴を生かす新たなイベントが生まれる。


合議制

 イベントや仕事の内容など何でも合議制で決めることにしている。
 理事長1名、理事4名、監事1名、事務局1名の執行部だが、人生経験や社会経験の豊富な人材ばかりなので、みんなが同じラインの上に立ち、すべて話し合いで決定する。
 5年間、このやり方は変わっていないし、今後も変わらないだろう。お互いの意見や生き方を尊重し、同じ地域で生活している者として、米里地域の行く末を考えながらこのNPOを存続させていくことになるだろう。
 NPOの仲間は少しずつ増えつつあり、現在社員10名、登録会員6名で活動している。
 後継者については、地域の若者たちが、現在のNPOの仕事ぶりや事業内容などを見て判断してくれるだろうと確信している。このNPOが米里地域の人たちになくてはならない存在になれば、次の世代が自然な形で引き受けてくれると信じているところである。